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世の中知らない方が良い事もある。

 

「ナズナ。すみませんが今晩使う野菜を採ってきて貰えませんか」

「はーい。今夜は何が食べたいですか?リューさん」

「……そうですねぇ。あ、あれがいいです。お肉を丸めて焼いた、、」

「あぁ!ハンバーグですか?」

 そうです、ハンバーグ!あんなに柔らかいお肉は初めて食べました。にこにこと嬉しそうにリューさんこと、リュカツァリアさんはハンバーグの良さを語っている。



 ◆◇◆◇◆



 ━━━━あれから1週間たった。リューさんに助けて貰ったあの日からまるまる2日間高熱にうなされた。


 目が覚めてそれからは突然現れた私に嫌な顔一つせずに看病してくれたリューさんにそれまでの経緯をわかる限り話した。

 自分でも頭おかしい人にしか見えないなぁとか思うけどリューさんは私の話を最後までちゃんと聞いてくれた。

 ついでにここに来てからの鬱憤も全て吐き出してすっきりしたら急に現実が押し寄せてきた。


 突然異世界にとばされた私はまぁ見ての通りお金も住む場所もなく…………


 どうしよう。とその不安と恐怖が顔に現れたんだと思う。


  「…暫く此処にすみませんか」

  それを見たリューさんがそういえばこの家は広すぎて少し寂しいと思っていた頃なんです。と眉を下げながら私に言ってくれた。

 先が見えない私にとってそれ以上有難い言葉もなく、すぐさま返事をした。

 ……でもこんな何も無いところでなんで暮らしてるのかな、見た感じまだ二十代後半って感じだけど、この世界のことは知らないけど何の職にもつかず暮らせていけるもの?

 急に黙り込んだ私に勘違いしたのか、



「すみません。気が利きませんでしたね、大丈夫です。こんな若くして可愛らしい女性、私みたいな年寄りには勿体ないです。もし不安でしたら部屋に鍵でもつけて…」


「!いえいえ、そんな気を使って貰わなくて大丈夫です!」

 だあぁー!気を付かせてしまった!むしろこんなイケメン毎日拝めるなんて役得です!とかは流石に口に出せないけど頭を下げながら少し引っかかった。


「……え、若くてってそんなに私とかわらないですよね?」


 どうみたって20代後半、それも大人びた仕草がそう思わせているだけで果たしたら私と同じく大学通ってても全然可笑しくない。嘘でも年寄りなんて言葉は似合わな過ぎる。


 一瞬、私が言ってる意味がわからないような仕草をしたけど手をポンと叩いてリューさんは微笑んだ。


「そうでした。あたなは此処とは違う場所から来たんでしたね。それならば違うことも沢山有り得ますね。」

 それについても話合わなければ。此処とは違う世界…興味深いですね……



 なにかこの人にいけないこと言ってしまった気がする。小さい声でぶつぶつ言ってるし、今までと目の輝き方が違う気が……ふとそんな目とかち合った。


「すみません。話の途中でしたね…そうですね、これが一番手っ取り早いですか」

 そう言いながらリューさんは腰まで伸びた綺麗でいて少し不思議にきらきら輝る翡翠色の髪を今まで隠れていた耳にかけた。



「私の種族はエルフといいます。あなたの言葉からするとあなたの世界には存在しないんでしょうか」


 そこに見えたのは先が長く尖った綺麗な耳だった。


 ……エルフ?

「エルフ?!エルフってあのエルフ!?」


 驚きすぎて噎せた私をリューさんが後ろからさすってくれる。

 知ってる!いや存在はしないけど、生きててエルフを直に見れる時がくるとは!

 うわー耳尖ってるー!触りた……いやいや、ちょっと落ち着け自分。でも納得。エルフだからこんな綺麗なのかな。さっきの年寄り発言も筋が通る……


「……因みにお幾つになるんですか?」

 失礼かもだけど気になる。

「ふふ、幾つにみえます?」


 えーと、自分の事年寄りとか言うくらいだし

「…80歳くらいですか?」

「じゃあ、そういうことにしておきましょう。」

 ……はぐらかされた。この人にこにこしてるけどこの笑顔に誤魔化されてる気がしなくもない。


 まぁ、いいか。

 住む場所を確保出来ただけ今の私にこの人に言えることは何も無い。





 まぁそんな感じでそれからはお互いに知りたい事を聞きあって名前で呼び合うくらいの中にはなった。


 私がリューさん呼びなのはリュカツァリアが長いのと何回か噛んじゃってから本人にリューさん呼びに直された。純日本人には辛い名前だったので有難い。


 それと同時に一緒に生活しててリューさんが壊滅的に家事、特に料理が出来ないことがわかってからは私が料理を担当してる。何もしないのも申し訳なさすぎるしね。

 といってもリューさんにその自覚はない。熱出てる時はご飯どころじゃなくて水しか飲めなかったから知らなかったけど、初めて出された時それが原因で死んじゃうかと思った。元気な時で良かったって心から思う。あれは人が食べれるものじゃない。

 そんな顔真っ青の私を不思議そうに見ながらリューさんはパクパク口に運んでた。初めてリューさんが人と違うって思った。

 エルフは皆胃が頑丈なんだろうか……もしこれから会う機会があれば聞いてみよう。




 ―それで今に至るけど今は今夜の夕飯に使う野菜とかを家の隣にある畑で収穫中。この畑リューさん一人に対して広さが合わない気もするけど……


 この畑はなんとリューさんの手作り。

 ……田舎で育った私は知っている。野菜作りがいかに手間がかかるかを!

 それをあんな作り物みたいに綺麗なリューさんが桑抱えて畑耕してるのとか想像出来ない。違和感だらけでしょ……


 っていうのが初めて見た時つい口に出ちゃったんだけど、なんと!!!

 この世界、魔法が存在したんです。

 だから畑は勿論、生活するには魔法でほぼほぼ何とかなるらしい。



 だって料理するのにコンロにレンジとか冷蔵庫とか水道、全部私がいた世界より便利なんだもん。料理好きとしてはテンションダダ上がりしたね!!


 私の世界でいう家電は魔力を込めた魔石ってやつが埋め込まれて動くようになってる。見た目は私の世界と近いものばかりでそんなに困らない。

 お風呂とかも同様。




 で、だ。魔法についてはリューさんから毎日少しづつ教わってるため定着しつつある。が!


「……リューさん、ちょーと質問いいですか?」


 私力作の夕飯、ハンバーグを口に運ぼうとしていたリューさんは顔をあげる。





「この一週間此処に置いてもらって思ったんですが、私、リューさん以外の方を見かけない……というかこの家の周りって人住んでます?というかこの家他に誰か居ます?」

 なんといいますか、毎朝冷蔵庫開ける度に無かったはずのお肉とか卵とか、挙句の果て焼きたてのパンとか置いてあるんですけど……


 リューさんは食べれればいいって感じの人だし、そんなことしなさそう。当然私じゃないし。


「あぁ、その事すっかり忘れてました。」


 忘れないで下さい!内心かなりビクビクしてたんですけど……


「だいたいは契約している精霊に持って来て貰っています。この前あったパンは私の弟子ですね。多分」

 なづなさんを驚かせてしまうと思っておいおい話そうと思ってたんですけどうっかりしました。



「……精霊に、弟子?」


「今は私の傍にはいないんですが……後々会う機会もあるでしょう。その時にでも紹介します。」



 はぁ、あまりにも規格外のことを言われて生返事しか出来ない。突っ込みどころあり過ぎて言葉がでないよ、、

 リューさんはもう目の前のハンバーグに夢中だし。



  …………まぁ、家に来てるって事は近々会えそうだし、まぁいいか。

 そう考えで目の前のハンバーグに私も舌づつみをうったのだ。







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