Stay Night〜Satellite〜・第六十七話
・ナーガ
インド神話に登場する蛇神の一族であり、地下世界パーターラに独自の王国を築いて生活している。ナーガを治める諸王のことは「ナーガラージャ」と呼ばれる。
神鳥ガルーダと敵対関係にある。
欠けた所が無い月が真南に差し掛かった頃、オリンピアの南部に在る洋館に武装をした集団がいた。
彼らを率いていたのは滝口守屋、トイラプス帝国の近衛隊隊長であった。
そう、洋館とその周辺に展開していた武装集団は、本来は東の皇帝を守るべき近衛隊であったのだ。
雲に隠されていない月からの光により、今夜はいつもより明るく照らされ、彼らの行動を円滑にさせていた。しかし、彼らの様子からはどことなく気力が抜け落ちていた。
その腑抜けた様子を叱咤すべき守屋も、今は悔しさからなのか、顔を歪ませ、手を握りしめるのみであった。
時は数刻前まで遡る。
守屋は、五神祭が始まってからというもの密かに玄羽=ヴァトリーの弟子であり、右腕と称されるルクス=カンデラと会っていた。そして、彼からテロリスト集団であるカーリーの予想される行動と、それに対抗するための彼の計画を聞かされていた。
ルクスは守屋に彼の弟弟子である山滉穎を手助けする様に言われ、ついで満月の夜にアスタグレンス=リヴァインがいる館にカーリーが強襲するから、守りに行って欲しいと頼まれていたのだ。
最初は、それはフレア帝国の近衛隊か光剣部隊に頼むべき、と断っていた守屋ではあったが、既に根回しをされており、皇帝から直々に命令を下された。また、隠密性の重視、信頼性からの観点からも自国の近衛隊しかいないということで、渋々ではあったが引き受けたのだ。
もちろん、不本意とはいえ守屋を始めとする近衛隊の隊員には真面目な人間が多く、与えられた任務には忠実かつ迅速だ。
今回もその戦闘力と防衛力の高さで以て、ミッションを遂行できる・・・・・・はずだった。
予定通り、アスタグレンスの護衛を務める阿僧恒河がオリンピアまでフレア帝国のβチームを護衛して来たのを確認した守屋は、近衛隊の精鋭五十人を連れてオリンピアの南側の外壁で待機していた。
この五十人は、選りすぐりの近衛隊の中でも、口が堅く、信頼でき、実力が高い。守屋は副隊長に皇帝の護衛を任せ、その精鋭集団を率いていた。
彼らは、守屋から作戦内容は聞かされているものの、その全容を明かされていない。しかし、例え疑問符を浮かべたとしても次の瞬間には自我を殺して任務に忠実になれるのが、彼らの利点であり選ばれた理由でもあった。
そして、ついにカーリーの一員と目される恒河がオリンピアから出て、南の洋館へと向かって歩を進めていた。
その姿は、邪なことなど無いとでも言う様に威風堂々としており、正面から立ち向かえば強大な圧を感じさせられるだろう。
しかし、彼ら近衛隊に通用する程ではなかった。
近衛隊は常日頃からトイラプス帝国で最も高貴な皇帝の側で仕え、その厳かな雰囲気と威圧を至近距離で受け続けているのだ。
テロリストのそれなど、そよ風にも等しかった。
だからと言って、彼らは恒河を舐める様な真似はしない。
冷静に相手の力量を分析し、適切な対応をその場で取り続ける。それが出来るからこそ、彼らは近衛隊という栄誉ある職に就けているのだ。
恒河がオリンピアより数キロメートル南の丘陵地帯に差し掛かった所で、彼らは計画を行動に移した。
守屋の合図と共に油断無く、抜刀した状態で恒河を囲んだ。
「阿僧恒河! いや、カーリーのナンバーツー、破沙羅! 大人しく投降せよ! 貴様は既に完全包囲されている」
忽然と姿を現し、自分を捕らえると言う彼らに対して、確かに恒河は動揺した様子を見せた。
しかし・・・・・・
「何のことでしょうか? 私は確かに阿僧恒河ですが・・・・・・バサラ? そんな名前には心当たりもありません」
あくまで、しらを切り続けるつもりの様であった。
だが、近衛隊にとって彼を捕まえることは既に確定した未来であり、彼が何と言おうとそれが覆ることはない。
先程の近衛隊の言葉は、恒河いや破沙羅に対する最後の警告であった。
さすがの破沙羅も多勢に無勢な上に、明らかに格上のエレメンターが近衛隊には多くいる。
破沙羅は額に汗を浮かべ、蛇に睨まれた蛙の様に動けずにいた。
そうして、近衛隊の一人が破沙羅を捕まえようと近付いた、その瞬間だった。
「守教!! 後ろに跳べ!!!」
隊長である守屋からの急な命令に即座に反応した守教は破沙羅から離れた場所に着地した。
その刹那、守教が先程まで居た場所にニメートルはありそうな大剣が振り下ろされた。
地面が砕け、土塊が宙を舞う。
続けて、その大剣は丁度土塊が隠していたある隊員の視界を突く様に攻撃を繰り出した。
しかし、流石は近衛隊の精鋭と言うべきか、その隊員は咄嗟に剣で応戦し、事なきを得た。
だが・・・・・・
「ぐわっ!?」
大剣が持つあまりのエネルギーに耐えきれず、後ろへと吹き飛ばされてしまう。
そこで漸く大剣は止まり、状況は一旦の落ち着きを見せた。
そして、近衛隊が展開していた場所から南の方向から人影が現れ、包囲されている破沙羅に声を掛けた。
「破沙羅君。ここは私と蚩游が引き受ける。早く南に逃げ給え」
その声に応える様に大剣を振り回していた男、蚩游が動き出す。
南側に居た近衛隊に向かって走り出し、身の丈程ありそうなその大剣を振り下ろして来たのだ。
先の一瞬の攻防を見ていたためか、近衛隊は無闇にその大剣を受けず、一歩引くことで大剣を躱した。
それに連動する様に、左右に居た近衛隊の隊員が蚩游へと攻撃を開始した。
蚩游と後ろにいる謎の人物の登場により、少なからず動揺していた近衛隊であったが、臨機応変に対応し、蚩游の動きを完全に封じ込め、加えて破沙羅に対する包囲網も全く崩れてはいなかった。
そして、隊長の守屋は後ろの謎の人物に誰何する。
「貴様は誰だ? もしや、波俊水明か?」
「さあ? どうでしょうか?
それはともかく、彼を捕まえるのは困ります。彼にはまだ役目が有るのですから」
「蛇を竜にするための生贄としてね」と、男がそう口を動かしたのを守屋は読唇術で読み取った。
守屋はそこまで自分のことを頭脳明晰と思ってはいなかった。いや、実際の知能指数はかなり高いのだが、彼の親友のせいで自分は頭が良くないと思い込んでしまっているのだ。守屋にとって知能の基準はその親友であるのだから。
そして、親友はこの様な混乱した事態においても頭の回転が速く、何が起きているのか推察するだろう。
それが守屋には出来ないことに歯噛みしながらも、彼は起こり得る一つの可能性に思い当たり、唐突に声を荒げた。
「包囲を解け! 近衛隊、密集隊形!!」
急な指示ではあったが、近衛隊は忠実に遂行し、散開していた状態から背中を向かい合わせる様にして隊形を整えた。
包囲を一度解きながらも、隊形を完全に崩壊させることなく密集陣形へと素早く組み替えた、その直後であった。
まるで、奈落から湧き上がるかの様にどす黒く、異様な物体が地上にその姿を現した。
その姿はインド神話を起源に持ち、コブラの姿に似た「ナーガ」を象っていた。
その数、なんと三百四十三匹。
罪人の破沙羅を囲っていたはずの近衛隊五十人は、今度は逆に三百を越える魔物に包囲される形となってしまった。
魔物、ナーガは三メートルはありそうなその巨躯を地に這わせ、しかし想像を裏切る速度で近衛隊に接近した。
口から巨大な毒牙を見せつけると、複数ある頭で同時に、無慈悲な攻撃を繰り出した。
更には、五メートル以上は離れた場所から近衛隊目掛けてジャンプし、その迫力もさることながら一気に距離を詰めてくる。
近衛隊は、何とか自分達の得物で魔物の連続的で怒涛の攻撃を凌ぐだけで精一杯になっていた。
「くそっ、アウトブレイクか!!!」
近衛隊の誰かが、そう叫んだ。
アウトブレイク、地球では「(戦争などの)勃発・発生」の意味を持つ。
しかし、魔境においてはその意は少々異なる。確かに、「戦争などの突然の勃発」などの意味を持ち合わせてはいるが、主に使われるのは「魔物の発生」だ。
魔物は、自然発生するものではない。人工物と言って良い。
遺伝子を基に身体を創り、命を繋いで行くのが生物だとすれば、負の感情から生み出された魔力を基にその形骸を造り、命を破壊して行くのが魔物である。
負の感情は人間の憎しみ、恨み、悲しみ、絶望などからと生じ、それを利用して魔物を造るのが暗黒世界である。彼らは負の感情を蓄積させた、つまり情報化した魔力を特殊な技法で石の中に内包させ、然る後にそれを破壊することで魔物を発生させる。
それが常に戦争の中で、突発的に起こるものであるから、「魔物の発生」は「アウトブレイク」と呼ばれる。
そして、魔物の姿というものは往々にして人間が畏怖するものを基にしている。例えば、昆虫が嫌いな、または毒虫を怖がる人間がいたとすれば、その人間の恐怖から生み出された魔物は背筋が凍る様な虫の姿を象ることが多い。また、そのイメージは畏怖の対象だけに留まらず、畏敬の対象、神話や概念といった所まで使われることが有る。
今回、近衛隊を襲ったナーガはインド神話に登場する蛇神の一族だ。その姿は頭が七つある蛇だったり、下半身が蛇である人間だったりする。更に、敵対者を死に至らしめる強力無比な毒を持つとされている。
魔物は、負の感情からイメージとエネルギーを貰い、それを利用して極悪な形へと変化する。当然、その能力や弱点もイメージに沿われており、魔物を殲滅しなければならないエレメンターは即座にそれらを把握するために神話を勉強しなければならないのだ。
近衛隊には強さだけに非ず、敵の弱点を知り得るための知識も要求される。
今回の襲撃においても、それは例外ではなかった。
閑話休題。
当初は苦戦した近衛隊であったが、守屋の命令が迅速かつ的確だったためか、近衛隊と魔物の攻防は散発的にならず、近衛隊は堅い陣形を築いた上で彼らを屠ることができていた。
例え神話に登場するナーガを模したと言えども、所詮は変温動物である蛇だ。
近衛隊は氷属性または火属性の魔法を使って環境を変化させ、ナーガの動きを鈍らせた後に複数ある頭を切り落とした。
状況は、近衛隊に有利な方向へと徐々に動いていった。
一人、魔物によって部下達と離れてしまった守屋は、この状況を作り出したであろう人物に向かって一気呵成に距離を縮め、袈裟斬りを繰り出した。
しかし、一時の混乱状態によって破沙羅から目を離した隙に破沙羅は南に逃げ、そして蚩游は遊撃手となっていた。
故に、蚩游は己の主を守ろうと、横から守屋に接近し、その大剣でキーンという音を鳴らして刀を弾いた。
だが、流石は東の帝国一のエレメンターと言うべきか、守屋は体勢が崩れることはなく、一切の隙も見せずに蚩游と相対した。
二人は一言も発せずに向かい合い、相手の挙動を観察していた。二人の呼吸のタイミングが重なった時、まるで示し合わせたかの様に同時に動いた。
神速と呼べる程の速さで守屋は肉迫し、自分の身体よりももしかすると大きい大剣を相手に剣戟を繰り広げていた。
刀と大剣が交差する度に火花が舞い散り、一度の瞬きの間に幾多の剣撃が鳴り響く。
二人の動きはもはや素人では捉えられない程に加速し、今もそれは加速度的に上昇している。
「「《思考加速》」」
遂に、素の状態では神速の戦いに追い付けないと判断したのか、守屋と蚩游はほぼ同時に自身の思考速度を魔力によって上昇させた。
彼らを遠巻きから見ていた水明は、満足そうに微笑むと、その存在を闇の中へと溶け込ませた。
「あの男・・・・・・隊長とやり合えるなんて」
一方、近衛隊は三百匹近いナーガとの戦闘に余裕が出て来たのか、自分達の隊長がいる方向に一瞬視線を遣った。
すると、目に入って来た光景は隊長と蚩游なる男が人間とは思えない速度で剣を打ち合っている所だった。その光景に、近衛隊はナーガを討ち滅ぼしながら驚愕の顔を顕にしていた。
それもそうだろう。何しろ、彼らでは隊長である守屋との試合では数十秒も経たずして決着してしまうのだから。極限まで頑張ったとしても、一分後には膝を地面に付けてしまう。
それなのに、大剣使いは少なくとも二十秒は守屋と互角に斬り合っていた。
いや、実際は蚩游は守屋によって既に無数の裂傷を作られ、更には後ろに押し込まれていた。
しかし、もはや肉眼では見えない領域に入った二人の戦いを暗闇の中で見れば、そう捉えてしまうのも仕方がないことであった。
シャリン! という音を幾度も鳴らし、日本刀使いと大剣使いの戦闘は激しさを増していく。
守屋は頭部に来た攻撃を背を僅かに反らし、前髪がチリチリと切れる寸前の所で回避する。
すると今度は腹部を狙って横斬りが繰り出される。刀で迎撃せず、軽く跳躍することで躱し、更に大剣の腹へと乗った守屋は鋭い突きを放った。
しかし、蚩游は首を曲げてギリギリの所で避け、守屋の体重で重くなったはずの大剣を軽々と上に持ち上げた。
宙に放り出された守屋ではあったが、空中であっても体勢は崩れず、上から蚩游へと攻撃を繰り出す。
だが、やはり空中と地上にいる人間とでは力の差が生じ、防御されるだけで守屋は後ろへと弾き飛ばされた。
地面に手を一瞬付けた守屋ではあったが、たたらを踏むこともなく、十五刹那後には蚩游との打ち合いを再開した。
そして、守屋の斬撃を大剣の腹で受け止めようとした蚩游に対し、《縮地》とも思える速度でもはやゼロに近い程肉迫した守屋は、剣の腹に手を添えた。
「《風爆》」
瞬間、莫大な圧力を伴った風が蚩游を襲い、思わず目を瞑った。
それは当然だった。
何故なら、守屋は先の地に手を付いた刹那に幾らかの土を握り、それと一緒に《風爆》を発動させたのだから。一種の目潰しであった。
重ねて、先程から守屋は大剣の同じ箇所を集中的に攻撃しており、チタン並みの硬さを誇る大剣も脆くなり、金属疲労が起こったのだ。
駄目押しに、《風爆》の強大な圧により大剣は真ん中から破壊された。
それを見逃す守屋ではなかった。
一瞬の隙に飛ばされた蚩游と距離を詰め、袈裟斬りを繰り出す。
蚩游は薄っすらと目を開け、折れた大剣で防御しようとするも、長さが足りずにあっさりと刀は蚩游の身体に届いた。
ブシュッ! という音を立て、蚩游は胸に大きな裂傷をもらった。
しかし、少しだけ浅かった。
蚩游の動きは鈍くなりつつも、大剣を振り上げ、然る後に地面へと勢い良く刺し付けた。
「《捲土》」
蚩游の身体を覆う程に土が舞い上がり、守屋は一歩下がり、様子見をした。
そして・・・・・・、
「逃したか」
小さく呟き、守屋は綺麗に血を拭き取った刀を、鞘に静かに優雅に納めた。
心情的には蚩游を追い掛け、決着を付けたかった。しかし、彼は私情で優先順位を変えることはない。
彼と彼の部下にとって大事なのは、いち早く洋館へと辿り着き、テロリストを一掃した上で、咎人である破沙羅を逮捕することなのだから。
後ろでは、近衛隊が漸くナーガを全滅させた所だった。
その後、態勢を整えた近衛隊は洋館へと急ぎ、そして驚愕の色にその顔を染めた。
洋館の庭には、死屍累々とした光景が広がっていたのだ。
テロリストの死体と思われるのが約五十体、加えて全員がまるで怪物に襲われたかの様に恐怖に顔を歪ませていた。
おそらくは山滉穎がやったのだろう。そう守屋は当たりを付けた。
守屋は防衛上の観点からあらゆる神格武器の能力や伝承を調べ、知識として蓄えている。
その中には当然、望月家の家宝であった「電影」も含まれており、彼はその内容を独り思い出していた。
満月の夜、稲妻を操る梓弓は真価を発揮し、あらゆる光を消滅させ、敵を恐怖に陥らせ、自滅させる・・・・・・か。
どうやらその能力は本当らしいな。まさか、ここまで強力なものとは思わなかったが。
その後、守屋は部下からの報告に耳を傾けていた。
曰く、既に殿下と滉穎は連れ去られ、洋館には争った、いや破壊の蹟が有った、と。
曰く、銃が使われた形跡が有り、射線を特定すると林の中だ、と。
曰く、林の中には魔術、いや魔道具が使われた様な痕跡が有り、この大人数から推測するに、暗黒世界の空間属性のものではないか、と。
守屋は先の水明について考えを巡らせた。
果たして、奴の目的は何なのか?
「蛇を竜にする」とは、一体どういうことなのか?
協力者であるはずの破沙羅を「生贄にする」とは、何故なのか?
与えられた情報が少な過ぎて結論にはとても辿り着けなかった。
そうこうしていると、いつの間にかルクスが守屋の近くにいた。
そして、ルクスは守屋に頭を下げると、
「滝口隊長。ご協力ありがとうございました」
と、感謝の念を口にした。
しかし、
「いや、私は・・・・・・私達は何の役にも立てなかった。犯罪者を取り逃がし、あまつさえ殿下も彼も守れなかった。彼との約束を反故にしてしまった。
せめて、殿下と彼が連れ去られた場所に私達で奇襲を掛け、助けだそう」
相変わらず義理堅い人だ。
ルクスはそう思わずにはいられなかった。
本来は、アウトブレイクを速やかに処理し、一切の犠牲も出さなかった守屋達を褒めることは有っても、彼らを責められる理由などありやしないのだ。
それでも、守屋と彼の部下達は当初の任務を確実に遂行できなかったことを悔しがり、申し訳なく思っているのだ。
近衛隊にはそういった人物が選ばれるのか、それとも守屋に感化されたのか、全員がそんな感じだった。
しかしながら、言っては何だがルクスにとってはこれも予想した結果の一つであった。別に問題はなかった。
「いえ、ここからは私達の本分です。
近衛隊は、本来の仕事に戻って下さい。近衛隊のおかげで、カーリーは潰せそうですから気落ちしないで下さい」
それを聞いた守屋は、
「そうか。これもあいつの想定通りなのか。全く、いいように使われてしまったな。昔からそういう奴だったよ。
蓋し、彼にも伝えていないのだろう?」
「ええ」
ルクスは小さく頷いた。
「分かった。では、私達は皇帝陛下の元に戻るとしよう。
近衛隊! この場の処理が完了次第、オリンピアへと帰還する!」
「「「承知しました!」」」
ルクスは東へと傾き始めた光に満ち溢れた月を見上げ、微笑みを整ったその顔に浮かべていた。
・アウトブレイク
戦争などの勃発・発生のこと。
魔境においては「魔物の発生」のことを言う。それは、暗黒世界との戦争時に使われる魔物は常に突然に発生し、戦闘が勃発することから由来している。




