第88話・望月月英(2)
「コネと権力を駆使して認めさせました!」
一般的には褒められた発言内容ではないが、彼女は誇らしそうに言った。
「認めさせた」とは少し穏やかじゃないが、まあそこは良いか。
僕は別にコネクションや権力の利用に否定的ではない。使えるならば使うべきだ。ただ、それによって誰が不利益を被るのか、ということを念頭に入れなければならないが。
詰まるところ、誰かに迷惑をかけなければ良い。直接的にも間接的にも。
彼女ならその点、心配は無いだろう。
それよりも・・・・・・
「身体は大丈夫なのか?」
彼女の身体の方が心配だ。
彼女は強力な魔眼の代償として、幼少期から床に伏せていた。
そのせいで身体があまり丈夫ではない。今でも月一で不調を来すことがあるぐらいだ。
まあ、ほとんどそういう時は身体ではなく魔眼が原因だが。
「そうですね。長旅に慣れていないのでご迷惑をかけることにはなると思いますが、問題は無いと思います。
体力も付いてきましたし、なにより動かないと余計に悪くなってしまいます」
だからと言って、いきなり魔境の裏側というのも極端だとは思うが。
まあ、僕が気を配れば良い話か。途中で何度か中継するし、そこで休めるらしいし。
「分かった。まあ、正直なところ、月英が居てくれた方が心強いし助かるよ」
グレンスは複雑な顔をすると思うが、仕方が無い。
月英と仲良くするチャンスだと僕は思うからな。
グレンスは別に月英を嫌っている訳ではないんだけどな。だからこそ、苦手意識を取り払ってもらいたい訳だが。
「嬉しいことを仰いますね、滉穎様は。
おだてても、何も出ませんよ」
「本心だよ」
そう。彼女の存在は非常に心強い。
はっきり言って、彼女の助言に従って間違ったことがほとんど無い。
盲信は危険だけど、でもそれに近いぐらいには彼女のことを信頼している。
彼女が居なければ、きっと僕は三年前グレンスを助けることができなかった。
その後も、日常生活や魔法の訓練、任務などあらゆる場面において彼女は的確な助言をくれた。
もはや彼女は僕にとって必要不可欠な存在へと昇華されている。
でも、彼女は常にグレンスに気を配り、決してグレンスより上に立とうとしない。
むしろ、自分はその下でも良い、という姿勢すら見せている。
何がそうさせたのかは僕もよく分からない。
だけど、彼女のそういった態度にグレンスも気付いているからこそ、嫌われてはいない。あくまで苦手の範疇に留まっている。
彼女は人との距離感を測るのが非常に上手い。
僕も常にコミュニケーションは人との適切な距離を測りながら行うから、多少は自信がある。
しかし、この点に関してはこれまでも、これからも彼女に勝てる気がしない。




