お忍べてないデート(2)
侍女に用意させた庶民が着るようなワンピースに袖を通したミリアリアを見たジークフリートは、その可愛さに打ち震えていた。
質素なはずの淡いブルーのワンピースは、レースがあしらわれているだけのどこにでもあるデザインのものだった。
しかし、絶世の美少女たるミリアリアが袖を通せば、一流のデザイナーが自身で作り上げた上質なワンピースへと変わっていたのだ。
髪型も普段とは違い、緩く編んだ三つ編みに可愛らしいカチューシャを着けているその姿は、愛らしい以外の感想などなかったほどだった。
そんな、ミリアリアを瞳に焼き付けたジークフリートも質素なシャツに紺のズボンといういで立ちだった。
そんなジークフリートも格好いいと見惚れるミリアリアを見て、シューニャは、「この世界一の砂糖製造機夫婦め」とため息を吐いていたが、それを咎める者は誰一人いなかった。
ただ一人、ジークフリートに仕事を押し付けられたセドルだけが、「私だって、シューニャさんとデートがしたいですよ。陛下だけずるいです……」と、小さく不満を吐いていた。
そんな、お互いに見惚れるミリアリアとジークフリートを影から護衛しながらシューニャは、全然お忍べていないデートに頭が痛くなっていたのだった。
城を出た二人は、恋人繋ぎで仲良く広場を歩いていた。
ミリアリアは、今まで外に出る機会などほとんどなかったため、見るものすべてが新鮮で輝いて見えていたのだ。
「リートさま! あれは何ですか?」
「ミリーちゃんは可愛いなぁ。くすくす。あれは、菓子売りの屋台だ」
「お菓子ですか? でも、どう見ても雲を売っているように見えます! あれは、お菓子なのですか! すごいです!!」
そう言って、驚くミリアリアにジークフリートは微笑んでから、綿菓子を購入していた。
「ほら、食べてごらん」
そう言って、小さく千切った綿菓子をミリアリアの口元に運んで微笑んだのだ。
それを見たミリアリアは、一瞬戸惑いはしたが、すぐに小さく口を開けて綿菓子を口にしていた。
そして、その甘さに目を丸くして言ったのだ。
「はむっ! あ…甘いです。甘くて、美味しいです!! それに、ふわふわでお口の中で溶けてすぐになくなってしまいました!」
「くすくす。ほら、もう一口」
「はい! はむぅ。美味しいです」
そう言って、美味しそうに綿菓子をジークフリートの手で食べさせてもらっていたミリアリアは、とても幸せそうに微笑んでいた。
そんなミリアリアを見たジークフリートは、綿菓子よりも甘い微笑みを浮かべた後に言ったのだ。
「そんなに美味しいか?」
「はい! リートさまも一緒に食べましょう」
そう言って、微笑むミリアリアに誘われるようにジークフリートは、低く艶のある声音で言ったのだ。
「そうだな。それじゃ、俺も一口貰おうかな?」
「はい、どうぞ」
そう言って笑顔を向ける無防備なミリアリアの唇をジークフリートは、ぺろりと舐めた後に唇を合わせてからちゅっと軽い音を立てて顔を離したのだ。
そして、この世の何よりも甘い声で悪びれることもなく言ったのだ。
「ああ、とても甘くて美味い」
そんなことを言われたミリアリアは、全身を真っ赤に染めてから、小さく握った拳でポカポカとジークフリートの胸を叩いていた。
「リ…リートさまぁ。もうもう!! わたしはお菓子ではありません!」
「俺にとっては、ミリーちゃんが何よりも甘くて美味しい存在だよ。毎日でもミリーちゃんを食べたいくらいだよ」
そう言って、ミリアリアの手を取って、その甲に口付けてからその細い体を抱きしめていたのだ。
「リートさま!!」
「あははは! もう、ミリーちゃんは可愛いなぁ」
そう言って、抱きしめたミリアリアの額にキスをしたのだ。
そんな、二人のイチャイチャを見せつけられているシューニャは、深いため息を吐いていたのだ。
そして、偶然その場に居合わせた罪のない人々が、皇帝夫妻の全然お忍べていない甘々デートに悶絶するのを見て更なるため息を吐いたのは言うまでもなかった。
その後も、人目を全く気にしないイチャラブを繰り広げたミリアリアとジークフリートのお忍べていないデートは、何事もなく終了したのだった。
ただし、偶然目撃した人々に当分甘いものは見たくも食べたくもないと思わせるという後遺症は残したのだった。




