美味しいケーキにご用心(1)
その日、ミリアリアは生まれて初めてアルコールを口にしていた。
アルコールといっても、ケーキに滲み込ませたブランデーだった。
シューニャが珍しいケーキが手に入ったと、紅茶と共に細長い形のケーキをミリアリアに持ってきたのだ。
ミリアリアは、珍しい細長いケーキから香るフルーティーでいて、リンゴのように甘く、それでいて華やかな香りに瞳を輝かせていた。
「これがケーキなのですか? すごくいい匂いがします」
「ああ。ブランデーケーキっていうものらしい。今、帝都で流行っている大人向けのケーキだ。お姫様にも食べて欲しくて、買って来たんだ。いい匂いだろ? ケーキに使われているブランデーは、そのまま飲んでも美味いし、菓子に使っても美味いって、評判らしいから、ケーキが気に入ったら、ブランデーも試してみるのもいいかもな」
「まあ! お酒のケーキなんですね。わたし、お酒は初めて口にします」
「へぇー。まぁ、これくらいならいくら何でも酔ったりしないか……」
「シューニャ、一緒に食べましょう! くすくす。楽しみです」
こうして、ミリアリアは生まれて初めて、ブランデーを口にすることになったのだ。
小さく切り分けたケーキを一口頬張ったミリアリアは、瞳を輝かせていた。
「う~ん。美味しいですぅ。ふぁぁあ、ジークフリートさまにも食べて欲しいれすね」
「ああ……。なぁ、お姫様?」
「なぁにぃ?」
「もしかして、一口で酔ったりしてないか?」
「よぉうぅ? なぁんれすかぁ?」
そう言っている間もミリアリアの体はゆらゆらと揺れていた。
それを見たシューニャは、ミリアリアが完全に酔っぱらっていると理解して、天井を仰ぎ見ていた。
まさか、たった一口でここまで酔ってしまうなど想像もしていなかったシューニャは、こんな無防備すぎるミリアリアに動揺してしまっていた。
「しゅーにゃぁん、けぇき、おいしいねぇ。はぁい、あーん」
そう言って、動揺しているシューニャに向かって、自分の食べていたケーキをフォークで刺して食べさせようとしたのだ。
まさかこんなことになるとは思ってもいなかったシューニャだったが、ミリアリアが可愛すぎるのが悪いと心の中で言い訳をしてから差し出されたケーキを口にしていた。
「しゅーにゃぁん、おいしいぃい?」
「ああ……、すげー美味い……」
「ふへへぇ~。よかったぁ。じゃぁ、じーくふりーとしゃまにもあーんって、しにいこうぅ」
そう言ったミリアリアは、ソファーから立ち上がり、ゆらゆらと揺れながらも部屋の外に出ようとしたが、それにいち早く気が付いたシューニャは、ミリアリアを全力で止めていた。
「ちょ!! ダメだって!! 今部屋の外に出るのは危険だ!!」
「きけん?」
「うんうん。だから、安全が確認できるまで、ここに居ような?」
「う~ん……。やぁあん。じーくふりーとしゃまにもおいしいのあーんしたいのぉ」
そう言って、ミリアリアはプイっと横を向いてしまっていた。
そんな姿も可愛いと思いながらも、シューニャは、このピンチをどう切り抜けるか考えて考え抜いた結果、何もかもジークフリートに丸投げすることに決めたのだった。




