10.妖精さん達からのプレゼント
お母さまが亡くなってから私のお誕生日を祝ってくれる人間は、一人もいなかった。
キース殿下からは、毎年花束が送られてきたけれど、それはシンシアの部屋に飾られたし、全く心がこもっていなかったことも今なら分かる。
16歳のお誕生日もまったく同じだった。
たまたまお休みの日だったけれど、公爵家の日常は普段と何も変わらなかった。
『マーガレットおめでとー』
『16歳だねー』
『王子からの花束は虫が湧くようにしておいた。』
私の誕生日を祝ってくれるのはいつも妖精さん達だけだわ。
『くっきー、しょこら、みんと。毎年ありがとう。
皆がいてくれるだけで、とっても幸せよ。』
私の言葉に妖精さん達は嬉しそうにパタパタ飛び回った。
『あのねー今年は特別なのー』
『マーガレットのママからの手紙があるのー』
『映像を見せてやろう』
みんとが言った瞬間、私の目の前にお母さまの姿が現れた。
「うそっ。」
それは、私の知っている最期の、お亡くなりになる前のお母さまだった。
思わずお母さまに触れようとした私の手は宙をきった。
映像のお母さまはキョロキョロと周りを見渡した後で話し始めた。
「妖精さん?きっといらっしゃるのよね?
いつもマーガレットを守ってくださって本当にありがとうございます。
あなた達を見ることも出来ない私ですが、1つだけお願いがございます。
どうかこの手紙を、マーガレットが16歳になったその時に、どうかマーガレットに渡して頂けないでしょうか?」
お母さまがそう言って頭を下げた時、くっきーが手紙を受け取った。妖精さん達が見えていないお母さまには手紙が突然消えたように見えたのだろう。とても驚いた顔をした。
「・・・ありがとうございます。
どうかこれからもマーガレットの側にいてあげてくださいませ。」
お母さまは、そう言って私の大好きだった優しい顔で微笑んだ。
映像はそこで終わってお母さまは消えてしまった。
『はいっお手紙ー』
『今日までずっと僕たちが持ってたのー』
『読んでる間は外で遊んでこよう』
妖精さん達は、私にお母さまからのお手紙を渡して、そのまま部屋から出ていった。
妖精さん達の優しさに感謝して、私は突然のお母さまからのお手紙を、困惑しながらもワクワクして読み始めた。
だけど、目の前に飛び込んできたその内容はあまりに衝撃的だった。
『あなたはダニエル・シルバー公爵の本当の娘ではありません。』