月影の起点(3)・第ニ十四話
・レジスト
魔法、魔術、つまり魔力に対してエレメンター、非覚醒者でも意思が強い者が持つ抵抗力。基本的に魔力量に比例するが、稀に抵抗力のみが高い者は存在する。抵抗力が相手の魔力に上回らなければ自身に干渉する魔法に対抗できない。抵抗力は魔力量と違って、身体的、精神的状況に大きく左右される。
ちなみに、滉穎はその抵抗力が強く、それは彼の自我の強さに起因している。
林佑聖と川相希望も山滉穎に続いて大男を制圧していた。
滉穎の右足が出たのを合図に、佑聖は変化魔法《イオン操作》を発動させる。
「なっ!? 動けない?」
佑聖は小柄な体格を活かし、顔に傷がある大男の拘束から抜け出す。
しかし、山賊の中にも覚醒者はいる様で、大男は数秒でその魔法をレジストし、打ち消した。
また、希望も自身の護身術を活用し、拘束から脱出した。
右手で短剣を希望の首に押し付け、左手で両手の自由を奪っていた髭面の大男に対し、《摩擦操作》を実行する。スルっと両手を拘束から解放させると、右肩を上げ、右手で髭面の右肘、左手で右手首を掴む。
そこから右腕を上げると、身を縮こませ山賊の右脇から髭面の背後を取る。
そこに滉穎は短剣を投げ、短剣は髭面大男の頸元に勢い良く突き刺さった。
「っ・・・・・・」
エレメンターであっただろうが、魔法発動も回避も間に合わず、痛みによる叫び声を上げることすら許されず、大量に血を噴き出しながら倒れていく。
佑聖と希望の後ろでも山賊への反撃を開始しようとしていた。
「さっきの作戦で行くぜ。翔祐は佑聖、冬輝は希望を頼む。臥龍はあのボスみたいな奴を牽制した後、山に合流。俺は山のサポートをする」
「「了解」」
滉穎が右足を前に出したのを契機に、四人は動き始める。
佑聖と希望は共に拘束から脱出したものの佑聖を捕らえていた大男は健在で、今にも彼等を再び捕らえようとしている。
同様に、背後に立っているリーダーとその手下達も突然の事に驚きながらも、二人と滉穎を包囲しつつあった。
「おい、そいつを捕まえろ!」
「承知」
大男は、素早く二人と木々の間に立ちはだかり、腕に力を込めていく。筋骨隆々としたその体はまるで鋼の様な硬さに変わっていく。おそらく「アクション」タイプなのであろう。
しかし、その鋼の肉体をもろともせず、後ろから大男の体を貫く黒い剣があった。
「うっ!! がっ・・・・・・」
「なにっ!?」
その光景には、リーダーの男も驚きを隠せず、思わず声を漏らしていた。まさか覚醒者二人を十秒も経たない内に殺されるとは考えもしなかったのだろう。
そして、その黒の剣、いや刀は大男の身体から抜き、すかさず背中に再び攻撃を加える。大男はゆっくり目を閉じながら前に倒れていく。
後ろにいたのは隕鉄刀を上段に構えた翔祐だった。
彼はイオパニックで対人戦を経験してから何かが吹っ切れたかの様に訓練にも打ち込み、成績も急上昇を見せていた。彼は、滉穎に迫る勢いで伸びを見せ、召喚者の中でニ位の成績を収めていたのだ。
・六尺棒ー木
山滉頴が愛用するただの木の棒。特殊能力といったものはなく、変化魔法で簡単に製造できてしまう。しかし、その長さと硬さが武器であり、長刀や槍を得意とする滉頴が《speed up》と共に使用すると、召喚者の中では近づける者が一人を除いていない。
ちなみに、木村捷が作る六尺棒は金属にも匹敵する硬さである。




