第九章 欠陥姫だった少女は皇帝陛下の愛で満たされる(4)
「シューニャ、お前をミリアリアの騎士に任命する。ミリアリアに忠誠とその命を捧げよ」
「はっ! 喜んで拝命いたします。私の忠誠とこの命は、皇妃殿下に捧げることを誓います」
そう言って、ミリアリアのドレスの裾に忠誠のキスをしたのだ。
それを見たミリアリアは、少し複雑そうな表情になりながらも、優しい声で言ったのだ。
「これからもシューニャが一緒にいてくれるのは嬉しいけど、無理はしないでね?」
心配そうにそういうミリアリアにいつもの笑顔を向けたシューニャは、明るい声で言ったのだ。
「はいよ。お姫様の仰せのままに」
「もう。くすくす。ありがとう」
任命式後、シューニャは、いつものメイド服に着替えてミリアリアの元にやってきた。
「騎士とは言っても、やってることは変わんないし、それならこの格好でいるよ。その方が、誰かさんが安心するみたいだし?」
そう言ったシューニャは、にやにやとした表情でジークフリートを見たのだ。
しかし、対するジークフリートは、逆にニヤリとした表情でシューニャを揶揄う様に言ったのだ。
「ほほう。セドルのためか?」
「ちっげーよ!! あんたとお姫様のためだよ!!」
心底いやそうな表情でそう言ったシューニャだったが、何かを考えるように窓の外を見つめていた。
それに気が付いたジークフリートも同じように窓の外を見たのだ。
ミリアリアは、心配そうに両手を握って言ったのだ。
「セドルさんは、今頃どうしているでしょうか? 無事にたどり着けているといいのですが……」
「大丈夫だろう。アイツは、頭が切れる。何かあったら逃げるさ」
ミリアリアは、数日前のことを思い出していた。
セドルが、ミリアリアに言ったのだ。
セイラの息子を見つけて来ると。既に亡くなっていた場合は、その墓前にセイラの死を報告すると。
セドルは、ミリアリアが一年前に意識を取り戻した後、ジークフリートに場を設けてもらい、テンス大公の件を謝罪していたのだ。
ミリアリアは、当時のことなどを考えれば仕方なかったと、セドルを許したが、セドル自身がそれに納得しなかったのだ。
その後、セドルは償いの意味を込めて、セイラの墓前に二つのことを誓っていたのだ。
一つは、ミリアリアに生涯その身を捧げて尽くすこと。
そしてもう一つは、セイラの息子を探し出すことをだ。
セドルは、様々な方法で、セイラの息子の足取りをたどったのだ。
その結果、ミンズ王国に奴隷として売られたという情報を掴んだが、そのあとの足取りが途切れていたのだ。
考えを巡らせたセドルは、宰相職を退いて、自分の足で探すことを決めたのだ。
しかし、セドルほど優秀な宰相はいないと、ジークフリートは、退くことを却下したのだ。ただ、セドルの気持ちを考えたジークフリートは、半年で戻ることを条件に、旅立つことを認めたのだ。
そんなセドルの旅の無事を祈りながらミリアリアは、セイラの墓前で誓ったことを思い出していた。
「わたし、幸せよ。ジークフリートさまと一緒にいられて、セイラ……、ごめんね。ありがとう。わたし、もっともっと幸せになるから、安心してね」
そう言って、セイラの墓前で微笑んで誓ったのだ。




