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月影のエレメンター(なろう版)  作者: ハイエナ=エレメント
五神祭編第三章・Asterisk
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Lasting・第七十九話

悠牙ユガ

 森の奥にて毒死した状態で見つかる。自殺なのかどうかははっきりしないが、カーリーの指導者の死をもって事件は幕を下ろした。

 テロリストとの戦いを終えたエレメンター達はその後、何事も無かった様に五神祭を続行した。


 山滉穎やまこうえいが率いていたトイラプス帝国のβ(ベータ)チームは初戦を勝ち抜いた。その後の試合もキャプテンである滉穎こうえい不在の中で次戦のタートリア帝国のα(アルファ)チームに勝利するという大金星を上げた。しかし、その試合での疲労がかなり大きく、彼らは三日目の同じくタートリア帝国のβチームに負けてしまった。それも、虎武龍麒こぶりゅうきのストレート勝ちという結果で。

 しかし、ベスト・フォーに残ったというのは非常に良い結果であり、彼らは誇るべきだろう。




 虎武龍麒こぶりゅうきは四日目の決勝戦でも神格武器「三尺の秋水」を駆使してストレート勝ちを決めた。実に十年ぶり、つまりは玄羽くろう=ヴァトリーと滝口守屋たきぐちもりや以来の快挙であった。




 望月朧もちづきおぼろが率いた隊は死者を出しつつもテロリストの殲滅に成功した。

 これにより、実質的にテロリスト集団「カーリー」は壊滅し、残るは取るに足りないであろう非覚醒者の者達のみとなった。

 しかし、おぼろが受けた被害も決して小さくはなかった。彼は部下のために供養を行い、その後イオへと赴き、名も知れぬエレメンター達と、犠牲になってしまった非覚醒者のために黙祷した。カーリーのせいで犠牲になってしまった彼らの仇を、おぼろは取り、その報告と冥福を祈りに行ったのだ。




 滝口守屋たきぐちもりややルクス=カンデラも通常業務へと戻り、皇帝に今回の事件の詳細を伝えていた。




 玄羽くろう秀羽しゅう親子もトイラプス帝国において皇帝の留守を守り、責務を果たしていた。それは、おぼろの父親、望月明衡もちづきあきひらも同様で「イオパニック」で甚大な被害を受けたイオの復興も進んでいた。




 松尾冬輝まつおとうきに六花・墨竹を与えた北弓月きたゆづきエイナイエンも都市ガニメデで更なる錬金術の鍛錬を積んでいた。




 イヴァン=J=グランドウォーカーを始めとするフレア帝国のβチームは、滉穎こうえい達に負けた悔しさからか訓練を積極的に行っていた。

 イヴァンは他にも理由があったそうだが。




 そして、滉穎こうえいやアスタグレンス=リヴァイン、望月月英もちづきげつえい江月華こうげつはなもまたそれぞれの所で努力をしていた。


 トイラプス帝国へと戻った滉穎こうえい玄羽くろうに厳しい修行を頼み、魔法の鍛錬に加えてパラディグマ学園に通い勉学に励んだ。約束を果たすために。


 アスタグレンスもティマイオス学園に再び通い始め、一瞬にして卒業資格を取得。その後、日本で言う大学院の様な機関に入り、研究と研鑽を積んだ。約束のその日のために。


 月英げつえいもまた陰陽術を始めとする魔法の研究と訓練をし、与えられたギフトの力を使いこなそうとしていた。運命フェイトを覆し続けるために。


 はなも実家へと舞い戻り、自身の神格武器「月華」の修練を鬼気迫る形相で挑んでいた。憧れの人に近付くために。




 そんな風にして、一、ニヶ月が経過した。


 南半球に存在する南方人民共和国連合において。


 ある白髪の老人が荒びれた街の中を歩いていた。本来であれば、目立つ様な白い髪であったのだが、辺りは人通りも少なく、居たとしても家を持たない浮浪者だった。加えて、彼は色褪せたフードを目深にかぶり、顔もその髪色も分からなくなっていた。そのため、彼が好奇の目線を向けられることもなく、誰もいない通りの中を真っ直ぐに歩いていた。




 やがて、髭も白い老人は街の外れに在る孤児院に着いた。そこは教会も兼ねているのか、十字架が扉の上に付けられていた。いや、宗教的な教会が孤児院を兼ねていると言うべきだろう。


 老人は中に入ると、フードを外し、そこの責任者に一人の子どもを呼び出す様に言った。




 その内、どこかで見た様な覚醒者の面影を残す一人の子どもが現れた。その子は七歳くらいの小さい子だった。


「この子のご両親は?」


 その子を見た老人は、目の前の子に聞かれない様にして責任者に聴いた。

 責任者も囁く様にして答えた。


「父親は仕事の最中に亡くなりました。母親も、どこからか送られて来るお金でその日を暮らしていましたが、つい先日病死しました。ここら辺は、まともな病院もありませんから」


 確かに、近くには病院が無いどころか、衛生状態もお世辞には良いとは言えない。こんな中で病気に掛かれば、治すのも一苦労な上にそれが死に直結することも珍しくない。


 その事を聴いた老人は一瞬悲しそうな表情を浮かべたが、笑顔を作り、子どもの視線に高さを合わせ、話し掛けた。


「こんにちは。君の名前は何と言うのかな?」


 子どもは警戒した様子であったが、責任者の顔を見ると小さな声で答えた。


「ラザン・・・・・・です」

「そうか。羅山ラザンか。良き名だ。

私は君の祖父に頼まれてね。君を引き取りに来たよ」


 そう言うと、子ども、羅山ラザンは小さく首をかしげた。


「そふ?」

「そう。君のおじいさんだ。一緒に来てくれるかな?

おじいさんは長い旅に出てしまってもう会えないけれど、私が代わりに君の祖父に成ろう」


 柔和な笑みを浮かべた老人に対し、羅山ラザンは頷き小さい声で言った。


「うん」

「では、行こうか」


 その後、白髪の老人は羅山ラザンと共に外を歩き、街を離れ、どこかへと消えていく。




 この時は誰も知る由は無かった。

 老人が育てた羅山ラザンが、後に滉穎こうえいの部下となり、大戦後に魔王・虎武龍麒こぶりゅうきの左腕として魔境の平和に貢献するエレメンターと成るとは。


 しかし、それは遠い先の未来の話。

羅山ラザン 七歳

 悠牙ユガの息子と破沙羅バサラの娘との間に出来た子ども。つまり、悠牙ユガ破沙羅バサラの孫。名前は母親が破沙羅バサラの名前から一字を取って付けた。

 父親は小さい頃に仕事の最中に死亡し、母親は病死したため、有識ある者が運営する孤児院に引き取られた。

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