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清く 遊郭 美しく  作者: りあもんて
3/11

手紙とお説教

いつもお引立てありがとうございます

以前よりお探しでございました 華織物の品が入庫しております

お品の状態ですが目立った痛みも無く、また当方の信頼する職人

に預けてさらに輝きを増すように手入れを手配しております

おそらくは商品のお間違えはないかと存じますが一度立ち寄り

一瞥していただければ幸いに存じます


龍流海運商社 鰐真



この手紙も出しておいてくれ

いくつかの封書の上にポンと置き執務に目を落とす




黒文字の芽を愛でた時から深緑へと移りました

葉が土地に帰るまでの時節は待てません

明日にでも切り落とそうと思います


鳳蘭




自分に届く手紙を手に取りながら

「少し顔を出さねばな」


お婆 今月のツケ先に渡しておくよと帳簿の横に封を置く

「少し多いね 残りは育花代の一部にしておくよ」

「一部なのかい 随分とかかるなあ」とにこやかな鰐真だ

「安くしてもいいさね その方がさっさと 稼ぎにも出せるねぇ」

「わかったわかった お婆 しっかり仕上げるように頼む」

「まあ、育てはあの初花だからね あまり期待しても無駄だよ」

「お初が育てた花は 多少の形の崩れも気にせず満開に咲く それで良い」


そう言ってお婆に手を振り 鳳蘭を指名する

「鳳蘭は鰐坊が今日来るけど 冷やかしなら追い返せって言ってたけどね どうしたらいいんだい?」

鰐真の顔がひきつる

「鰐坊が初に部屋用意したと聞いて 愛想振りまかないあの子がにこにこしていたよ」

「。。。お婆 今日も部屋空いてるかな?」

「用意しますよう 鰐真様 お部屋には初花を呼べばいいかしらー?」

「いつから楼は癒しではなく脅しを売るようになったんだ 鳳蘭の機嫌直し手伝ってください」


禿達はロビーでうなだれる男をぺちぺちと慰めていた











円梨を駆引きの途中で箸休めしているでしょう


円梨の一手は挨拶のような常套句ではありませんか それを普通は軽くいなして終わるものです それを何もせずに去って放置とは何ですか? 私や初花であればまったくもうと思う程度でしょう しかし円梨にとっては薄氷を踏む思いで絞り出したとなぜ思いやってあげないのですか 手紙も出せども音沙汰なし? 初花に部屋? あげくに入ったばかりの禿を買い取ったなどと言われてるんですよ? 円梨はあの一手が最悪の悪手であったと崩れ落ちているんです! わかってるのですか? 育ての艶桃(エントウ)も困り果ててますよ!!



ところで 貴方 手紙は読んでいますか?

私の手紙だけでも何枚お読みになったのかしら?

私の他の手紙は届いていらっしゃらないのかしら?


あの子はまだ若いのです 少しは気を回してあげなさい

貴方の事です適当に話した事 忘れてるのでしょう?


昨日も円梨が深酒が過ぎて婆が謹慎を言い渡してました

婆に話を通して部屋を用意するようになさい

全く貴方は慣れぬ娘には酷い事をしているのです

その事 ゆめゆめお忘れなきように

そんなのだからいつまでもお婆に坊坊言われるのよ!


鳳蘭(ホウラン)姐さん そこまでにしてあげて下さい 鰐真さまがしんでしまいます」

涙目の禿が床に延びた鰐真の間に入った

「いいんだよ蓮羽(レンウ) これは僕から頼んでいる事なんだ 予想よりこっぴどいけどね もうこうやって叱ってくれる人がいないんです もう鳳蘭だけだよ」

と伸びたままにへらっと笑う鰐真に蓮羽は少し引いている

「私もこのように叱るのは鰐真さま 1人です しかし私もいつまでも叱りませんからね」


「だいたい鰐真さまは遠回しな階位会話をしてもまるで無駄、今だに手紙もまるで子供のような言葉、私の技量も落ちてしまいますわ」

「お説教おばさんみたいになってますよ?」

「あら? それではもうお説教はやめます」とにこにことしだす鳳蘭

「口が過ぎました これからもよろしくお願いします」

と鰐真は頭を下げるのを 蓮羽はもう訳がわからない様子で見ていた



「ところでまだ舞妓の円梨を部屋呼びしてはまずくは無いでしょうか?」

「あんたの周りにたむろってる禿達を使うんでしょうがぁぁ!!」

「そうでしたぁぁ すいません。。。」

「10ほど入れちゃいなさい 多いほどいいわ」

「それでは部屋でなく座敷じゃ。。。?」

「私が婆に1番大きなお座敷頼んであげるわ もちろん私と艶桃も呼びなさい こんだけ私達を疲れさせたんですもの花代くらい出すわよね?」

「。。。ハィ」

「先に言っとくけどさぼるから」「は?」「隅で2人で飲むから」「。。。ハィ」

「蓮羽 お菓子いっぱいあるそうですよ 思いっきり楽しみなさい」

「はい! 鳳蘭姐さん!」




「鰐真さま 聞いたわよ 禿集めてるんでしょ うちの2人はもちろんよね?」

ロビーで婆と座敷の用意を話していると初花が話かけてくる

「私も呼んだ方がいいと思うわよ 鳳蘭は何もしないのでしょう? 円梨に事の次第を説明できるのは私だけだもの 円梨の事は私に任せなさい 」

と胸をはる これは断ってもいい事ないやつだろう 決定事項だ




大座敷で円梨は禿達と童心に帰り大騒ぎをして ご機嫌を取り戻した

宴を終えてお婆が円梨の肩に手をそっと置いてささやく









「上出来だ」




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