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幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜  作者: 霊鬼
第四章〜狂いし令嬢と動き始める歯車〜

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6.久しぶりの

 貴族の最高位である四大公爵家。

 その四人の公爵が統べる領地は、それぞれ独自の形で発展を遂げている。

 最北の貿易都市ヴェルザード領、最西の武術都市アグラードル領、最南の冒険都市リラーティナ領。それら全てが王都とは違う形であり、同じ国とは思えないほど様相が異なる。


 さて、ならば俺達が通う第二学園が存在するファルクラム領はどうであろう。

 それを端的に表すのなら、教育都市である。

 国内に二つしかない国立学園があるだけでなく、ファルクラム公爵が作った公立の学校や民営の私立学校も存在する。

 王都や他の年にも学校がないわけではないが、ファルクラム領の教育内容の幅広さと学校の領には劣る。


 金さえあればありとあらゆる全てが学べる都市、それが教育都市ファルクラム領なのだ。


「学校の隣に違う学校があるなんて初めて見たぞ……」


 俺はダンジョンに潜るという事で、街を散策しながら冒険者ギルドに向かっていた。

 ファルクラム領は人口が多いし、他国から学びに来る人もよくいる。そのせいか配置を間違えたゲームマップみたいな感じで学校が腐るほどあるのだ。


「確かここら辺に冒険者ギルドが……」


 ファルクラム領は広大だ。

 冒険者という職業が一定数存在する今、領地に一つではなく、ダンジョンの数に合わせて複数ヶ所あるのが基本だ。

 俺はそんな中でも学園に一番近いギルドに来ていた。


「お、アルス君じゃないか。」

「……なんでいるんだよ。」


 割と久しぶりの男が、ギルドの前で焼串をその口に頬張りながら立っていた。

 濃い緑色の髪と目、頭には目を軽く隠す程度の大きさの帽子を被った胡散臭い男。万能者(オール・イン・ワン)、オリュンポスのヘルメスだ。


「いやあ、僕は忙しかったんだけどね。君がダンジョンに潜ると聞いて、親友としていてもたってもいられなくて……」

「で、本当は?」

「ほら、令嬢二人がダンジョンに入るんだ。念の為に護衛は必要だろ?」

「ってことはお前がついてくんのかよ。他の奴はいなかったのか?」

「いなくはないけど、僕が一番マシだよ。なんせオリュンポスは変人と頭のおかしい奴しかいない。」


 そうは言うが、俺にとっては一番お前が駄目な奴だと思うけど。

 アテナさんやらヘスティアさんとか、アルテミスさんとか。今んとこ全員ヘルメスの億倍マシだがな。

 俺は焼串を食っているヘルメスを極力視界に入れないように辺りを見渡すが、まだ俺達以外には来ていないらしい。

 俺は早めに来ていたので遅刻というわけではないが、そうなると何故ヘルメスがもういるのか気になる。


「というか早いな。一人で何やってたんだ?」

「僕は色々と冒険に準備が必要なんだよ。この服も特注なんだぜ?」


 そう言ってそのやたらポケットがある服を伸ばして見せる。

 見た感じ俺には普通なように見えるのだが。


「このポケットは全部空間拡張と空間固定がされてるんだよ。簡単に言えば滅茶苦茶物が入る上に、あんまり腐らないポケットなのさ!」

「なんか中途半端だな。」

「いや十分凄いからね、これ。永遠に腐らないで無限に入るやつなんてこの世に存在しないから。」


 確かに存在しないのだろうけど、それが可能な青狸を見て日本人は育ってるからなあ。


「しかも丈夫だから、防具にもなる。これを着てれば火竜のブレスにすら耐えられるからね。」

「マジか。それっていくらぐらいするんだ?」

「うーん、うちのクランは専属の職人が一人いるからほぼタダだったけど……」


 そうこう話しているうちに、お嬢様とティルーナが来た。

 俺とヘルメスはそれに気付いて会話を止め、二人の方を見る。


「お久しぶりですね、ヘルメスさん。」

「ああ、リラーティナ嬢。相も変わらずお美しいねえ。」

「今回も依頼をお受けいただきありがとうございます。」

「勿論、美人美少女の言葉を断れないのが僕なんだからね。何だったら無償でも受けたさ。」


 清々しいクズさを発揮するヘルメスと、それを完全にスルーしてるお嬢様。そして見慣れない人間を威嚇する猫のように見ているティルーナ。

 三者三様とは正にこの事であろう。

 俺と言えばその三人から若干距離を取りながらそれを見ていた。

 ヘルメスとティルーナはいつも通りだが、フィルラーナ様は人と会うと全く様相が異なる。

 偉いのだから別に偉そうにしてもいいだろうに。ヘルメスも敬語など使う気がないのだから。


「デメテルさんはいないのですか?」

「デメテルはもう少しで来るだろうさ。時間の無駄を嫌うから時間ピッタリにならないと来ないんだ。」


 そうか、ヘルメス以外も同行するのか。

 デメテルといえば聞いたことがある。確かオリュンポスに所属する俺の腕を治せると言われてた回復魔法の使い手だったか。


「え、デメテル様が来られるのですか?」

「ああ、そうだよアラヴティナ嬢。リラーティナ嬢は僕とデメテルへ依頼を出したからね。」


 そこで初めてティルーナが言葉を発し、驚いたような表情を見せる。

 これはまた常識がないと言われるかもしれない。有名人なのだろうか。

 いや、ティルーナは回復魔法を練習しているから同業者だろうし知っていてもおかしくないのか?


「フィ、フィルラーナ様っ!デメテルとは、『聖人』のデメテルでしょうか!?」

「ええ、それで間違いないわ。」


 あ、なんか有名人っぽい。

 また俺だけ置いてけぼりのパターンだ。無知がバレないように息を潜めておこう。


「……? ……うんうん。」


 おいヘルメス、こっちを向いて頷くな。

 お前がそういう仕草をする時は大体いたずらをする時だ。短い仲だがよく分かってるぞ。


「おやおやアルス君。急に黙りこくってどうしたんだい?ほらほら、もっとこっちに来なよ。」

「いや、俺はいい。」

「良くないぜ、アルス君。いくらデメテルの事を知らなくたって会話に参加しないだなんて。」

「はあ?」


 ティルーナが過去一番の軽蔑の目だ。この世にこんな生物が存在するのか、みたいな目をしている。


「デメテル様は、現在世界において世界最大の癒し手である証の『聖人』の称号を賜った方ですよ!? 何で知らないんですか!」

「シルードの生まれだからとしか言いようがねえよ。」

「ああそうでしたね! 責めるに責められない!」


 ティルーナは頭を抱える。

 常識というのは子供の頃から蓄積された些細な事の集合体だ。些細だからこそ身につけようとして身につく事じゃないし、簡単にどうにかなるものでもない。


「いやあアルス君。見てて面白いね、本当に。愉快な仲間じゃないか。」

「俺は頭痛がするよ。」


 俺はこいつから信頼を勝ち取らにゃならんのだ。

 こうも嫌われていればやる気も失せるというものだ。


「それに、君も成長した。見ない間にこんなに立派な魔法使いになったわけだからね。」


 そう言ってヘルメスは俺の頭を荒々しく撫でた。

 褒められるとは思わず、俺は驚いて一瞬硬直するがすぐに腕を弾く。

 褒められ慣れてないせいか、単純にこう言われるとどうも気恥ずかしい。


「やめろ。」

「ハハハ、子供を褒めるのは大人の特権だからね。」


 精神年齢だともう十分に大人のつもりなんだがな。


「楽しい冒険にしようじゃないか、アルス君。僕とて冒険者の端くれだ。君達の冒険を精一杯サポートしよう。」


 そう言ってヘルメスは俺へと手を差し出した。


「……まあ、よろしく頼むぜ、ヘルメス。」


 俺は一瞬悩んだが、その手を掴む事にした。

評価とかはしなくてもいいですが、ここが駄目だとか感想をくださると嬉しいです。

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