第八章 欠陥姫の嫁入り(6)
いつの間にか桃色で甘ったるい空気が流れていたことに気が付いたシューニャは、涙目で叫んでいた。
「もー! 俺が悪かったから! 初心なお姫様に本気の色気を振り撒くのは止めてくれ!!」
話が途中で大幅にそれてしまったが、気を取り直したミリアリアが再び恥ずかしそうにしながら続きを説明したのだった。
「えっと……。リートさまのキ…キ……ㇲ……でわたしの中の呪いが解けたんです。呪いにかかった者を心から愛し慈しむ想いを込めて、ぼうじ? することで呪いは解けるのです」
途中、小声になっていたが、ミリアリアの言葉を聞いた全員がその場で噴き出していた。
それに驚いたミリアリアは、慌てて持っていたハンカチでジークフリートの口元を拭いていた。
しかし、それどころではないジークフリートとシューニャは、お互いに視線で会話をしていた。
(おい! さっきのやり取りは何だったんだ!! あんな状態のお姫様に何してくれちゃってるんだよ!!)
(誤解だ! まだ何もしてない!!)
(まだってなんだ!!)
(初夜まではそう言ったことはせん!! 俺はミリアリアを大切にすると決めてるんだ!)
(でも、お姫様が、房事って!!!)
(それについては誤解だ!! 俺はまだキスしかしてない!!)
二人の無言のやり取りに気が付かないミリアリアは、長年の謎が解けたとばかりに明るい声で言ったのだ。
「昔、呪毒の解呪方法の本を読んだ時に、ぼうじの意味が分からなかったのですっきりしました。リートさまがしてくれたあれがぼうじなんですね。わたし、初めてで……。でも、温かくてもっと触れて……、あっ、違います。何でもないです。きゃうぅ。わたしったら……なんてはしたないの……」
そう言ってミリアリアは、両手で真っ赤になった顔を隠して恥ずかしそうに、いやいやするように体を左右に揺らしていたのだった。
因みに、ミリアリアが過去に読んだ本にはこうあったのだ。
―――呪毒の呪いを解くには、愛の祈りをその身に受けることだ。祈りだけだとすごく時間がかかる。だから、手っ取り早く解呪するには粘膜接触が効率がいいぞ。例えば房事などが著者的にはおススメである。あれはいいぞ、愛されてると全身で実感できるうえに、超気持ちいい!! まじ最高に気持ちいい……。と言う訳で、この本を読んでいる呪毒に悩んでいるそこの君、レッツ房事!!
その少しふざけたような内容の本を読んだ時のミリアリアは、まだ七歳にもなっていなかったため、房事という言葉を知っていてもその内容までは理解していなかったのだ。
だから、ジークフリートからのキスで呪毒が解呪されたことで、キス=房事という図式が出来上がってしまったのだった。




