第六章 欠陥姫と毒花(16)
雪解けを前にして、メローズ王国からテンペランス帝国に使者が来たのだ。
その日、テンペランス帝国にやってきたメローズ王国の使節団の代表として、第一王女のロザリーナ・メローズがジークフリートに挨拶をしたのだ。
これと言って大した用事もなさそうな様子の使節団は、ミリアリアとジークフリートの婚礼を祝う言葉を並べて、祝いの品々を並べたのだ。
使節団の代表を務めるロザリーナを見たジークフリートは、張りぼてのような女だという印象を感じただけだった。
ロザリーナは、ミリアリアの姉だと言われても、まったく似たところのない、ジークフリートから見れば地味でそれを取り繕うように格好だけ派手な女だと感じたのだ。
金茶の髪と目は平凡で、ミリアリアの淡く輝く金の髪と比べると見劣りしてしまっていた。
更には、張り出た豊満な胸ときゅっと括れた細い腰、厚い化粧を施された容姿ときつい香水の匂いに、早くもジークフリートは退室してミリアリアを抱きしめたくなっていた。
ジークフリートがロザリーナを張りぼてだと感じたのは間違いではなかった。
豊満に見える胸は本物だが、細く括れた腰は、コルセットでこれでもかときつく締め付けて作り上げた偽物だった。
男に媚びるよう胸元の大きく開いたドレスも安っぽくジークフリートには感じられたのだ。
しかし、使節団を代表して挨拶をするロザリーナを放置することもできず、適当にあしらってやり過ごしていた。
ロザリーナは、ミリアリアがジークフリートを射止めたと聞いてから、毎日のように父王に不満を言っていたのだ。
出来損ないの予備が皇妃に選ばれるはずがないと。本来なら自分が選ばれていたはずだと。だから、皇帝の目を覚まさせて、自分が皇妃になるのだと。そして、とうとう引き留める父王を振り切って使者となって国を出たのだ。
ロザリーナは、ジークフリートを一目見て、その男らしくも美しい姿に、逆に心を奪われていたのだった。
そんなロザリーナに全く興味を抱かないジークフリートは、早々に謁見室を後にしていた。
ロザリーナたち、メローズ王国の使節団の一週間ほどの滞在を許可したジークフリートは、後は好きに過ごせとだけ言って、最初に謁見の場を設けてから一度も会おうとはしなかった。
そして、ロザリーナとミリアリアの謁見は認めなかったのだ。
ミリアリアの口から直接聞いたわけではないが、ロザリーナと会わせることを危険だと直感したからだ。
結局、ロザリーナは、滞在中なんのアピールもすることもなく王宮で過ごすこととなったのだ。
しかし、帰国する前日にロザリーナは、ジークフリートがそれはそれは美しい少女を抱きしめて甘い言葉を囁き、蕩けるような微笑みを浮かべているのを見てしまったのだ。




