第八章 欠陥姫の嫁入り(4)
「ミリアリアが、胸がドキドキして苦しいと……。ミリアリアを治してくれ!!」
「な、なんと……。お心が戻っただけではなく声も目も……。ああ、奇跡だ! はっ、それで、胸が苦しいんですね? 今も苦しいですか?」
医者にそう聞かれたミリアリアは、頬を両手で覆ってから、ちらりとジークフリートを見て小さく頷いたのだ。
それを見た医者は、何かに気が付いた様子で、頬を年甲斐もなく頬を赤く染めながら恥ずかしそうに、もじもじとした様子で言ったのだ。
「王女殿下……。もしかして、誰かのことを見たり、考えたりするとそうなりますかな?」
そう問われたミリアリアは、もう一度ちらりとジークフリートを見た後にコクンと小さく頷いていた。
そして、胸に手を当てて潤んだ瞳で言ったのだ。
「はい……。リートさまを見ると、胸がドキドキして、苦しくて。実は、今までも、そう言ったことはあったんです……」
「…………。えっと、今までも……ですか。た…例えば?」
「えっと、リートさまにぎゅってしてもらった時とか、その……。か、かかかか……可愛いって、言ってもらった時…とか。す、すすすすすす……き……って言ってもらった時とか。でもでも、あああああ、あい……てる……って、言われたときも心臓が飛び出るくらいドキドキして……。これは、何かの病気なのでしょうか? やっぱりわたしは、死んでしまうのでしょうか?」
ミリアリアの言葉を聞いたジークフリートは、真っ青になってから、ミリアリアを抱きしめて、必死になって医者に言ったのだ。
「そ、そんな……。ミリアリアを助けてくれ! 俺はどうしたらいいんだ!」
「リートさま……。胸がすごくドキドキして……苦しいです……。わたし、どうしたら……」
そんな、無意識にイチャこらする二人を生温かく見た医者は、こう言ったのだ。
「大丈夫ですよ。その症状で死んだ人はいません」
「ほ、本当か?!」
「はい」
「そ、それで。ミリアリアの病状は一体?」
「恋です」
「こい?」
「こいですか?」
そう言って、二人して首を傾げるのを見て、微笑まし気に見ていた医者は、孫でも見ているかのような優しい顔で言ったのだ。
「はい。好きな人に、抱きしめられたり、嬉しい言葉を掛かられれば誰だってそうなります。ですから、王女殿下は大丈夫です。ですが、体に異常が無いか診断をしましょう。女医を呼ぶので……。我々、男衆は部屋の外に出ていましょう」
そう言って、医者の言葉に顔を真っ赤にさせるミリアリアとそんなミリアリアの様子に嬉し気に顔を緩めるジークフリートを好々爺とした笑顔で見つめたのだった。
その後、女医に体を見てもらったミリアリアは、健康そのものだと太鼓判をもらったのだった。




