第七章 真実と隠された心の叫び(5)
「流石親子といったところか? 頭の足りないところがそっくりではないか。しかし、あの女の方が根性があったな。くくくっ。騎士団長もそう思うだろう?」
嘲る様に言ったジークフリートに同意を求められた騎士団長は、呆れたように愚王に言ったのだ。
「そうですな。陛下のおっしゃる通り、王女の方が根性がありましたな。確かに陛下の睨みは恐ろしいですが、大の大人が失禁するなど情けない」
そうなのだ。体を丸めて蹲る愚王の下には、水たまりが出来ていたのだ。
そんな姿を晒す愚王に対して、ジークフリートの追及は激しくなる一方だった。
耐えかねた愚王は、震える声で告白したのだ。
「ロッサは、ある毒物に反応する……特殊な花だ……です」
「どのように特殊なのだ? ミリアリアが飲まされたという毒と関係があるのか?」
ジークフリートの問いを聞いた愚王は、小さく悲鳴を上げた後に、震える声で言ったのだ。
「ひっ! そ…そうです。あの娘が飲んだ毒に反応…します。あの娘が飲んだ毒は、呪毒という特殊なもので、体から抜けることはない……です。体に溜まっている呪毒に化学反応を起こさせて、呪毒を活性させる効果があります。呪毒が活性化した場合、体内の毒素が猛毒に変わり、やがて死に至ります……」
話を聞いたジークフリートは、祈るように問いかけていた。
「呪毒を取り除く方法は? 何かないのか?」
「あ…ありません……」
「そうか……。その呪毒を製作した者は?」
ジークフリートがそう問いかけると、愚王は震えながら小さな声で言ったのだ。
「呪毒を作らせた後に、家臣に命じて……殺しました」
「他に呪毒に詳しい者は?」
ジークフリートの問いを聞いた愚王は、震えながら首を横に振っていた。
それを見たジークフリートは、愚王にもう用はないとばかりに、騎士団長に命じていた。
「城にいる学者並びに研究者は、丁重にテンペランス帝国に迎えよ。貴族連中は、取り調べの上それに見合った罰を与えよ。王族は、公開処刑とする」
ジークフリートの言葉を聞いた愚王は、必死になって懇願したのだ。
「ま…待ってください!! これは…これは、違うんです!! ロザリーナが勝手にやったんです!! 私は何も悪くないんです!! 私は止めたんです!! 国が荒れて、いつクーデターが起こってもおかしくない時期に、あれに構っている場合ではないと!! 全部、愚かなロザリーナが悪いのです!! だから、罰はロザリーナに―――」
「黙れ」
「違うんです……。待ってください……私は、何も悪くない……。悪くない。違うんです……」
可愛がっていたはずのロザリーナすら、差し出して自分だけでも助かろうとする愚王の醜く喚き散らす姿に目もくれず、ジークフリートは、その場を後にしていた。
そして、命じられた騎士団長は、すぐに手配に取り掛かっていた。
騎士たちの手によって、王城の前の広場には、あっという間に即席の処刑台が作られたのだった。
襤褸の貫頭衣を身に纏った愚王と王妃、それに連なる王子と王女が、首に鎖を付けられた状態で処刑台の上に上げられたのだ。
死刑執行は、ジークフリート自らが行ったのだ。
公開処刑を見に来たメローズ王国の国民はテンペランス帝国の皇帝自らが刑を執行することに首を傾げていたが、テンペランス帝国の騎士たちは違った。
愛するミリアリアを虐げ、その命を奪おうとした憎い相手をその手で裁こうとするジークフリートを見て、それに賛同し歓声を上げたのだった。




