第八章 欠陥姫の嫁入り(8)
優しい声音で問いかけたジークフリートは、緩く抱きしめてからミリアリアの瞳を覗き込んだのだ。
ミリアリアは、勇気を振り絞ってジークフリートに言ったのだ。
「リートさまのお嫁さんになりたいけど、わたしは元々、ここに皇帝陛下の花嫁候補としてきたの……。だから、陛下がわたしを望むなら……そうしないといけない……。でも、わたしは、リートさましか好きじゃないの。リートさまが好きなの。リートさま以外なんてありえないの!! リートさまが好きです。好きです!!」
ミリアリアの突然の告白に嬉しそうに頬を緩めたジークフリートは、何が問題なのか分からずにいた。
それを見たミリアリアは、頬を膨らませてプイっと横を向いてしまっていた。
「真剣に聞いてください!! わたしは、リートさまのお嫁さんになりたいんです。会ったことのない皇帝陛下に求められて、どうしようもなくなったら、わたし……」
「えっ?」
ミリアリアが何かを勘違いしていると気が付いたジークフリートだったが、それよりも前にミリアリアが声を上げたのだった。
「リートさま、お願いです。わたしの初めてを受け取ってください。やり方はいまいち分かっていないけど、頑張ります! だから、皇帝陛下が来る前に! もし、咎められることがあれば、わたしがリートさまに無理やり迫ったと、陛下にお伝えください」
そう言って、ミリアリアは、驚くジークフリートの膝から降りて、ドレスを脱ぎだしてしまったのだ。
それに驚いたジークフリートは、慌ててミリアリアを止めに入っていた。
「待って、待ってくれ。何か誤解が……」
「待てません。早くしないと、皇帝陛下が来てしまいます。リートさま、わたしをもらってください!」
「いや、ミリアリアをもらいたいが、今はまずい」
「何がまずいのですか? 急がないと来てしまいます」
「待って、今は駄目だ」
ミリアリアを止めようとしている内に、ソファーにミリアリア押し倒してその両手をソファーに押さえつけていたジークフリートに冷たい声が掛かったのだ。
「最低ですね。病み上がりのお姫様をソファーに押さえつけて無体を働こうなどと……」
シューニャの声にミリアリアとジークフリートは、それぞれ違った表情で同時に声を掛けていたのだ。
「シューニャ、やだ、違うの!」
「誤解だ!!」
ミリアリアは、はしたないことをしようとしている自分を見られたことが恥ずかしくて頬を染めていた。
対するジークフリートは、どう見てもミリアリアを襲っているようにしか見えない体勢に、自分は無実だという思いで叫んでいたのだった。
二人の心情に気が付いていないシューニャだったが、面倒ごとが増える前に解決した方がいいと考えて二人に言ったのだ。
「えっと、どうしてこんなことに?」
シューニャの問いを聞いたミリアリアは、時間が無いことを思い出して声を上げていたのだ。
「大変! 皇帝陛下がいらっしゃる前に、リートさまに―――」
ミリアリアが最後まで言い切らないうちに、ジークフリートは、慌ててその口を塞いでいたのだ。
そんな二人に首を傾げたシューニャは、不思議そうに言ったのだ。
「えっ? なんのプレイ? 皇帝さんが来る前にって……。お姫様の目の前じゃん?」
その声にミリアリアは、目を丸くして悲鳴を上げていたのだった。
「えっ? えーーーーーーー!!!」
そこでミリアリアは、初めて知ったのだ。自分が恋しく思うリートの正体が皇帝ジークフリートその人だということに。




