ジークフリートとシューニャ(3)
それに対して、ジークフリートとシューニャは、お互いにまずい展開になったと全力でセドルの背中を追いかけていた。
そして、セドルに追いついたジークフリートは、こう言ったのだ。
「お前は、何か勘違いをしている」
「そうそう」
「ですが……。シューニャさんが……」
「俺とメイドはただ話をしていただけだ」
「そうそう」
「でも、スカートを……」
「そんな事実はない。お前の妄想だ。お前は疲れているんだ。今日はゆっくり休め」
「そうそう」
「はぁ……そうなんでしょうか? 私は、疲れているんでしょうか?」
ジークフリートに丸め込まれていると分かっていても反論する隙もなく、最後には力なく頷くセドルだった。
上手く丸め込めたと思っていたジークフリートは、もともとセドルがここに来た理由がなんだったのかを聞けていないことを思い出して口を開いていた。
「そういえば、お前は何をしに?」
そう言われたセドルは、思い出したように口を開いていた。
「はっ! そうでした。王女殿下が、陛下にお休みのご挨拶をしたいと―――」
最後まで聞かずにジークフリートは、走り出していた。
「セドル!! そういうことは早くいえ!!」
そう叫びながら、ミリアリアの元に駆けだすジークフリートの背中を見送ったシューニャは、盛大に溜息を吐きながら懐に忍ばせていた薬品をハンカチに含ませてから、セドルの口元をそのハンカチで覆っていた。
そして、意識を失ったセドルを軽々と背負ってその場を後にしたのだ。
翌日、セドルは昨日のことなど忘れたようにジークフリートとシューニャに接したのだった。
そのことを不思議に思いいつつも藪をつついて蛇を出すことをしたくなかったジークフリートは、そのことに一切触れなかったのだった。
あの時、シューニャがセドルに嗅がせたものは、記憶消去の薬品だった。
暗殺家業をしていた時の手持ちの残りで、数十分ほどの記憶をかき消すことのできる物だが、何回も使用すると、使用されたものが馬鹿になるという恐ろしい劇薬だった。
しかし、一度くらいなら大丈夫だろうと判断したシューニャが面倒ごとを嫌って使うことに決めたのだ。
もしあのまま、ミリアリアにあることないこと言われて、彼女に泣かれてしまうことだけは避けたかったからだ。
シューニャの中での優先順位はミリアリアが最上なので、セドルに対しての扱いがひどいのも仕方がないことといえよう。




