お忍べてないデート(1)
その日ミリアリアは、仲良くなった侍女から借りた恋愛小説を読みながらため息を吐いていた。
そんな悩ましいため息を吐くミリアリアに、シューニャが紅茶を淹れ直しながら声を掛けたのだ。
「どうしたんだ? ため息なんて吐いて」
シューニャの問いかけにミリアリアは、頬を薄らと染め、瞳を潤ませて言ったのだ。
「お借りした小説なのですが……、王子様とお姫様がデートをするシーンが出てくるのですが、それがとても素敵で思わずため息が出てしまいました。はぁ……」
そう言って、潤んだ瞳で小説を胸に抱いて微笑むミリアリアを見たシューニャは、ミリアリアのためにひと肌脱ぐことに決めたのだ。
「ふむ。それじゃ、皇帝さんとお忍びデートでもしてきたらいいよ。護衛は俺が引き受けるから」
その言葉を聞いたミリアリアは、ぱっと表情を輝かせた後に、しょんぼりと肩を落として言ったのだ。
「ダメです。ジークフリートさまは、この国にとって大切なお方です。お忍びデートなんて、安全面を考えると無理です」
シューニャは、そう言って、落ち込んでしまったミリアリアにではなく、扉の向こうに声を掛けていたのだ。
「だってさ。皇帝さん、どうする?」
シューニャの言葉にミリアリアは、顔を上げて扉の方を見ると、そこには困ったような顔をしたジークフリートが扉を開けて部屋に入ってくるのが見えたのだ。
そしてジークフリートは、ミリアリアの元に近づくと、その細く軽い体を抱き上げて膝の上に乗せた後に、額同士をくっつけるようにして言ったのだ。
「ミリアリアは、俺とデートしたくないのか? 俺は、ミリアリアとデートしたい」
そう言われたミリアリアは、フルフルと小さく首を振った後に小さな声で言ったのだ。
「デートしたいです……。でも……」
その言葉を聞いたジークフリートは、心外だとばかりに言ったのだ。
「俺は、そこまで弱い人間じゃないよ。ミリアリアと自分の身くらい守れるくらいには強いから安心しなさい」
そう言ってから、ミリアリアの頬に口付けてから、蕩けるような笑みを浮かべていたのだ。
ジークフリートから頬にキスをされたミリアリアは、花のような笑顔を返したのだ。
そして、同じようにジークフリートの頬に素早くキスを贈った後に真っ赤な顔でお礼を言ったのだ。
「ありがとうございます。ジークフリートさま、大好きです」
「ああ、俺もミリアリアが大好きだよ」
そう言ったジークフリートは、ミリアリアの無防備な唇に触れるだけのキスをしていた。
ちゅっと小さな音を立てて、唇を離したジークフリートは、楽しそうに言ったのだ。
「それじゃぁ、準備をしようか」
そう言って、すぐさま侍女に庶民が着るような服を準備させたのだった。




