過去との遭遇(2)・第ニ十八話
・召喚者成績(戦闘)と得意分野
1.山滉頴ー近接戦闘
2.稲垣翔祐ー剣術(刀)
3.小栗臥龍ー肉弾戦
4.松尾冬輝ー奇襲・二刀流(双剣)
5.木村捷ーサポート
「くそっ、こいつ強いな」『撤退する』
『了解』
稲垣翔祐は木々の間に隠れながら撤退の指示を出し、頭目から距離を取っていた。
「おいおい、逃げるのか? 情けねぇなぁ〜。もっと戦おうぜ」
頭目は憎ったらしい声で叫び、余裕の表情をその薄汚れた顔に貼り付けながら四人を探していた。
「おい、翔祐、どうするんだよ」
「ここは逃げよう。今の状態じゃ勝ち目がない。山と合流しよう」
「分かった」
その時、迷宮の入口から足音が響いた。と言っても、彼等にその音が聞こえる訳もなく、頭目も例外なく、気配にすら気付きはしなかった。
その出てきた人間、いや土人形のエレメンター、正確には精霊、は辺りの様子を見渡すとそこに転がる山賊達を捉えた。
「《バインド》」
手を伸ばすと、その腕から金属線が数多伸び、たちまち山賊を全員捕縛した。そして、そこら中に散らばっている剣を今度は自分の元に集め始めた。
頭目はそこで後ろの存在に気付き、ゆっくり振り返り、その姿を捉えた。そして、また薄気味悪く微笑し、
「守護者、いや、管理者のお出ましか。こりゃラッキーだな」
ASは当然、頭目に気付いていたが、構わずに剣を引き寄せると、それらを溶かし、球状にした。
「《錬金》並びに《錬成》」
ドロドロに溶け、球状になっている金属から、一本の剣を出す。それは、美しい銀色の光沢を放ち、少しでも触れようなら体を一刀両断されそうな鋭い輝きを放つ。
残りの金属は、全てASの体に取り込まれ、土の身体は金属の骨格を得た。
「流石は管理者、やることが豪快だな」
そう言いながら、頭目は身を潜め、ASに奇襲する機会を窺っていた。その様子は既に翔祐達のことを脳裏から排除している様だった。しかし、
「そこの盗賊、いや山賊、いい加減に出て来たらどうだ」
ASは剣先を頭目に向けるとそう言い放った。
「へっ、やっぱり気付いていたか」
頭目は木の陰からゆっくりと姿を現し、ASに近づいていく。
「投降するなら命は取らん。
死にたいなら武器は捨てないことを助言してやろう」
「ほぉ、かなりの自信じゃないか。確かにお前のその莫大な魔力と魔法の正確さは脅威だが、今はその自信が仇になるぜ」
再び微笑した頭目は親指を地面に向かって突き立てた。
「死ね」
その瞬間、迷宮の入口の上から一人の山賊があの短剣を持ってASに襲いかかろうとした。
しかし、ASは自然体のまま剣を真後ろに突き立てた。山賊は慌てて避けようとするが、勢いは殺せず、肩に剣は突き刺さった。
「ぐわぁあああ!」
「《バインド》」
山賊は断末魔のような叫び声を上げるが、ASは冷静にその男を無力化する。
「これがお前の言う仇か?」
ASが問いかけると、ついさっきまでいた頭目はそこにはいなくなっていた。頭目の足跡は翔祐達の方向にあるから、おそらく人質を取ろうとしているのだ。
「全く、これでは逃げたと同義だな。さっきの彼等への台詞、そっくりそのまま奴に当てはまる」
その頃、木村捷はゴーレムの所に向かい、走っていた。
「ったく、何でいつも俺達は厄介事に巻き込まれるんだか」
そう誰に向けた訳でもない不満を口にしながら彼は走っていた。そんな彼の遠く離れた背後では、彼等のリーダーが残党を全員無力化した所であったが、彼にそれを確認する暇はなく、気付いていなかった。
そして、彼のすぐ後ろを追跡するニ人の存在にも。
・召喚者の過去
魔境に召喚される者のほとんどは死に際または、死の危険が迫っている者達で、彼等をどう選抜しているのかは神のみぞ知る。また、死んでしまった者は転生という形で魂の記憶が漂白される前に送られる。
しかし、1割強、死の危険すらもなく、血縁関係の者がいない人間でもない者が召喚者に選ばれる。今回の山滉穎達の召喚がその例である。神も彼等の境遇を考えて送るため、一方的なことはしない。そのためにこの大召喚は魔境でも初めてで、前例がないことである。
そして、今回の召喚者選抜の要因には彼等の過去が関わっている、と天使ガブリエルから情報が渡された。




