盤外戦術
ロビーでパチリと音が聞こえる
今日も鰐真は碁を打っていた お相手は雪花だ、珍しく自ら鰐真を見るなり捕まえて碁を挑んで来た
「新しい道を覚えました 今日は決して負けません!」
と 息巻く 雪花にしては珍しい 鰐真はいつもようにニコニコと一手一手を楽しむ
いつものように両指で頭を抱えてむーむー唸り パチリと置いた、次の一手は鰐真は間違う事は無いだろう しかし間違いがあれば一気に破綻してしまう一手
鰐真が石を手に取り 手を伸ばすとき背後からそっと耳打ちされる
「うちの妹をまたいじめてる...」
振り返る鰐真の顔を初花は絡め取った 鰐真の耳元で何かを囁く
鰐真がふるふると苦笑いしながら横にふる また初花の囁き しだれかかり 首に腕を絡み溶かせて胸肌は肩に当たる 鰐真はふるふると横にふるが顔を盤面には向けさせてはくれない
初花の背後からもう1人の娘がするりと現れた
夏花は鰐真のおでこに おでこを合わせ当てて 妖艶に笑う
鰐真の伸ばした手から石がこぼれ落ちた
盤面に落ちる一手を 雪花は取り渡してこない
雪花にしては不本意であったが
この一局は初花姐さんの一局だと思い聞かせて颯爽と次手を打ち進める
後日 花の部屋に 夏の髪飾りが3つ届けられた