17.婚約破棄のその後
キース殿下と私の婚約が解消されたことと、キース殿下とシンシアの婚約が成立したことが王宮から発表され、学園では大騒ぎになった。
といっても直接何かを聞いてきたり、言ってくるような方はさすがに誰もいらっしゃらなかったけれど。
ソフィア様はとても心配してくださって、ランチタイムにはいつも手作りのお菓子を持ってきてくださった。
「マーガレット様。こんな私でも何か力になれることがあれば何でも言ってくださいませ。」
「ありがとうございます。ソフィア様。
こんな状況になっても変わらず側にいてくれる、それだけで私はとても嬉しいわ。お菓子も毎日ありがとう。」
「うちのお屋敷にもマーガレット様の大ファンがおりますの。
最近ではシェフと3人で毎日お菓子作りに取り組んでいますわ。
あっ!もちろんお勉強もちゃんとやっておりますのでご心配しないでくださいね。」
『マーガレットーまただよー』
『王子達がまたケンカしてたよー』
『物理的に火に油を注いでやろう』
妖精さん達の報告に私は頭を抱えた。
案の定すぐにカナン様が真っ赤な顔をしてやってきて、当たり前のようにソフィア様のお菓子を摘まみだした。
「カナン様、またキース殿下と揉めたのですか?」
「私は、シンシア様に「そのお花畑の頭では次期王妃は務まりませんわ」とオブラートに包んで忠告しただけですわ。
それなのに毎回、毎回、キース殿下が駆けつけて!
何なのですか!あの方は!
だいたい公爵令嬢の私が、たとえ殿下の婚約者だとしても、公爵令嬢のシンシア様に物を申して何が問題なんですの!
あら?このフィナンシェ美味しいですわね。」
「ふふっ。ありがとうございます。」
一瞬和やかな雰囲気になりかけたところでカナン様がまた怒りだした。
「だいたい貴女のお父様も気がしれませんわ。
マーガレット様が公爵家を継ぐのが当然でしょうに、養子をとるなどと!」
「・・・私もあの家にいるのは嫌ですから。」
私の言葉にカナン様は一瞬困った顔をした後で、いつも通りのぶれない姿勢を取り戻した。
「私はこれからもシンシア様に言いたいことは言っていきますわ!マーガレット様がもし普段言えないことがあるのでしたら、私が代わりに忠告致しますので、言ってくださいませ。」
「・・・ありがとうございます。
私には心強い味方が2人もいて心強いですわ。」
『僕たちもいるよー』
『マーガレットが幸せになれるようにがんばったよー』
『驚きすぎてアゴが外れないように固定してやろうか』
得意気にパタパタ飛び回る妖精さん達に首をかしげていた私は、ディナーの席でお父様が言った言葉にアゴが外れそうなほどの衝撃を受けた。
「マーガレットは、モーガン伯爵家の長男ルイス・モーガンに嫁がせる。」