第六章 欠陥姫と毒花(9)
季節外れの雪の所為で余計な仕事が増えてしまったと、嘆きながらも仕事を片付けたジークフリートが急いでミリアリアの部屋に向かった時だった。
王宮内の暖房器具の点検の際に、各区画に分かれている暖房器具のいくつかの部品の破損が判明したのだ。その破損区画にミリアリアの部屋も含まれていたのだ。
当然、ジークフリートは、ミリアリアの部屋のある区画を優先的に修理するように指示をしたが、部品の予備が王宮になく商会から取り寄せることになってしまい、いまだに王宮内は寒々しい空気が漂っていた。
ミリアリアが寒い思いをしないように、昔ながらの火鉢や沢山の毛布を運ぶように命じたが、それでも暖房器具のあるなしでは話が違ってくる。
凍えるミリアリアを抱きしめて自らの体で温めてあげようなどと考えつつもミリアリアの部屋に入ったジークフリートは、ミリアリアの格好に目が釘付けになっていた。
ミリアリアは、朝に会った時とは違い、真っ白なワンピース姿となっていたのだ。
しかし、ただのワンピース姿ではなかった。肩紐タイプのワンピース姿で、更にはその胸元を暑そうにパタパタと扇いでいたのだ。
柔らかそうな白い肌の上を玉のような汗が伝う姿、そしてワンピースから伸びる無防備な素足、普段見ることのない足の爪がピンク色の桜貝のようで、足の先まで愛らしいのだとジークフリートが思い至るまでほんの一瞬だった。
しかし、そんなジークフリートにいち早く気が付いたシューニャが、ミリアリアを隠すようにジークフリートの視界を塞いだのだ。
一瞬、そんなシューニャに「余計なことをするな」と目で訴えそうになったが、何とか堪えて誤魔化すように視線を泳がしたのだ。
しかし、視界の端にちらちらと映るミリアリアの姿に自然と視線が吸い寄せられたのだった。
ミリアリアの格好にだけ意識が向いていたジークフリートが部屋の温度に気が付くのには少しの間があったのだ。
シューニャが、ミリアリアの肩に薄手のカーディガンを掛けたところでようやく気が付いたのだ。
「これは……。部屋が暖かい、というか暑いな……」
ジークフリートの言葉を聞いたミリアリアは、恥ずかしそうにほほ笑んだ後に鈴を鳴らしていた。
鈴の音を聞いたシューニャが、ジークフリートにミリアリアの言葉を代弁した。
「簡易だったから、失敗しちゃった……。と、お姫様は言ってます。というか、俺がこれまでの経緯を説明します」
そう言ったシューニャは、ジークフリートにミリアリアの指示で謎のインクで謎の図形を書いて太陽石を置いたら、部屋が暖かいを通り越して暑くなったことを説明したのだ。
途中、石炭による暖房を効率が悪いと言っていたことやエスペラント語を簡単な言語だと言ったことも含めてだ。
シューニャの説明を聞いていたジークフリートは、最初は呆気に取られていたが、最後には笑って言ったのだ。
「くくっ。可愛いうえに頭もいいなんて流石俺のミリアリアだな」




