序文
この世界、アグレイシア星には星の数ほど英雄がいる。
地方の英雄から世界中の人間に知られている英雄まで。様々な英雄が存在しており、その誰もが我々の人類史には重要な人物である。
その中でもとりわけ重要な英雄は誰か。
そう言われるとやはり十大英雄が一番名前があがる。
この世界の歴史において、最も優れた英雄として『王』の称号を賜った十人の大英雄。
その誰もが素晴らしい人物であり、しっかり説明しようとすればこの本では収まり切らないほど偉大な人物だ。
私は歴史を研究する身として、やはり英雄の話題を避けて通る事はできない。
そこで私の友人の学者と飲みの席で十大英雄について話すこととなった。
人生で一度くらいはした事があるのではないか。
いわゆる、英雄談義だ。
どの英雄が一番凄いのか、どの英雄が一番好きかを語り合う。
その功績が別方面のものである以上、単純比較は難しいが、どの英雄が一番凄いかというのはよく考える事だ。
最も優れた英雄と言えば『勇王』ヴァザグレイ・フォン・ファルクラムであろう。
彼は二代目勇者であり、二代目から最後の代となった十代目までの勇者が使った聖剣の作成に大きく関わった人物だ。
更に言うなれば最も王国で主流な王国剣術を作り、現代の貴族制度の礎を作った、最優に相応しい英雄であるだろう。
最も強い英雄と言えば『騎士王』ディザスト・フォン・テンペストだ。
数百年前の王国総騎士団長であり、麻薬や人身売買、違法取引を一手に担う『黒竜会』をたった一人で滅ぼしたという『裏解体』はあまりにも有名である。
最も偉大な英雄であるならば『人王』ピースフル・フォン・グレゼリオンである。
グレゼリオン王国の建国者であり、魔王を殺して初まりの勇者にして英雄となった男。
大英雄の半数以上がグレゼリオン王国の出身な事から、その功績は計り知れない。
とまあ、こんな風に私は友人と話していた。英雄の話ともなれば夜を明かして、もう一度夜が来るまで私達は話せる。
そうやってその日も特に終わりの時間も決めずに語らっていたら、とある英雄の話があがった。
最も知られている英雄。『英雄王』ジン・アルカッセルである。
彼の行ったことはあまりにも有名であり、その劇的な人生からも彼の物語は様々な形で世界に広がっている。
しかし、話していく中で我々は想像以上に彼のことを知らない事に気が付いた。
名前は知られている。しかし、同世代の英雄に比べて彼の詳細な話はあまり知られていない。
どこで生まれたのか、どうやって育ったのか、どんな友人がいたのか、どんな人生を送ったか。
歴史学者として、中途半端な知識でいるのが私は許せなかった。
それが本書制作に至った経緯である。
読者のあなたもこの本を機に、更に英雄というものを知ってみてくれ。
彼の人生はあまり有名ではないし、記憶に残りやすい派手さがない。しかし、彼の偉大さは歴史が証明している。
本書があなたの助けになれば幸いである。




