第六章 欠陥姫と毒花(10)
「くくっ。可愛いうえに頭もいいなんて流石俺のミリアリアだな」
そう言って、ミリアリアを抱きしめて頭を撫でたのだ。
それを見たシューニャは、心の中で「皇帝さん…お姫様バカが過ぎるよ……」と突っ込みを入れていたことなど、ミリアリアを抱きしめているジークフリートが知る由もなった。
そんなシューニャのことを知ってか知らずか、いや、まったく知らないミリアリアは、ジークフリートの手を取って、その手のひらに文字を綴っていた。
「ん? なになに……。えすぺらんともじ、シューニャ知らない。簡易、失敗、温度、調節、不可。えっと、つまり、ミリアリアのメイドがエスペラント語を知らなかったから、部屋の温度を調節できなかったってことかな?」
ジークフリートがそう言うと、ミリアリアは頷いて見せたのだ。
「なるほど……。確かに、メイドの言った通りのようだな。エスペラント語……。それに、刻印……。刻印魔法のことを言っているのか?」
呟くそうにそう言ったジークフリートにミリアリアは、無邪気な笑顔で頷いたのだ。そして、ジークフリートの手に文字を綴って伝えたのだ。
「生活、必需品、刻印、便利、不思議、ここにない……。つまり、メローズ王国では、刻印魔法は普通に使われていたということでいいのかな?」
そう言われたミリアリアは、頷こうとして一瞬頭を悩ませていた。
目が見えている時、王城を歩き回ったとき、刻印魔法を使っている部屋を見た覚えはあるが、どれも刻印が薄れていて使えるような状態ではなかったのだ。それを見て、昔のミリアリアは、何故書き直さないのかと不思議に思っていたことを思い出したのだ。
そして、普段部屋から出ないミリアリアは、目の見えるうちに施した刻印魔法で部屋の中で快適に過ごしていたが、それ以外の部屋を良く知らないので、ジークフリートの言葉に頷いていいものか悩んでしまったのだ。
悩んだのは一瞬で、ミリアリアは、ジークフリートの手のひらにすらすらと文字を綴ったのだ。
「刻印、薄れてる、あった、でも、沢山、刻印、あった、普通……。つまり、薄れているものもあったが、刻印魔法を施した物は沢山あったから、メローズ王国では普通ということだな」
ジークフリートと直接意思疎通ができることが嬉しいミリアリアは、花が満開に咲き誇るような笑顔を見せたのだ。
その、純真無垢な笑顔が心に突き刺さったジークフリートとシューニャは、同時に言ったのだ。
「尊い……。ミリアリア、尊すぎて、天使過ぎる」
「尊い……。お姫様、マジ天使かよ……」




