5.初めての(人間の)お友だち
『くっきー、しょこら、みんと。わっ、私って・・・。』
だめだわ。妖精さん達に学園の皆さまが私のことをどう思っているか聞くのはさすがに反則よね。
『マーガレットどうしたのー?』
『お腹すいたのー?』
『シンシアのおやつを奪ってこようか』
ルイス様のお言葉を思い出して私が唸っていた時、カナン様達に机を取り囲まれた。
「マーガレット様!成績が張り出されておりましてよ!10位だなんて、やはりマーガレット様は、キース殿下の婚約者に相応しくないですわ。」
「カナン様、仕方ないですわ。マーガレット様は、ねぇ?」
「えぇ、同じ公爵家とはいえ、同じ年の妹さまがいらっしゃるくらいですもの。」
「あらぁ?さすがに1つは年が違いますでしょう?」
うふふふふ、と厭らしい笑い声に取り囲まれる前に私は立ち上がった。
「カナン様は何位でしたの?」
私の質問が思いもよらなかったのかカナン様は一瞬フリーズした後で、顔を真っ赤にされた。
『103位だよー』
『成績表みてキーキー言ってたよー』
『一生数式が覚えられない体にしてやろうか』
「わっ、私のことは良いのです!」
「「「そっその通りですわ!」」」
「ルナ・ターナー伯爵令嬢、ミラ・マーシャル伯爵令嬢、サナ・ランドマーク子爵令嬢。」
カナン様のお友達の名前を初めて呼んだ私に、今度はお3人の顔が真っ赤に染まった。
「私、これからはしっかり皆様と向き合います。皆様のお言葉は一言一句決して忘れませんわ。」
「・・・マーガレット様、それはどういう・・・。」
「私達は決してマーガレット様を・・・その・・・。」
「かっ、カナン様っ。」
3人の視線を受けたカナン様は、
「私には関係ございませんわ。」
と言って踵を返してしまわれた。
「そっそんなっ!お待ちください!」
「私達、カナン様のご指示の通りに!」
「何かあっても守ってくださるとおっしゃったではないですか!」
お3人は慌ててカナン様を追いかけていかれた。一応私に申し訳なさそうに頭を下げながら。
・・・これで良かったのかしら?
不安に思いながらも席に着こうとした時に、ふと視線を感じた。
「うるさくしてしまってごめんなさい。」
皆様のお勉強の邪魔をしてしまったわよね。
「いえっ!とんでもございません。」
私に答えてくれたのは、ソフィア男爵令嬢だった。
「あっ、あのっ、マーガレット様。」
「いかがされましたか?」
私が微笑むと、ソフィア様はとても嬉しそうなお顔をされた。
「とても素敵でした!」
「・・・へっ?」
思わぬ発言にキース殿下の婚約者に相応しくない間の抜けた声を出してしまった。
「いつも何を言われても全く動じず、クールなところもとても憧れていたのですが、今日の、たった一言で撃退されたところもとても素敵でした!・・・あっ!」
ご自分の発言がカナン様たちに不敬にあたるかもと気づいたのか、ソフィア様は口に手を当てて俯いた。
「私は誰にも言いませんわ。」
「マーガレット様。」
「とても嬉しかったので、私だけの宝物の言葉にします。」
「・・・あのっ、またお話させて頂いてもよろしいでしょうか?」
「えぇっ!もちろんですわ。」
こっこれはもしかして、15年間で初めてのお友達が出来たのではないかしら?
『マーガレットにお友だちがふえたー』
『意地悪さん達と違ってソフィアの周りの空気はきれいー』
『祝福のシャンパンで溺れさせてやろう』
前言撤回。私にはずっと妖精さん達がいてくれたもの。
15年間で初めて人間のお友達が出来たのではないかしら?