第四章 皇帝の初恋(6)
ジークフリートは、足元にいるミドガルズ王国の王女をそこにゴミでもあるかのように蹴り上げた。
まさか蹴られるとは思っていなかったミドガルズ王国の王女は、床を転がった後に鼻血を垂らしながら喚き散らしていた。
「この美しいわたくしを蹴った……? な、なんてことを……ぐっ!! がはっ! いや、やめ!」
喚き散らす姿が鬱陶しいとばかりに、何の感情も映さない冷ややかな目で見たジークフリートは、ためらいもなくミドガルズ王国の王女を蹴りつけたのだ。
そして、痛みで丸くなって唸る姿を見て表情を歪めた後に、吐き捨てるように言ったのだ。
「お前の取り巻き連中が全て吐いた。くくっ。お前にも見せてやりたかったよ。取り巻き連中はな、自分の身可愛さにお前の犯した罪をべらべらと喋ってくれたよ。ミリアリアを嫉んだお前が、あの子の頬を叩いて、服を引き裂いたってね」
「違います!! 違うんです!!」
鼻血を垂らしながら懸命に言い訳を始めたミドガルズ王国の王女を冷めた目でジークフリートが見ていたが、それにミドガルズ王国の王女が気が付くことはなかった。
「あの子が悪いんです。あの子がいなければ、ジークフリート様はわたくしを選んでくれていたはずなんです。きっとあの子は、あの貧相な体を使ってジークフリート様を誘惑したに違いないんです!! だから、わたくしは、ジークフリート様のためにあの悪女に罰を与えただけなんです! か弱い振りで男を誑かすあの性悪女に罰を与えただけなんです!!」
「ほう。俺がお前を選ぶだと? はっ! ありえんな」
「どうして?! わたくしは、こんなにも美しいというのに?」
ジークフリートは、ミドガルズ王国の王女との会話でイライラが最高潮になっていったのだ。
そして、足元のミドガルズ王国の王女と視線が合うようにしゃがんだ後に、そのドレスの襟首をつかんだと思ったら拳で殴りつけたのだ。
そして、悲鳴を上げるのを無視して何度も拳を振るったのだ。
ジークフリートに何度も殴られたミドガルズ王国の王女の顔は見るも無残なことになっていた。
頬骨は陥没し、鼻骨も折れているようだった。瞼は腫れあがり、元の顔が分からない状態になっていた。
その身に降りかかる暴力に途中から意識を失っていたミドガルズ王国の王女だったが、ジークフリートは、水を掛けて意識を覚まさせたのだ。
朦朧とするミドガルズ王国の王女にジークフリートは、視線も向けずに近くにいたしわがれた声の男に命じたのだ。
「後は好きにしろ。ただしまだ殺すな」
そう言われたしわがれた声の男は、深く頭を下げた後に朦朧とするミドガルズ王国の王女の服を引き裂き始めたのだ。
服を引き裂かれたミドガルズ王国の王女は、泣きながら懇願したが無駄だった。
しわがれた声の男は、泣き叫ぶミドガルズ王国の王女の片足を掴んだ後に、そのまま引きずって奥の部屋に向かったのだった。
そして、部屋の扉を開けた瞬間、部屋の中に広がる乾いた血の跡と拷問器具を見てしまったミドガルズ王国の王女は必死に足をバタつかせて逃げようとしたが無駄だった。
しわがれた声の男は、ミドガルズ王国の王女が必死に足をバタつかせる姿を見て初めてニヤリと笑ったのだ。そして、低く暗い声で実に楽し気に言ったのだ。
「それだけ元気があればいろんな拷問を楽しめるな。くくくっ」
そして、扉は重い音を立てて閉ざされたのだった。
ジークフリートは、それを見届けることもなく既に部屋からは立ち去っていた。
地下から戻ったジークフリートは、取り巻きだった他の花嫁候補たちには、鞭打ち二十回という罰を与えた。そして、ミドガルズ王国の王女に命じられて小屋の扉を破壊した兵士たちには、鞭打ち百回ののち、地下牢で十日間の謹慎と半年間の減給の罰を与えたのだった。
本当のところは、全員を殺してしまいたいところだったが、セドルに止められてしまったのだ。
実際には、セドルに止められるまでもなく殺すことはしなかったが、止められなければもっと重い罰を与えていただろう。
そして、ミドガルズ王国の王女の精神が壊れる寸前まで拷問で追い込んだ後、花嫁候補たちの全員の処遇が正式に発表されたのだった。




