第六章 欠陥姫と毒花(8)
シューニャに盛大に突っ込まれたミリアリアだったが、その重大性に全く気が付いていない様子で可愛らしく首を傾げていた。
そして、手のひらを合わせた後にニコリと微笑んでから鈴を鳴らしたのだ。
(すごくかんたんでしょ?)
「すごくかんたんでしょ? じゃないよ!! ちょーむずい古代文字なんだよ!! もう、お姫様は、凄いけど天然で可愛いからもう何でもいいや!! でも、俺にはそのエスペラント語は分からないから、力になれない……」
最後には、弱弱しい声になってしまったシューニャを慰めるようにミリアリアは、シューニャの頭を撫でた後に、鈴を鳴らしたのだ。
(わかったわ。それじゃ、丸の中いっぱいに正三角形を書いてもらえるかな? それで、それぞれの頂点から底辺に直線を書いてちょうだい。直線はちょうど底辺の真ん中に来るように正確にね。それが書けたら、それぞれの底辺の真ん中をつなぐように線を描くと、三角形の中に逆三角形が出来るでしょ?)
ミリアリアの説明を聞きながらシューニャは、目を白黒させながらもなんとか図形を書き上げていた。
「で…できた……。ふう。次は?」
(ありがとう。それじゃ、三角形のそれぞれの頂点に太陽石を一つずつ置いてもらえるかな?)
「わかった」
指示の通りにシューニャが太陽石を置いて少しすると部屋の中が暖かくなっていくのが分かったのだ。
それに驚いたシューニャは、ミリアリアを振り返って質問を浴びせたが、ミリアリアはおかしそうにくすくすと笑って、鈴を鳴らしたのだ。
「えっ? なんで? 部屋が暖かくなった……。えっ?なんでだ? 丸と三角書いて、太陽石置いただけだぞ? なんでだ?」
(変なシューニャ。これくらい普通でしょ?)
「えっ? 普通違う思う……。俺の知る普通、石炭燃やして各部屋に熱を送る。これ、普通違う……」
何故か片言になるシューニャの言い方が面白く感じたミリアリアは、深く考えずに鈴を鳴らしたのだ。
(ふーん。シューニャのいたミンズ王国は、効率の悪い方法使ってたのね)
ミリアリアの何気ない発言にシューニャは、ガクりと肩を落として心の中で盛大に突っ込んだのだった。
(ミンズ以外もその効率の悪い方法で暖を取ってんだけどーーーー)
心の中でそう突っ込みを入れたシューニャだったが、以前もミリアリアの知識で首輪が外れたことがあったため、最後には諦めてミリアリアから与えられた暖かい空間を受け入れたのだった。




