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密林の国 2


 集落から船着場までは教えられた通り、細く道がつけられていた。

 ナフラには感謝を述べるに留め、船着場で何かあれば旦那に託す、もしくはティエー側で役立ちそうなものを買って届けて貰おうというつもりでいる。


 再びのジャングル行を開始。

 まるで前衛絵画に迷い込んだかのようだ。

 複雑な曲線を描き絡み合う密林の木々には様々な原色の花が咲き乱れ果実がぶら下がる。

 クロムの知る森林とは違い、こう、何と言うかねっとりとした亜熱帯の空気感があった。

 

 木々の隙間から右手に見えるビシオリヴァを遠目に眺めながら歩いていくと、やがて遠く視界の先に船が動いているのが見えた。


 折角二度も三度も水を浴びたというのに体はすっかり汗だくだ。救いは貰った虫除けがパウダースプレーのようなサラサラとした肌触りをもたらしてくれている事だろうか。


 集落では特に貴重ではないと言っていたが、これはもしかしたら他国で相当人気商品になるのではないかと思っている。


 何せランダスターでこの世界の若い女子というものの観察は出来ているのだ。

 少し香りを付けて瓶詰めにでもして売り出せばこぞって買い求めると見て間違いない。


(とはいえ……そうか、フルクタス……いやしかしそんなに利益が見込めるとも限らないか?)


 フルクタスならば海運はお手の物。

 しかし集落全体に呼びかけるにしろ生産能力もはっきりしていない以上、どれ程商売としてやっていけるのかクロムには分からない。売り上げすら未知数の思いつきを新参者どころかほぼ部外者といえるクロムが持ちかけるのは厳しい。


 まあいずれ暇があればジョシュに任せてみればいいだろう。便利に考えすぎかもしれないがジョシュはそういった参謀的な能力に長けていると思えるし、そこを伸ばすいい特訓になるはずだ。


 少し上からものを考えすぎかもしれないが。



 川に浮かぶのはいつか歴史書で見たガレー船というものに酷似していた。

 水に浮かぶ小さな箱型の船。

 オールが突き出され規則的に動いている。


 出来があまり良くないせいか多分所々細かく穴が開いているカツラが、かえってそのおかげで蒸れないのが有り難い。


 眼鏡は湿気で曇ってしまうのでウリに作って貰った眼帯を付けている。

 多分サングラスだろうが眼帯だろうがきっとファンキーな出で立ちになってしまうので気にしていない。それに船着場は両国の人間が行き交うはずなので現地住民より都市部に住む人間の方が多いはずだ。


 それでも目立つものは目立つだろうがそこは仕方ない。いざという時に龍眼を晒してしまうリスクを考えれば遥かにマシ。


 そう考えて進むと密林がごっそり切り取られた大きな広い道に真横から出た。左手には道が長く続いているが、人の姿は見当たらない。


 右手には大きなガレー船と、作業する人間の姿がまばらに見える。ビシオリヴァを緩く堰き止めるように、上流には斜めに立派な防波堤のような柵が川から突き出ているのを確認できた。


 切り立った崖に挟まれた道の横合いから飛び出してきたような格好になるが、現地住民はこうして密林の中に沢山の道をつけているのだろう。


 船着場に向かうと、明らかに料金所と思われる小屋があったのでそちらに向かう。


「すいません、運賃っていくらですか」

「一人銅貨七枚だ」


 木札を受け取り桟橋に行く途中、船員と思われる男がいたので声をかける。


「あの、ナフラさんの旦那さんのリウイさんて方知りませんか」

「リウイは今向こうに渡ってるよ」


 乗客と思しき人影はまばらで、思っていたような賑わいには程遠い。

 てっきり港町や現実のフェリーターミナルらしさを想像していたが、そうではないようだ。


「出航時間って決まってますか」

「時間は決まってないな。客が一杯になればすぐ出るしそうじゃなきゃいつもは……一応四十五分くらいか? それくらいは待つな。まあそれもまちまちだ、今は客が少なくてな」


「じゃあ待ってれば出るんですね」

「そうなんだが……ちょっと分からんね。なんか向こう側でトラブルがあったみたいでな。リウイもそれでさっき向こうに渡ったとこだよ」


 先程見かけた船がそれだろう。

 もう少し早ければ乗り合わせる事ができたみたいだが仕方が無い。特にやる事もなく暇らしかったので、捕まえた男に色々聞いて待つ。


 話を聞いていると別の男がきた。


「行ってくるな」

「おお、なんかこの人リウイに用があるみたいでよ。木札も買ってるし余裕あるなら乗せてってやっちゃどうかと思うんだが」


 呼び止められた男は少しいぶかしむようにクロムの眼帯に目をやったが何も言わない。

 どうも向こう岸のトラブルの具合を聞きに、従業員用の小舟で数人渡るらしい。

 クロムも乗せて貰える事になった。

 これもナフラのおかげといえばそうだ。


 提案してくれた男に礼を言い、数人の男と共にボートに乗り込む。見ればガレー船の上には退屈そうに時間を潰している客の姿があった。


 桟橋を出ると流れの影響を受けるためか、ボートは上流に向けて斜めに舳先を向けた。男達が慣れた手付きで漕いでいく。




 ビシオリヴァは透き通っているとは言い難いが濁ってはいない。

 川底に冷えて固まった無数の溶岩流の破片があり、上流は特に岸までそうなっているからだ。


 ゲームのテキストでは休火山の最後の活動がこの大河の溝を大地に穿ち、海まで流れ込んだと説明されていた。

 

 川幅を見る限り相当な規模だったはずだ。

 今尚地下に流れるマグマはこの地に熱をもたらし、独特の生態系を築いている。


 噴火からしばらくはもしかしたらモンスターの楽園だったのかもしれないな、とふとそんな事を考えてみたりもする。火山から噴き上げられた溶岩魔人などが居たりしたのだろうか。もしそうだったとしたら冷えて川底に眠る石くれの一部になったのかもしれない。


「着いたらすぐ降りてくれな。リウイを探すんなら俺らと同じ格好の奴に聞いてくれ、ちとこっちは忙しいんでな、すまんが」

「ありがとうございます」


 シーバルの口調は素に戻した。

 いかにもという演技は続けた方がいいのかもしれないが、どうせどこかでボロが出るだろう。その時変な印象を与えれば余計面倒な事にもなりかねないとやめる事にした。


 ティエー側が近付くと、言われた通り服装の違いが分かる。

 ナムヴィエの男達は両肩に袖のある服を着ていたが、肩から斜めに原始人のような服装をした男達が動き回っている。


 まあ格好についてカツラに眼帯のクロムが何か言う権利はない。

 肩に担いだ背負い袋を引き締め、ボートから桟橋に飛び移るとリウイを探す事にした。


「すみません、リウイさんを探してるんですが」

「あん? おおい、リウイ!」


 一人の男の呼びかけに動き回る男達の向こう側から細身で締まった短髪の男がやってくる。


「どした!」

「この人がお前を探してるってよ」

「ん?」


 好青年、という感じがする。

 ナフラも若かったがリウイもまだ若いのだろう、浅黒い顔に透き通った目が爽やかさを感じさせる。名乗り、どういう経緯でリウイを知ったのか、ナフラに世話になった感謝を伝える。


「気にすんなよ。わざわざ礼を言いに来てくれるなんて律儀だな、あんた」

「何かトラブルがあったって聞きましたけど」

「ああ、それがな」


 少し前にティエーから運ばれてくる大量の塩を積んだ荷駄が襲われ盗難にあったらしい。

 実はちょくちょく塩が盗難にあうという事件がここ最近起きていたらしく、それがナムヴィエ側の仕業ではないかと疑われていたそうだ。


 ナムヴィエとティエーは交易で互いに必要な物をやり取りしているが、塩はティエー側の最も大きな交易品となっている。


「ナムヴィエは塩を作ってないんですか」

「そういう訳じゃないんだがティエーで採れる岩塩はこっちと違うからな。海流の関係でこっちは海から採り辛いし、人気商品なんだ」


 ジョシュ達も言っていた潮流の危険性は、海底から湧く温水のせいという事だそうだ。

 岸付近に強く対流が起き、引き波も寄せ波も強く危険であまり海には近づけないらしい。


 地図で地形を見れば分かるが、ナムヴィエはティエーの領土程に海に面していない。

 北側は別の国の領土で塞がれている。


「ティエー側の盗難でナムヴィエが疑われるんですか。運ぶには船を使うんでしょう?」

「さあな。盗人の考える事なんか俺には分からないよ。ティエーの連中の考えもな」


 確かにクロムが行きずりの盗難事件を考えた所で全くの取り越し苦労なだけだ。

 それにあまり引き止めている訳にも行かない。

 人の良いリウイはクロムの質問に答えてくれているが、その顔は時折あちこちを見て時間を気にしているように見える。


 邪魔をしては本末転倒。

 再び礼を言いリウイと別れる。

 塩ね、でもそれを買って贈った所でどうなんだろうと疑問に思うが子供達にお菓子なども買えば集落全体で喜んでくれるかもしれない。


 ジョシュ達と落ち合う予定の港町、ティエーに根付くフルクタスの人間ならナムヴィエの人間が喜ぶものも知っているかもしれないな、と思いそこで贈り物でも買い求めようと決めた。




==============================




 一旦ティエーの内部に向かうフリをしてしばらく歩いた後、密林の中に入り込む。

 長老から教えて貰ったフロッグマンの住みかは大分上流の方になる。


 海に住む人魚族の長老が何故そんな場所に住むフロッグマンの住みかを知っているのか、フロッグマンは海底の人魚族の宝をどうやって盗んだのかなど疑問は尽きないが、とにかく行って奪い返すだけだ。


 ここから先はモンスターのテリトリーになっているが、すぐに出会うという事はないだろう。

 ゲームのように――といってもゲームに明確な境など無かったが――線でここからここまでは人間、モンスターと区切られている訳ではないので睨み合う空白地帯が存在する。


 勿論モンスターがそこに迷い込む事が無いでもない訳だが、船着場周辺は定期的に駆除がなされている事だろう。


 密林でうっかり迷わないように川沿いまで移動してから上流へ向かっていく。



 装備品は色々考えてみたが鎧は無しだ。

 この暑さでは体力がきつい。

 樹上からの不意打ちや視認しにくい木々の陰からの素早い襲撃に備え、脚力大上昇の<虎柄の緋色靴(タイガーブーツ)>、暑さに対しては気休めにしかならないだろうが着心地も良かった<クリムゾンベスト>を選択する。


  虎柄の緋色靴(タイガーブーツ)はモンク系、そうでなくとも格闘スキルで戦う育成をしていたなら間違いなく最終足装備になる。

 クリムゾンベストは炎属性無効などを備えた軽戦士系の最終装備候補にもなる優秀な体装備だ。

 

 後はいつも通り浮遊樹のマントを着ける。

 木々に邪魔され飛び回る事は出来ないが、素早さ上昇につながる。


 これまで数え切れないチュートリアルバトルをこなしてきているクロムだったが、一体自分の現在のジョブは何になっているのだろうとずっと疑問に思ってきた。


 最初の内は竜人種なのだろうと思い込んで疑問に思わなかったが、クロムがベースとなったのなら育成用のジョブが付いていてもいいはずだ。竜人種にはジョブ表示が無い。


 ステータス画面でそこだけ空白になっているのを今ではいぶかしんでいる。

 特にこうして訳の分からないコンセプトの装備をした時程、考えても無意味だと割り切ったはずの疑問が浮かんできてしまう。


 尤もこの装備にジョシュに渡したマスターベルトでも着ければそれなりに体裁は整いはする。


(魔術師系……なんだろうか)


 どうにもそうとも思えない。

 回復と攻撃、メインの二つが封じられているせいでそう思ってしまうだけかもしれないが、特殊系統のゴエティックになるための必要スキルすら満たせる気がしない。そもそもその系統の初期スキル構成とは違う。攻撃回復両系統に関しては言わずもがな。


 やはり竜人種がメインでクロムがベースとなったのは不具合のようなものと考える他無いが、シーバルとしてやっていくための最適な立ち位置を考えると、シレーナの言うように中途半端な戦士兼補助魔術師という結論になってしまった。


 装備品の補正が無ければ更に悪い。

 中位補助魔法を使えるだけのノンスキルプレーヤーでしか無かっただろう。

 一応無詠唱で連射が可能な事と、インベントリからアイテムを自在に出し入れ出来るという異能のおかげである程度はやれるだろうが。


 この世界がジョブというステータス上の特性を受けいれていない可能性もある。


 相変わらずステータスの伸びも悪い。

 きっとこの世界では誰しもそうなのだと思いはするが、スキルを獲得しないクロムは致命的だ。


 まあクロムが勝手にこの世界の住人はスキルの恩恵を受けていると推理しているだけなので確かな事ではないのだが、それにしたってクロムが貧弱な事に変わりはない。


 もしかしたらハードモードを望んだせいで装備品とインベントリでバランスを取れよという調整なのかもしれないが、育成マニアにしてみたら不満が募るばかりだ。


(ディーの力を自在に使えていれば飽きたかもしれないし、そういう配慮かもしれないな)


 こうしていつも無理矢理自分を納得させるしかないのでそうしている。


 気付けばエンカウントする事も無く大分来た。

 このエリアのモンスターはチュートリアルバトルでしか経験していないので一度は経験してみるかと思いエンカウント逃れのアクセサリを外しているが、川沿いはノーエンカエリアなのか。


 もしくはこれもイベント。

 装備品と変な見た目で警戒されている。


 後者は無いか、と笑う。

 モンスターのエサでも使ってみれば分かるかもしれないが、いたずらに騒ぎを起こすのもためらわれた。




 ビシオリヴァの水音を聞きながら進む。

 下流は岸が土だったが、この辺りまでくると黒い石が大分目立つようになってきた。

 川の水もかなり澄んで見える。おそらく川底全体が冷えた溶岩で形成されているせいだろう。


 水源となっている上流は土より岩の方が多いに違いない。

 下流域が僅かに濁っているのは川底が常に攪拌されているせいと推理してみる。


 教えられたポイントはかなり近い。

 即席の地図にマーキングされた印をあらかじめ縮尺を計って歩行時間を計算しておいた。

 一定の歩調を意識していたので間違いはないはずだが――。


 と。

 色々と考えを巡らせていたクロムの思考が彼方へと一気に全て消し飛ぶ。


 唐突に目が合った。

 川から這い上がってきた直立したカエル。

 やれやれ、といった感じでビタビタと石の部分を歩いていたが、クロムの気配に気付いたのかギョッとしたようにこちらを振り仰いだ。


「ゲ……ゲロゲロ」


 挨拶だろうか?

 モンスターなのか亜人なのか分からない。

 しかし亜人は言語を持つはずだ。


「げろげろ」


 とりあえず同じように言ってみたが、それを聞くとカエルは猛ダッシュで走り始めた。

 もしかしたら彼らの言葉でとんでもない事を口走ったのかもしれない。こちらも走って追う。


 走り方はカエルのイメージを完全に覆す人間のそれと変わらない。両手を振って走っている。


 が、遅い。

 装備を外しても楽々追いつくだろう。

 追いついた所でコミュニケーションが取れそうもないな、と思ったのでそのまま泳がせる。


 どうもこの辺は言われているようなモンスターの領域では無いのかもしれない。

 見るからに弱そうなカエルが無警戒で走っているのだからさもありなん。


 極彩色の大きな蝶が二匹舞っている。

 カエルはそれを割るように駆け抜ける。


 後を追っていくと、やがて前方に沼が見えた。

 が、沼に飛び込むでもなく迂回して走っていく。沼周辺の木はほぼ全て、幹に大きなうろが開いている。直感的にそれが宿ではないかと思ったが、カエルは沼から少しだけ離れた場所でいきなり姿を消した。


「ふうーっ、あっちい」


 走ったせいで汗をかいた。

 カエルが姿を消した場所。

 といってもその姿が地面に吸い込まれるように下に落ちていったのははっきり見えていたので慌てたりはしない。


 やはり。

 ポッカリと穴が開いている。


 幸い奈落のような縦穴ではなく、ランタンで照らすと人間二人分程の高さから横穴に変化していた。これなら入っていける。


 マントの力でフワリと落下する。

 少し狭いが僅かにかがむだけで歩いていく事も出来る高さもあった。降り立った先は一本道なので迷わず追いかけられるだろう。


 ただもしも今地盤が崩落でもしたらディーの力を使えず危険だな、と思い<ノームの腕輪>を装備する。土の精霊であるノームを呼び出し土属性魔法を行使する精霊魔法の廉価版だが、イベントアイテムであり土を掘り進んで貰い道を作るという、この状況と似たようなシチュエーションで使用する。


 アイテム使用。

 何か手順がある訳ではない。

 ステータス画面から選択するだけだ。


 コマンドを選択すると滲み出すように小さなノームがランタンの明かりの中に出現した。


「ほいこんにちは」

「ども」

「魔法かね」


 そうなのだ。

 チュートリアルバトルで試してみたがこの腕輪、バトルアイテムとしては使えなさが半端ではない。

 ノームの腕輪に限らず四精霊の腕輪は全てイベントアイテムなのだが、戦闘中に使用するとこうしていちいち確認してくる。勿論この世界になってからの妙な変更点。


 しかも最初の挨拶に答えないと一切動かない。

 まあ意思疎通は可能だと知っているので呼び出した訳だが、崩落を予防してくれなどという高度な要求が通るかどうか。


「攻撃魔法はいらないんだけど。この通路が崩れた時にどうにか出来ないかなと思って」

「まーワシはお前さんがそれ着けてる限り一緒だからね、崩れたら掘るよ」

「あ、助かるわ」


 めちゃくちゃ有能だった。


 安心して走り始めるが、ノームは一定の距離で固定されたように浮かびながら真横についてくる。ゲームデザインとしては精霊魔法はこうして召喚魔法に近い、術者に協力する存在として設定されていたので納得ではあるがやたらファンタジー色が強い。


 既に思考レベルが低い事は確認しているが、リアリティを求めたはずの世界でこうして精霊がそばに居るというのは何とも唐突な違和感を感じてしまう。ただしMPは随時減っていく。そこはドライだ。


 幸いすぐに広い場所に出たので安心した。

 地底湖とでも言うべきか。地上で地面となる部分、つまり天井部分は岩盤になっている。

 湖の周囲も同様で、黒くかすかにランタンの光を反射し照り返していた。


 多分溶岩が固まってできた空洞。

 その上に灰か土が降り積もって地上部分を覆い隠しているのだと推測できる。


「ありがとな」

「んじゃ」


 腕輪を外す。

 暗闇に浮かぶいくつもの瞳。


 おそらく大量のカエルが息を殺してこちらを窺っていると思われるが、あまりいい気分はしない。


「おい、フロッグマン」


 呼びかけてみたが返事はない。

 ゲロゲロ鳴かれてもあれだが。


 巻貝の笛とやらをどうやって取り戻すか、そもそもここにあるのか確かめるにはどうすればいいか考える。


 ひとまずこの地底湖を隅々まで歩き回ってみるしかないだろう。襲いかかってくるようなら返り討ちにするだけだ。


 そう思いランタンを掲げ歩き出すと、プオォ~と間抜けな音が響き渡った。

 

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