第六章 欠陥姫と毒花(17)
ミリアリアは、あの雪の日の一件以来、ジークフリートに抱きかかえられてではあるが、外に出る機会を得ていたのだ。
頻繁にとは言えないが、天気のいい過ごしやすい日など、庭園をジークフリートに抱きかかえられて散歩したり、東屋でお茶を楽しむようになっていたのだ。
ロザリーナが見たのも、東屋で楽しそうにお茶を飲んでいるところだった。
いつものようにミリアリアを膝の上に座らせて、見ている者の方が恥ずかしくなるような甘い表情と声で囁いていたのだ。
「俺がプレゼントしたリボン着けてくれたんだな。うん。可愛いよ。ん? お礼? くすくす。それだったら……キ―――。いや、もう少し強く抱きしめてもいいかな?」
ジークフリートの言葉に、こてんと首を可愛らしく傾げたミリアリアは、ほほ笑んだ後に両手を広げてジークフリートを受け入れていた。
ジークフリートは、蕩け切った表情でキスでもするかのようにゆっくりと顔を近づけた後に、ミリアリアの前髪に触れるだけの口付けを落としたのだ。そして、最初は壊れ物にでも触れるかのように優しく抱きしめたのだ。
そして、ミリアリアの首筋に顔を埋めるようにして何もかも奪い去るように強く抱きしめたのだ。
それを遠くから見ていたロザリーナは、その場から動くこともできずにいた。
ロザリーナがその場を動けるようになったのは、ジークフリートとミリアリアが居なくなってから随分と時間が経ってからだった。
そしてその日の夜、ロザリーナは、メローズ王国を出る際に無理やり持ち出したある花が植えられた植木鉢を前にして、瞳に嫉妬の炎を揺らしていたのだった。
翌日、名残惜しそうにテンペランス帝国を旅立つロザリーナは、一つの花束をジークフリートに差し出していたのだ。
「皇帝陛下、これを妹に渡してください。この花は、妹が国にいるときにとても好きだった花なんです。今朝、植木鉢から切ったばかりの花です。これは、ロッサと言う花で、メローズ王国にしかない花なんです。ほら、美しいでしょう? 香りも優しくていい匂いでしょう?」
そう言われたジークフリートは、受け取った花束を見て、確かに美しい花だと感じた。
淡いピンク色の花弁と甘く香る花は、ミリアリアを思わせたのだ。
ジークフリートは、見送りもそこそこにその場を立ち去り、ミリアリアの元に行く前に学者の元を訪れていたのだ。
そして、研究室にいた学者に、ロザリーナから渡された花を見せたのだ。
差し出されたロッサを受け取った研究者は、それを調べてから言ったのだ。
「わが国では見たことのない品種ですね。確かにメローズ王国特有の花のようです。成分を調べましたが、毒などは検出されませんでした」
「そうか……」
「はい。ですが、あの知識深い王女様のお国の花です。わたくし共では調べきれない何かがあるかもしれません」
「分かった。これの始末は任せたぞ」
「かしこまりました」
こうして、ロザリーナから渡された花を処分したジークフリートは、その足でミリアリアの元に向かったのだった。




