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11.お母さまからの手紙

マーガレットへ


お誕生日おめでとう。

16歳になったマーガレットが、幸せであることを祈りながらこの手紙を書いています。

この手紙は、マーガレットの言っていた妖精さんに託すつもりでいます。

「聖女」の儀式のある16歳のその年に、どうかマーガレットに届けてくださいますようにと。


私には、どうしてもあなたに伝えなければいけないことがあります。

あなたはダニエル・シルバー公爵の本当の娘ではありません。

あなたは、あなたの本当のお父様と私が心から愛し合って産まれた、かけがえのない宝物です。


私は、帝国の伯爵家に生まれて育ちました。

両親はとてもプライドが高い人達で、私にはいつも完璧であることが求められていました。

平凡でなんの取り柄もない私には、常に人より優秀であるという両親にとってはきっと当たり前のことがとても難しかった。

そんな私をずっと支えてくれたのが、専属執事のマーカスでした。

私は彼に恋をしました。

身分が違う私達が本当の意味で結ばれることは不可能でしたが、それでも私は彼に恋をしたのです。

そして、あなたを授かりました。


そのことを知った私の両親の怒りは凄まじく、マーカスは伯爵家を追い出され、私はお屋敷に閉じ込められました。

そんな時に、ダニエル・シルバーが援助を求めて遥々国を越えて我が家にやってきたのです。

彼の母親が帝国に留学をしていた時に、私の母親ととても懇意にしていたらしく、もともとは手紙で援助を求めたらしいのですが、自分達になんの益もない援助などするはずもない私の両親はその手紙を捨てていました。

彼は、不幸にも若くして両親を事故で失い、突然公爵家を引き継いだ際に悪い人間に騙され、国内には頼れる貴族もいなかったようです。

このままでは立ち行かなくなる限界のところで彼は最後の望みをかけて、単身でやってきたのです。

私の両親は、彼の身分と困窮しているその状態を見て、とても卑怯な提案をしました。

私のお腹の中の子供を、自分の子供として育てるのならば援助をすると。

彼は、その提案をのみました。

そこからはすべて私の両親が手配をして、あっという間に私は彼と結婚をしました。

帝国では彼が国外旅行に来て出会った、彼の国では私が国外旅行に来ていて出会ったというシナリオが出来ていました。

両親にとって、身分違いの執事と過ちを犯した娘は必要なかったのです。

彼らは多額のお金を払って「他国の公爵に、順番は少し違ったけれどきちんと嫁いだ娘」として私を捨てました。


真実をマーガレットに伝えるべきか本当に悩みました。

けれどやはりあなたには伝えておかなければいけないと思いました。


ダニエル・シルバー公爵は、血の繋がりのないあなたを公爵家の子供として届出をしています。

これは犯罪なので、彼は決して誰にもそれを明かすことはないでしょう。

けれど、もしかしたらあなたに、あなただけにはとても酷い言葉でそれを伝えるかもしれません。

だからあなたには知っていてほしかったのです。

マーガレットは、私とマーカスが心から愛した大切な大切な娘であるということを。


私の両親は、あなたが産まれた時も、私が病気でもう長くないと伝えた時も、返事は一切ありませんでした。

きっと16歳のあなたにも一度も会ったことはないでしょう。

けれど、もしもあなたが、「聖女」だと公表されたなら、連絡をしてくるかもしれません。

その時にあなたはあなたの思うように行動してください。


私にはなんの力もなくて、あなたに公爵家の娘として生きていく選択肢しか与えられなくて本当にごめんなさい。

自分がもう長くは生きられないと知った時に、まだ幼いあなたをこの家にたった一人で残していく事実に絶望しました。

だから、あなたが帝国で伝説の「妖精の愛し子」だと知った時には本当に嬉しかった。


私があなたにしてあげられたことは、本当に少ないけれど、これから死ぬまで、もし叶うのならば死んでからもずっと私はマーガレットの幸せを祈り続けます。


妖精の愛し子だからではなく、私はマーガレットを愛しています。

どうかどうか幸せに生きてください。


母より


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 主人公の実の父母がお花畑で一番ひどい。 悲劇のヒロイン() [一言] 王子が猪過ぎるが根本は悪人ではないことや親世代の酷さのため、義妹を更生させて2人で幸せになって欲しい気もする。
[一言] 義父が「契約」を履行していないということはよくわかり申した(・ω・)
[気になる点] 主家の娘に手を出しちゃう専属執事にドン引き [一言] 真実の愛で生まれた娘が主人公だと知って色々共感出来なくなりました。 少なくとも義父は悪く思えないです。
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