男か女か
俺は航海士だ 磁機を読み 星を読み 風を読み 海の流れを読んだ
綿密な計測は 繰り返し 繰り返し 計り直す
海が好きだったが 計算のついでと 多くの帳簿も任される
己のミスに気がついた時にはもう遅かった 出来る事を全てやってしまったのだ
任される帳簿は日々増えて行き 船に乗る事も無くなった
その頃くらいからだろうか俺は無能を装うようになったのは
わざとと言うわけで無く ただただ嫌になっていただけだ 右から左にただ回す そんな仕事ぶりを続ければ船に乗れるだろうか 何も見ずに書類をまわした 廃棄書類は燃やす振りして友人に贈り物にした どれほどの時節を過ごしたろうか とある船長から酒に誘われて話を受けた
鼠の国の奴で船を自分で持ちたいと言っている まだまだガキだったがな だがそいつは俺にいつも発注して俺をずっと待ちやがる 船はいくらもあろだろうになぜ俺ばかり頼むのやら まだまだ問屋の跡継ぎだと言いながら ただの船乗りに頭を下げては分からぬ事を聞きやがる その坊との付き合いは10年を超えた
ある時、昔教えた船の値段をついに用意出来たと言う 坊はいつしか店の当主となっていた
船が欲しい とな
俺は何も答えない ただその船長に賭けを申し出る
次 この店に入るやつが男か女か 女であれば話を聞くと ここは海の男が集まる安い酒場だ 女なんか来ない 事実上の断りだと互いに分かりつつそれを賭けとした
しばらくして客が入り その客を見て久しく笑ってしまう
「次の船に俺を乗せろ 上にはなんとか言いくるめる」
オカマ野郎は来て早々に俺を口説きに来たが蹴り飛ばしてやった