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第二章 欠陥姫と騎士(6)

「ミリーちゃん。お口を開けて?」


 ミリアリアは、小さく首を傾げた後に、瞳を瞑って小さく口を開けていた。

 リートを信頼しきっているミリアリアは、無防備な姿をさらしていた。

 そんなミリアリアの姿を見たリートは、ミリアリアの形のいい小さな唇に視線が釘付けになっていた。

 真っ白な真珠のような歯と小さな舌が、無防備にも可愛らしく開いた唇の間から見えた時、リートはごくりと喉を鳴らしてしまっていた。

 軽く瞳を瞑り、小さく唇を開くその姿は、まるでキスを待っているかのようにリートには思えてしまったのだ。

 

(かわいい……。あの柔らかそうな唇はきっと甘いのだろうな……)


 そんな邪な考えを振り払うように、リートは軽く頭を振った後に手元のさくらんぼをミリアリアの口に放り込んだのだ。

 

 一瞬指先がミリアリアの唇に触れて、らしくもなくリートは動揺していた。

 

 ミリアリアはというと、口の中に放り込まれたものを咀嚼し、その甘さと少しの酸っぱさに表情を綻ばしていた。

 

(おいしい……。甘くて、でもちょっとだけ酸っぱい。あ、もうなくなっちゃった。もっと食べたいなぁ)


 口の中のさくらんぼを飲み込んだミリアリアは、もっと食べたいという気持ちを表すようにもう一度小さく口を開いて顔を上に上げていた。

 

 それを見たリートは、ミリアリアがもう一つ食べたがっていることを理解していたが、理性がグラついている自分を抑えるのに必死になっていた。

 無防備に向けられるミリアリアの唇の甘さを確かめたいという欲望と必死に戦っていたのだ。

 

(やばいな……。俺ってこんなに堪え性がなかったか? いや、今までどんな女を前にしてもここまで動揺したことは一度もなかったぞ……。だめだ、ミリーの唇に触れたい。舐めて吸って……。って、俺は何を考えているんだ?!)


 一人欲望と戦っていると、ミリアリアが残念そうに唇を閉じるのが目に入ったリートは、我に返っていた。

 慌てるように手の中にあるさくらんぼを閉じたミリアリアの唇に押し当てたのだ。

 ミリアリアは、唇に触れる感触に頬を緩めた後に小さく口を開けて味わうようにさくらんぼの表面を舌で舐めた後に頬張った。

 美味しそうにさくらんぼを食べるミリアリアを見つめながらリートは、理性を総動員して身を堅くしていた。

 それを誤魔化すように少し掠れた声で、リートは、ミリアリアに声をかけていた。

 

「ミ、ミリーちゃん。美味しかったかな?」


 ミリアリアは、輝くような笑顔で頷いて見せた。すると、それを見たリートは、手に持っていた桃をゴトリと落としてしまっていたのだ。

 リートの当初の計画としては、さくらんぼをあーんした後に、自分もミリアリアからあーんしてもらって、十分さくらんぼを味わった後に桃を剥いてあげて、それもあーんして食べさせる。桃は、ザンクティン大陸ではなかなか手に入らない貴重な物なので、初めて食べるだろうミリアリアの笑顔は可愛いのだろうと考えていたのだが、まさかさくらんぼを食べるミリアリアに邪な想像をしてしまっている自分がいることに動揺していた。

 

(可愛い可愛い。ミリーが可愛くてしょうがない。どうしてこんなにミリーは可愛いんだ)


 そんなことを考えていると、さくらんぼに満足したミリアリアは、悶々とするリートの胸に背を預けてリラックスし始めたのだった。




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