過去との遭遇・第ニ十七話
・魔境の言語分布と歴史的理由ートイラプス帝国
東の帝国では主に日本語をはじめとする東アジア圏の言語が使われている。
約2000年前、トイラプスがフレア帝国から分裂した時、フレアではローマ、トイラプスは中国とユダヤの言語が大半を占めていた。その後、大陸の東で建国したトイラプスでは召喚者、転生者ともに東アジアが増えていった。
特に、50代皇帝の時代以降は漢字を扱う国の言語が主流で、(地球の)16世紀まで変化は見られなかった。しかし、西暦1500年を過ぎた頃から戦国時代の日本からの召喚・転生が増加し始めた。その理由は、当時いわば戦闘民族だった日本の武士の需要が暗黒世界との戦争が頻繁に起こる魔境で高まったから。
江戸時代に入っても増加は緩やかに続き、拍車をかける様に江戸の人口が世界有数を誇り、また識字率も高かった。その結果、戦闘より知能指数を求める現在の魔境でも日本人召喚・転生が主流で、トイラプスの約78パーセントは日本の血を引く。
「《振動増幅型攻撃》!」
小栗臥竜は山賊が群がる真ん中に土を巻き上げて着地すると、山賊を片っ端から気絶させていく。
最初六十人近くいた山賊は既にその数を三分の一にまで減らし、山滉頴達の勝利は疑うまでもなかった。
しかし、迷宮攻略も相まって魔力の使用は限界を迎えようとしている者が大半であった。特に、ASと戦った木村捷を始めとする三人はその影響が既に戦闘に響き始めていた。
「まずいな。囲まれた」
山賊の一人が剣を構え、捷に突進する。
彼はそれを避けようとするが、足が木の根に引っ掛かり、態勢を崩す。
「しまっ! ・・・・・・っ」
剣は捷の腹部に突き刺さり、彼は一瞬死ぬのを覚悟したが、その時は訪れなかった。
剣は深く刺さることはなく、目の前の山賊は首から上がなかった。
勢い良く吹き上がる血しぶきが収まってから目を開けると、そこには山賊から奪っただろう血塗れの剣を片手に、佇む滉穎の姿があった。
「怪我はな・・・・・・、あるか。でも立てるよな?」
「あ、ああ」
「ASが少し山を登ると、遠隔操作のゴーレムがあるって言っていた。木村はそこまで行ってそのゴーレムを起動させてくれ」
滉穎は手を捷に差し出し、彼を立たせるとそう言った。
「分かった。でも山はどうするんだ?」
「そうだな。俺はもう少しここで粘るよ。俺の強さは根性だって自負している。この程度で音を上げはしないさ」
「そうか。無理はするなよ」
「ああ」
捷の言葉に頷いて反応を返すと、再び山賊と対峙するため、滉穎は踵を返した。
一方、稲垣翔祐達四人も徐々に山賊の数を減らさせ、残りは頭目らしき男の山賊のみとなった。
「全く、使えない奴らだな。たった七人にここまでやられるとは」
頭目らしき男は、地面に転がる部下の山賊を見下す様に言い放つと、消耗している翔祐達のところに向かっていった。
「来るぞ、警戒しろ」
翔祐は小さい声で三人に伝えると、真っ先に正面に立ち、隕鉄刀を構えた。
それを見た頭目らしき男は、薄気味悪く微笑すると、腰に携えていた湾刀を構え、地面を思い切り蹴った。滉穎より少し遅いぐらいの速さで翔祐との距離を縮めると、大きく湾刀を振り下げた。
翔祐もそれに反応して受け止めるが、そのあまりの強さに地面に膝を付けた。
「ぐっ・・・・・・」
ニ人が鍔迫り合いをしているところに松尾冬輝もニ本の剣を構えて飛び出す。
「はっ!!」
冬輝がニ本同時に振り下ろすが、それを頭目らしき男は翔祐と一緒に湾刀の一振りで吹き飛ばす。
「ははっ、神格武器と言ってもこの程度か。そこの双剣もさっきから一本しか使っていないしな」
頭目は冬輝の弱点を見破っていた。
「くそっ、この馬鹿力め」
滉穎や臥龍と比べ、遜色ない馬鹿力に思わず翔祐は悪態をついた。
既にニ人の息は上がっており、四対一の状況でも戦況は不利になっていた。
・フレア帝国言語分布
英語が主流で、第二言語として欧州の言語が使われる。
4000年以上前から存在するフレア帝国は、第一言語(標準語)、または主権が
オリエント→
ユダヤ→
ギリシャ(暗黒世界誕生)→
ローマ(トイラプス帝国誕生)→
イスラム→
モンゴル(タートリア帝国誕生)→
スペイン→
イギリス→
フランス→
イギリス→
アメリカ(現在)
へと度々移り変わっている。そのため、首都ラーに大言語図書館が建設され、そこに億を越える蔵書が保管されている。




