第五章 欠陥姫と暗殺者(3)
シューニャは、訳も分からずに指示された物を一日で用意したのだ。そして、自分の身の上をミリアリアに語った次の日の夜のことだった。
シューニャは、ミリアリアに指示されながら、用意した薬草をすり潰し、石を砕き混ぜ合わせたのだ。
出来上がったものを用意したガラスの小瓶に詰めるように指示したミリアリアは、シューニャに今日の月の様子を聞いたのだ。
窓の外を眺めたシューニャは、綺麗な満月だとミリアリアに告げたのだ。
するとミリアリアは、笑顔で鈴を鳴らしたのだ。
(ちょうどよかった。シューニャ、出来上がったガラスの小瓶を窓際に置いて月の光を当ててくれる?)
そう言われたシューニャは、ガラスの小瓶を月明かりに照らすように窓際に置いた後にミリアリアに聞いたのだ。
「なあ、俺は何を作らされていたんだ?」
シューニャのもっともな質問を聞いたミリアリアは、ニコリとほほ笑んだ後に涼やかに鈴を鳴らしたのだ。
(完成してからのお楽しみです)
そしてその日の夜は、いつものようにミリアリアが眠りにつくまで外の様子をシューニャが話して過ぎていったのだった。
翌朝、目を覚ましたミリアリアは、セイラに言って窓際のガラスの小瓶を回収していた。
不思議なことに、小瓶の中身は虹色に薄らと光るさらさらとした液体になっていたのだ。
小瓶の中の液体の様子をセイラから聞いたミリアリアは、嬉しそうに微笑んで夜が待ち遠しいと思うのだった。
そして、そんな嬉し気なミリアリアを見たジークフリートは、いつものようにミリアリアを膝の上に乗せて髪を優しく梳きながら聞いたのだ。
「ミリアリア、何かいいことでもあったのか? 今日も笑顔が可愛いな」
ストレートに可愛いと言われたミリアリアは、頬を桜色に染めた後に顔を両手で覆っていた。
恥ずかしそうにするミリアリアが可愛くて、表情を緩めたジークフリートは、それ以上追及はせずにその細い体を抱きしめたのだった。
そして、その日の夜のことだった。
何時ものように、ミリアリアがベッドに入るとシューニャが音もなく現れたのだ。
シューニャの気配に気が付いたミリアリアは、ベッドから飛び起きて気配のするほうに向かって鈴を鳴らしたのだ。
(シューニャ、いらっしゃい。待っていたわ)
鈴の音を聞いたシューニャは、自分の来訪を喜んでくれるミリアリアの反応が嬉しくて薄く微笑んでいたのだ。
「こんばんは。それで、昨日作ったものについて今日こそ教えてくれるのかな?」
その言葉にコクンと頷いたミリアリアは、ガラスの小瓶をシューニャに向かって見せたのだ。
ミリアリアは、鈴の音でこう伝えたのだ。
(小瓶の中の液体を首輪にかけてみて)
そう言われたシューニャは、言われた通りに小瓶の中の液体を首輪に向かって掛けたのだ。
しかし、言われた通りにしてみても何の変化もなかったことから、シューニャは心の中でミリアリアに揶揄われてのかと思い薄く笑っていたのだった。
しかし、液体が思いのほか早く乾いた時に「パキッ」と首元で小さな音を立てたのだ。
不思議に思い音のした首元にシューニャが触れると、首輪にヒビが入っていたのだ。
首輪にヒビが入ったことで体に毒が回ると想像したシューニャは、身を堅くした。
しかし、体には何の不調も起らなかったのだ。さらには、忌まわしいと思っていた首輪が音を立てて砕けて外れていたのだ。
これには、シューニャも驚きを隠せなかった。
口をパクパクとさあせた後に、ミリアリアの両肩を掴んで勢いよく聞いていたのだ。
「お姫様、これはどういうことなんだ? 首輪が……首輪が外れた……。なのに、死んでない……」
その言葉を聞いたミリアリアは、目論見が成功したことを知りニコリとほほ笑んだ後に鈴を鳴らしたのだ。
(昔、本で読んだんです。隷属の首輪を無効化する薬の生成方法をです)
「は? そんな……ありえない。だってこれは、失われた技術を使った物だって……。絶対に外れないって……」
困惑するシューニャにミリアリアは、微笑みながら手探りでその頭を撫でていた。
シューニャは、肩まである灰色の髪を優しく梳くミリアリアの存在に眩しさを感じた。それと同時に、ミリアリアに心の底からの忠誠を誓っていたのだった。
(お姫様……。この恩は絶対に返す。こんな俺に自由をくれた。死ぬはずの俺を救ってくれた。俺は、お姫様を守って見せる。なんだったら、ここから連れて逃げてもいい。俺は、お姫様が幸せになれるように手を尽くすよ)
そして、シューニャがミリアリアに忠誠を誓った次の日、事態は動いたのだった。




