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幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜  作者: 霊鬼
第二章〜学園にて王子は夢を見る〜

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27.躍動

 月明かりの下。二人の男がいた。

 一人は恐怖を感じるほどの真っ青な髪を持つみすぼらしい服装をした男。

 もう一人は装飾品などは一切つけていないが、妙に服装や身だしなみを整えた平均的な体型の男。


「計画は失敗、か。」


 妙に小綺麗な男がそう言う。

 そこはとある建物の屋上。そこにある大きいテーブルに二人は座っていた。


「まあ惜しいところまでいったが、元々期待してはいなかった。大して金もかかっていない。組織としては問題ないな。」


 そう言いながら小綺麗な男は皿に乗せられたステーキを優雅な作法で食う。

 それをもう一人の男は黙って見ている。


「それよりも、あの少年達が気になる。計画を破綻させたアルス・ウァクラートと、一瞬であったが君と切りあったフラン・アルクス。少し警戒するべきかもしれない。」

「ああ、分かるぜ。お前が慎重なのは分かる。それで組織をここまで発展させたのも分かってる。だけどよ、気にし過ぎじゃねえか?」

「いや、正当な評価だとも。油断が我々の野望を遠ざけ、私のこういった平穏な時が奪われる。それは何よりも許し難い事だ。」


 グラスに入った真っ赤なワインを飲み干す。そして残りの肉も口の中に全て入れ、噛み、飲み込む。


「何より、総帥様は研究の邪魔をされるのを酷く嫌う。私もまだ、死にたくないからね。」

「……ああ、分かるぜ。死ぬのは嫌だな。」


 使用人が横から出てきて、食器を片付け始める。


「計画の成就は最速でも数年は先。今はまだ、奥底に沈んでおこうじゃないか。」


 その口を大きく歪める。

 その心にあるのは野心か、欲望か、憎悪か。

 どちらにせよ、マシなものではない事だけは確かだった。


「そうだな……五年。五年も経てば、君も毎日のように人を殺せる。私も趣味を楽しむ余裕が出る。」

「……そうか。」

「そうだとも。全ては総帥のために、だ。この世を地獄に作り替えてみせようじゃないか。」


『悪意』は、動き出す。






 勉強に魔法。

 やらなくちゃいけない事は沢山あるが、目を背けてはいけない事がある。

 いや、今まで目を背けていたことだ。


 即ち、何故俺が転生したか。

 魔力を持っていたからというなら、何故俺は魔力を持っていたのか。

 あの白い腕は何か。ツクモとは一体どういう存在なのか。そして、俺とは一体どういうものなのか。

 考えれば文字通りキリがない。

 しかし恐らくこれは、俺が考えなければならない話だ。

 またあのツクモの世界に入りたいのだが、うんともすんとも言わない。


「……俺って、なんなんだろうな。」


 自分自身がよく分からない。

 前世で俺は捨てられていた。もしかしたら、親は俺が何なのか知っていたんだろうか。

 そうだとしたら、俺を何故捨てたんだろう。


「まあ、考えても仕方ないか。」


 前世の事が含まれてきたら、もはやこの世界で調べ切れる内容ではない。

 一応どうにかして知ろうとはしてみるけど、生涯知ることができない可能性は高い。


「今から魔法の練習するつもりも出ないしなあ。」


 俺はベッドで寝転がりながら、そう呟く。

 ガレウは休日だとよくいなくなる。一回聞いたことがあるが、適当にはぐらかされた。だけどまあ、嫌な事でも悲しいことでもなく単純な用事だと言ってたし大丈夫だとは思うが。


「あ、そういやこれがあったな。」


 俺は枕元に置いてあった本を手に取る。

 その表紙には『平凡な英雄記』と書かれている。物語としての側面も強いが、これは偉人伝という感じの書き方がされた本だ。

 まあ中身もチラッとしか読んでないし、折角だから今読んでしまおう。


「さーて、今日中に読破するか!」


 俺はそう意気込んで本を開いた。

王子を襲い、元侯爵に力を貸した『組織』とは何か。アルス・ウァクラートの体では何が起きているのか。謎を残したまま、次の章へと進んでいきます。

最後にアルスが『平凡な英雄記』を読み始めたのに合わせて、3章の前に幕間といった形で『平凡な英雄記』の話をさせて頂きます。


この小説は私の書きたいを優先している部分があり、場合によっては読者の事を考慮しない書き方をする部分があります。できるだけ面白いと思っていただけるように書きますので、どうかよろしくお願いします。

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