13.妖精の愛し子の決意
今年の「聖女」の儀式まであと数週間に迫っていた。
平民は教会で、貴族は学園で、毎年決められた日にそれは実施される。
『「聖女」と認定されないとこの国に悪い影響があったりするのかしら?』
『ないよー聖女なんて人間が決めてるだけだよー』
『僕たちがいるだけで国が豊かになるんだよーえっへん』
『マーガレットが望むなら悪い影響を与えてやろう』
お母さまのお手紙を読んでから、私はずっと考えていた。
私にこの国で「聖女」などと呼ばれる資格なんてないわ。
それにキース殿下の婚約者である資格もあるはずない。
だって、私には、この国の血が一滴も入っていないのだもの。
『くっきー、しょこら、みんと。
聖女の儀式で、玉を光らせないでほしいの。』
『えー?なんでー?』
『玉が光ると皆がびっくりして楽しいよー』
『サーシャを虐めてたやつらは土下座したぞ』
『私は、あなた達と一緒にいられたらそれで良いの。』
『ずっと一緒だよー』
『いつもマーガレットの側にいるよー』
『生まれてから死ぬまでだ』
『たとえば、あなた達に魔法が使えなくても、側にいてくれるだけで私はとても幸せなの。』
『そんなこといままで言われたことないよー』
『一緒にいるだけで幸せー』
『だっだが、まっ魔法が使えなかったら、いつか王宮を爆発することが、でっ出来なくなってしまう』
『みんと、落ち着いて。そんなにオロオロしないで。たとえば、の話だから。そして王宮を爆発させることは諦めてね。』
私が聖女だと認定されなくても、この国が豊かならそれで良い。
ソフィア様がいて、カナン様がいて、ルイス様がいる、この国が、豊かであるならそれで充分。
『物差しおばさんをギャフンと言わせるチャンスなのにー』
『王子とシンシアも土下座させたいー』
『やはりてっとり早く爆破が良いだろう』
『くっきー、しょこら、みんと。お願い。』
『マーガレットずるいー』
『僕たちがマーガレットのお願い断れないの知ってるー』
『その代わり交換条件だ』
『交換条件?』
『ふっふっふーいたずらー』
『玉を光らせない代わりにいたずらするー』
『さあて、どんないたずらをしてやろうか』
『いたずらよね?いたずらなのよね?爆破とか、毒とか、溺れさせたりとかはダメだからね?ねっ?
ねぇ、なんで誰も返事しないの?』