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2.婚約者の王子様

「マーガレット・シルバー公爵令嬢。」

13歳の時、初めての顔合わせで、第一王子のキース殿下は、輝く笑顔で私の名前を呼んだ。

私は、生まれて初めて胸がドキドキした。


「なんでお姉さまが婚約者なの!?私の方が王子様にふさわしいのにー!!」

ディナーの時に、シンシアが荒れ狂っていたけど、それさえも耳に入ってこないくらい、私は、キース殿下の笑顔ばかり思い出していた。

「えぇ、えぇ。マーガレットみたいな可愛げのない子よりも、シンシアの方がよっぽど王妃に相応しいですわ!」

「・・・マーガレットの母親は、帝国の伯爵家出身だからな。」

お父様の言葉に義母は私を睨み付けた。

物差しで背中をぶたれながら、何度も何度も言われたこと。

「お前の母親のせいで、私と旦那さまは愛し合っていたのに結婚出来なかったのよ!身分を盾に愛されてもないのに、惨めな女!」

でも、私はその言葉を疑っている。だってお母さまは、死にゆくその最期の時でさえお父様を呼ぶことはなかったんだもの。


『王子きてるよー』

『シンシアとおしゃべりしてるよー』

『熱々の紅茶をぶちまけてやろうか』

キース殿下は、たまに公爵家にご訪問くださるけど、執事やメイドから、それが私に取り次がれることはなかった。

妖精さん達に教えてもらって、せめて一番まともなドレスを着て、髪を整えて、私はいつも慌てて会いに行った。

「マーガレット。体調は大丈夫なのかい?」

「キース殿下。あのっ・・・ご心配くださいましてありがとうございます。」

「お姉さま!ご無理なさらずまだお休みになっていた方が良いですわ!」

シンシアは、キース殿下の前では、本当に体調の悪い姉を心配しているかのようなひた向きな顔をして私に話しかける。

だけど、キース殿下の見えない角度からは、意地悪そうに口の端をあげて、私を嘲笑っていた。

まだ12歳なのにこんなに性格が悪いだなんて、私はシンシアの将来を秘かに心配していた。


「マーガレット。美味しいかい?」

「はい。ありがとうございます。」

キース殿下が、王宮でのお茶会に招待してくださって、その時ばかりはさすがに新しいドレスと、(とても痛かったけど)メイド長が結った髪で参加することが許された。

「キース様。マカロンもとっても美味しいです!」

フリフリのドレスと、ふわふわのピンクの髪を揺らして、ニコニコ笑うシンシアを見て私はそっとため息をついた。

招待状には、妹のシンシアも是非、と書かれていた。

それを見た時の義母とシンシアのはしゃぎっぷりと、私への嫌みの嵐といったら・・・。私が思い出してげんなりしている時だった。


ガタン!


突然、キース殿下が倒れて、大騒ぎになった。

「きゃーっ!」

「王宮医をすぐにっ!」

「キースさまぁ!」


『どくだよー』

『王子様の紅茶に毒が入ってたのー』

『シンシアの紅茶にも毒を入れてやろう』

『毒!?ねぇ、助けられる?』

『いやだー王子様はシンシアとばっかり話してるからきらいー』

『それに死なないよー痛くて苦しいけど死なないよー』

『致死量の毒を追加してやろう』

『良かった!死なないのね。

でも、あんなに苦しんでるわ。

お願い!くっきー、しょこら、みんと!!』

私が必死に頼んだら妖精さん達は渋々キース殿下に魔法をかけてくれた。


キラキラ

突然キース殿下の体が光に包まれて、一気に輝きを放った。


「僕は・・・。」

目を覚ましたキース殿下は呆然としていた。

「キースさまぁ!良かったですぅー!」

泣きながらキース殿下にすがり付くシンシアと、ティースタンドを挟んで(脳内で妖精さんと会話をしていて)呆けている私を、殿下は交互に見ていた。


後日分かったことは、紅茶に毒を入れたのは、殿下付きのメイドだったことと、新種の毒で、遅効性があり、毒味をした時点では異常がみつからず、殿下が倒れる少し前に毒味係も倒れていたとのこと。

キース殿下は、妖精さん達の魔法のおかげですっかり痛みがひいて、お医者様の診断でも問題がなかった。

そのお茶会での話は、「第一王子の起こした奇跡」として、王宮だけでなく、国中で大きな話題になった。


『奇跡じゃなくてぼくたちのおかげなのにー』

『どうせ死ななかったのにー』

『もう一度毒を仕込んでやろう』

不満そうにパタパタ飛び回る妖精さん達に私は思わず笑ってしまった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 超絶過激な妖精たちだなwだがそれがいいw
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