海の国 2
ピクピクと浮きが動く。
教えられた通り狙い済まして竿を勢い良く持ち上げてみるが、空虚な手応えと共に針が宙に飛び出してくるだけ。
もう何回繰り返してもこれだけだ。
「あはは、下っ手くそー」
「やった事ないんだからしょうがないだろ?」
これはクロムの嘘だ。
やった事はある。
ただしリールやロッドといった遥かに高性能な機能と名称を備えた道具でだが。
島のいい釣りスポットだとルカに案内され、ガルテン王国とレバイド海賊団の摩擦できな臭い匂いが漂っている中、我関せずとばかりにのんびり釣りに興じたりしている。
「別にしばらく居ても構わないけどね」
「まさかお目当てはルカじゃねえだろうな?」
「ハハハ、あの娘が気に入ったのかい。なら気張って口説いてみな」
随分勝手な事を言われたが、滞在を許されたのはクロムにとっては有り難かった。
ゲームに船と船がぶつかり合う海戦など無かったし、その手のジャンルは割りと好きだった。
できれば実際に経験してみたい。
その程度の軽い気持ちでしかないが、知らん顔して立ち去る後ろめたさも多少ある。
まあお目当ては言いすぎだが、黒髪黒目の南国美少女といったルカは確かに可愛い。
ビンスの言う事も否定はしない。
残って良かった大きな理由になっている。
こんな風に毎日退屈しないよう相手をしてくれるなど思ってはいなかったが。
「陸の男はダメですねえ」
台詞にしては嬉しそうな顔をしながらルカがもう一回教えるね、と手を出してくる。
クロムの手に竿を握らせながら背後から腕を回し、こうやって投げるの、とレッスンしてくる。
「落とす場所が大事なの」
クロムの肩の辺りから顔をのぞかせ、ドヤ顔全開で見上げてくる。教えられるのが嬉しくてたまらないといった様子だ。
一匹くらいは釣りたいと思っていたクロムだったが、ぽんぽんと釣り上げるルカとのあまりの違いに匙を投げ、これはスキルの有無のせいと言い訳してあきらめた。
またある日は島に生えている美味しい果物があるから取りにいこう、とジャングル探検をする。
「この季節に実がなるって珍しいな」
「でしょ。食べた事あるかなあ」
クロムは自前のローブ姿、ルカはツナギのような上下を着こんできている。
ルカは急勾配の斜面を猿のように、密生した木の幹を次々に掴んでグイグイと登って行く。
情けないがクロムはそんな訳にはいかない。
くっ、と体を持ち上げては足場を探して踏ん張り、捕まる場所を探してはえいやと手を伸ばし、鈍重に登って行く。
「はい」
ニコニコと笑いながら左手で木を掴み、体を伸ばして右手を差し出してくれる。
だがその小さく華奢な体で、きつい勾配の中クロムの体重を支えられるとは思えない。
「いいよ。怪我するって」
「ちょっとだけ引っ張るからこっちに飛び込んでここの木を掴んで」
このフィールドにおいてはルカの方が上位者である。グズグズされても迷惑だろうなと、言葉に従いクロムは目一杯差し出されたその手を握り、足場の木の幹を蹴ってルカごと抱きかかえるように次の木に飛びつく。
身をすくめたルカが腕の中でもぞもぞと動き、次の木へ飛び移らんと抜け出そうとする。
「あとどれくらい?」
「もうすぐそこだよ。ここ登った所」
クロムはわずかに汗ばんだ体で息をつく。
そんなクロムに構わずルカはするすると身軽に斜面を蹴り、木をキャッチしてはグイグイ上へ上へと進んでいった。
登山とかフリークライミングのスキル付いてんのか、とクロムはよじよじと這うように登っていく。
「あったあった。あそこ、ほら」
ルカが指差す樹上を見上げるが、クロムには何かがなっているようには見えない。
「どれ?」
「ほら、あそこ」
よーく見ると、緑が多すぎて見辛かったが確かに丸いものがいくつも固まって見えた。
だが随分高い場所にあり、木も登るには頼りない細さしかない。
「いつもどうやって取ってるの?」
「登るか長い棒を探すかしてる。大人はわざわざ取りにこないからそういう道具無いんだ」
仕方ないので棒を探す。
しかしそうそう都合の良い適度な強度と長さを持つ木など簡単には見つからず探し回る。
ルカに付き合うと決めていたクロムはインベントリを使おうとは考えていない。
ゆっくり、彼女の日常を同じように経験する。
必要な時以外はクロムとして不自由を楽しもうと、最近そんな境地になっていた。
「あ、下がって下がって!」
不意にルカが飛びついてきて、クロムを一生懸命引っ張る。
蛇、蛇、と言う言葉にルカを庇うように下がりながらその姿を見つけ、様子を見る。
「蛇とかいるの?」
「ううん、いつもはまだ出ないはずなんだけど」
確かに季節的にちょっと早い気はする。
シュルシュルと地面を這う蛇を刺激しないよう固まっていたが、不意に蛇が鎌首をもたげこちらをクワッと威嚇した。
「シャアアアアッ」
「え、ちょ」
違和感を感じ、閲覧を使う。
ヒットした。
昏倒させる蛇というモンスター。
雑魚だが毒の上位の猛毒を与えてくる。
「ルカ、動くな!」
右手で横にいたルカの頭を抱え込み、自分の胸に押し付けるようにきつくホールドする。
半身になるとわざと左手を前に突き出し、蛇を挑発するようにヒラヒラと動かした。
赤銅色の細長い体がビュンと宙を飛び、狙い通りクロムの左手に噛み付き巻きついてきた。
すぐさまディーへと覚醒する。
鋭い痛みがスッと消え、万力のように締め上げられていた左手首の圧力が消える。食い込んでいた牙が勢い良く弾き出されるのを感じた。
人差し指と中指で喉元を挟み、竜眼をギョロギョロと動かし他に脅威が無いか探す。
右手はルカを押し潰してしまわないよう力を即座に緩めている。が、すぐにミスに気付く。
(しまった……!)
竜人の肉体に触れさせてしまった。
鋼鉄のように硬く変化したはずだ。
視界を奪おうと咄嗟に動いたが。
考えても後の祭りだ。
パッシブスキルの<看破>やその他が働いているはずだがそれでも意識にひっかかるものはない。暴走事件の時のように狂っているなら別だろうが、他にいたとしても<威圧>のスキルがこの程度の雑魚モンスターなら追い払っているだろう。
<威圧>のスキルは成長過程で習得した低レベルスキルで、せいぜい中盤以前のモンスターぐらいにしか効果が無いが、エンカウントしたターンに怯えさせる効果を持っている。
とりあえずすぐの危険はもう無いと判断し、キュッと蛇の首を絞めたまま待つ。
グネグネと抵抗していたが、徐々に力を失い、ダラリと垂れ下がった。
ザワザワと髪が元に戻っていく。
「ルカ、ごめん、苦しかっただろ」
「ううん」
自由になったルカがクロムの左手で息絶えた蛇を確認し、安堵した顔で息を吐く。
――異変に気付かれたか。
一瞬身構える。
しかしルカは何も言わない。
気付かれなかったかとホッとする。
だがルカはクロムの右手に両手を置いたまま、じっと覗き込むように見上げ続けている。
何かの異変は感じ取ったが言い出せないでいるだけなのかもしれない。
どうする、と思ってチラリと見ると、ルカが口を閉じたまま目だけで笑った。
爪先立ちになると、クロムの右手に両手をついたまま背伸びして右頬に顔を近づけてきた。
一瞬だがそれが意味するものを理解する。
思わず何かを期待して身を屈めてしまった。
が、その期待とは裏腹に、息が掛かる程近付いたルカはたっぷりと間を取った後耳元で囁いた。
「汗臭い」
ピシッと固まったクロムをよそにルカはペロッと舌を出し、イタズラっぽくクスクス笑った。
相手は現実では決して出会う事の無いような、目の覚めるような褐色美少女だ。
あんなアクションをされては思わず反応してしまうのも仕方が無いというもの。
しかしこんな状況で少女を相手に思わずスケベ心を出してしまった恥ずかしさから、赤くなっていく顔を見られないようにクロムは顔を背け、棒を探し始めるフリをして誤魔化す事にした。
==============================
海賊団の夕食。
ほとんどのレバイド海賊団員を久方ぶりに迎えた本拠地の賑わいは凄まじい。
洞窟の水路奥の岸から始まり、更に奥の島内部の要塞部分まで長く料理する姿が延々と続く。
厨房だけでは追いつかないらしい。
焚き火の上で丸々と太った豚やポントが焼かれ、大鍋でグツグツとシチューが煮込まれる。
洞窟全体が何時間も食欲をそそる香りで満たされ、完全に夜を迎えようやく宴が始まる。
「魚ってあんま食べないんですね」
「おいおい、おめえあれだろ。俺達を漁師か何かだと思ってるだろ」
周囲の海賊達が一斉に大声で笑う。
ある意味間違ってねえんじゃねえか、などと肩を叩きあいまた大声でがなる。
クロムのこういうずれた所は男達にとって大いにウケるようで、毎夜共に焚き火を囲んだ男達は愉快そうにしながら酒を勧めてくる。
そこまで強くもないクロムはその酒の強さに辟易し、今ではきっぱり断っている。
初日はひどい目にあった。
しかしそれでも勧めてくるのはクロムの迷惑そうな顔を面白がっているからだろう。
「すっかり馴染んじまったね、アンタ。なんならこのままウチに入るかい」
「姐さん、どうぞ」
エバーロッテが腕組みして背後に立っていた。海賊達が一斉に座を作る。
「アンタにも一応教えとこうかと思ってね。もう色々知っちまった事だし。フルクタスの意思は確認できた。ガルテンの出方次第じゃ一戦交える」
「そうなんですか」
「アンタそうなったらどうする? もう向こうには戻れなくなるんじゃないかい?」
そこが微妙な所だ。
生き残りの騎士からクロム・ディーの情報は伝わっているだろう。
ただ乗り合わせただけという発言に、デイポートの捜査も行っているとすれば酒場の証言などからそれは事実であると認められるかもしれない。
だが悪意ある見方をされればエバーロッテが強くかばった事に加え、騎士への反抗的な態度が最悪の結果を招いた一因となったと、有罪である、と捉えられる可能性も高い。
「まあ気にしなくていいですよ。そうなったらそうなったでどうとでもなりますし」
「クロム、アンタそういうとこは妙に腹が据わってるよね。食えないガキだよ」
アダムの事がどう出るか。
それも分からない。
別にアダムにクロムを庇う理由などない。デルスタットの武器屋で会話した事があるというだけだ。
ただし、万が一クロムの想像通りになるのならアダムが味方につく可能性もある。
あの時互いに名乗った訳ではない。
マリーのクロムと呼ぶ声を聞いていたかもしれないし聞いていなかったかもしれない。
しかしどちらにせよアダムは銀髪のランダスターの学生という情報を得ている。
簡単にクロムの割り出しには成功しているだろう。その部分でアダムはクロムを知っている。
だがアダムはクロムに自分の名前も騎士である事も知られるはずがないのだ。
武器屋で少し会話しただけの学生が、事件の場でアダムの名前に加えて緑竜騎士団軽騎兵隊長という肩書きまではっきり口にしたと伝えられた時、アダムがそれをどう考えるか。
何故という疑問は持つだろう。
まさか調べたのかと。
最初から知っていたと考えるかもしれない。
だがもしもアークに執着していたのなら――。
クロムとアークに何かしらの関係性を見出す可能性はある。そうなった時にどう出るか。
「あー、姐さん!」
「なんだいルカ。クロムに会いに来たのかい」
男達がニヤニヤする。
「これ、取ってきたの帰ってから食べようって決めてたので、渡しにきたんです」
「ああ、キウイじゃないか。そんな時期だったね」
ルカが布に包んで持ってきたのはまさしくキウイだった。キウイのなる時期など知らなかったので収獲した時驚いたものだ。
大量に取ってきたが行き渡る程ではない。
ひとまずルカはその場の人間に配って回る。
歯で皮を食いちぎり粗野な食べ方をする中で、そういえばとルカが告げ口した。
「蛇が出たんですけどね。クロムが退治してくれたんですけど。私何かに使えるんじゃないかと思って持って帰ってきたんです」
ええ、とクロムが思う中、ルカは蛇は色々使い道があるから、とその死体を持って帰っていた。
「酒に入れてもいいし焼いて食ってもいいよな」
「あー、蛇酒か、いいなあ」
「あ、でもお父さんがそれモンスターだって」
「何だって!?」
全員が仰天する。
しまった、とクロムは顔をしかめる。
知っている人間がいたとは。
「チッ。アンタら聞いたね。明日人数出して島を洗いな。どっから湧いて出たんだか」
エバーロッテも海賊達も少し真剣な顔になっている。クロムは島のモンスターなど一掃していると聞いていたので、あの蛇はイベントとして自分が呼び寄せたのではないかと疑っていたが。
無駄な労力を払わせる事になるかもしれない。
「ルカ、それが終わるまで出歩くんじゃないよ」
「はいっ」
「にしてもクロム、態度だけかと思ったらやるじゃないか。ウチの人間を助けてくれて礼を言うよ」
「いや、まあ蛇だったんで」
雑魚でした、と心の中で報告する。
「おう、聞かせてくれや、酒の肴ができたぜ」
「はっはー、武勇伝たあ景気がいいやね」
「いやー、どうですかね」
「ルカ、見てたのか」
「ううん、私が見たのはクロムが握り殺した後」
「はあ!?」
「おいおい、お前さんすげえじゃねえか。モンスターだったんだろ? その蛇」
「それもね、あっという間だったよ」
「いやいや、そんなんじゃないです」
ルカ、お口チャックだ。
しかしその意図は伝わらない。
「だって私、抱かれてたのほんのちょっとの間だけだったと思うし……」
シン。
その言葉に一瞬場が静まり返る。
ルカ、言葉使いには気を付けよう。
「ルカが危ないと思ったんでとっさに庇ってですね。確かにちょっとだけだったよ、ルカ」
「だよね」
「……おお、そうだよな」
「うんまあ、そりゃそうだ」
ガラの悪い海賊はすぐに品の無い想像をしてしまうのだろう。クロムに言えた義理はないが。
エバーロッテがやれやれと、場を取り繕う男達に呆れたように首を振る。
「でもよ、おめえそんな体勢でやったのか?」
「握り殺すって……モンスターをか?」
ルカは本当に余計な情報を撒き散らす。
「ああ、俺魔術師なんです。強化魔法で」
「えっ、魔法……?」
確かにルカは詠唱など聞いていない。
しかし適当に押し切れるだろう。
「まあこう見えても多少優秀な成績でさ、うーんルカには分からなかったかも、はは」
「アンタ冒険者とは聞いてたけど魔術師だったのかい。へえ、そうかい」
「いや、見えませんか?」
「ま、そう言われりゃそうだね」
「ほぉーん、てえしたもんだ」
「俺らはからっきしだからなあ」
ガラにもなく優秀だからなどと自分で言ってしまったが、幸いルカは小首を傾げただけで黙ってくれた。ただエバーロッテが覗きこんできた。
「ふーん、魔法ねえ……」
「……何です?」
ゲームのエバーロッテは魔法は使わない。
多種のアクティブスキルで攻撃する。
「もしあれだったらアンタ協力しないかい? 矢面に立たなくていいから。どんなのが使える?」
「えっ、あー、回復魔法以外なら……といっても補助魔術師なんですけど」
思わぬチャンスが巡ってきた。
流石に戦に連れていってくれと頼むのはあつかましいし、許して貰えないと思っていた。
自分から魔法で支援するなどとは責任を負うので言い出せなかったのだ。
「どれくらいやる?」
「どれくらい、ですか」
これは鬱陶しい質問がきたものだ。
例えばこういう時にこう、こういう時にこれくらい、と口で説明し辛いのが補助魔法だ。
しかも自分からこんな事までできるんですよとはなかなか言いにくい。
「攻撃魔法って事ならまあ……ま多分その辺の魔術師くらいだと思いますけど」
「……攻撃魔法か……いや、それはいい。補助魔法の方を知りたい」
面倒くさい方に切り返しやがった。
「いやちょっと説明し辛いですね。あれだったら掛けてみましょうか? それで判断して下さい」
おおー、と海賊達が声を上げる。
まるっきり大道芸を前に盛り上がる観客だ。
「アタシがかい? なんだか嫌だねえ」
そうだな、じゃあ。
「ルカ、エバーロッテさんと腕相撲してみ」
「えっ?」
「エバーロッテさん、自信は?」
「おお、いいぞ!」
「こいつぁ面白そうだ!」
「おーい、みんな来てみろ!」
一気に男達が盛り上がる。
あっという間に机が運ばれ、リングよろしく男達の輪が出来上がってしまった。
「こりゃあ断れないねえ」
「エバーロッテさん、ルカにどの程度の強化を掛けるか決めたいんで教えてくれません? 腕相撲の腕力がどれくらいか」
スキルの恩恵を受けないのであればエバーロッテが怪我する怖れもある。
「ええっとルカ、ちょっときて」
まずルカを立たせ、腕相撲を挑む。
よーし、と腕まくりしたルカと組むが、やはりというかあっさりコテッと勝負が決まる。
「そんならアタシともやろう。そしたら分かるだろ」
「まあ、そうですね」
ニヤリとエバーロッテが笑う。
「アンタに恥かかせちまうかもしれないけどね」
これは真っ当な勝負と見たのか、髭面のずんぐりむっくりした男が進み出てくるとレフェリーを務める。エメリア・エバーロッテ! などと口上まで言い出す始末。
男達はやんやの喝采だ。
だがエバーロッテは軽く蹴飛ばす。
「さっさとしな」
「あ、こりゃ。じゃ……レディ、ゴー!」
ディーの知るエバーロッテのステータスなら思い切りやってもいいはずだ。今とは若干違うかもしれないが、怪我などしないだろう。
だが。
怪我どころではなかった。
人間の手とは思えない。
間違っても口には出せないが……ゴリラだ。
「うっ、ぐぐぐ……」
「ほらほら力入れなよ。もう始まってるんだろ?」
「いけ小僧! 根性見せろ!」
「姐さんをぶっ倒せ!」
外野が騒ぐがこちらは正真正銘全力全開。
決してひ弱な肉体ではない。
腐ってもランダスターで鍛えあげた、若者の頑健な肉体をしているはずなのに。
「出直しな、ぼ・う・や」
余裕たっぷりに顔を近づけそう囁くと、そのままゆっくりと優しくフォールダウンされた。
「勝者姐さん!」
うおー、と喝采が送られる。
軽く手を上げたエバーロッテは余裕たっぷりに首をコキッコキッと鳴らしたりなどしている。
「マジかよ……」
「小僧、姐さんは強えだろ!」
「まあよくやったぜ!」
ちょっとシャレになっていない。
正直強すぎて測れなかった。
これはルカが怪我をするかもしれん。
「ルカ、ちょっと」
「なになに」
「あのさ、絶対無理はしないで。多分最初は手加減してくれるはずだから、徐々に力入れて」
「うん、分かった」
ルカとエバーロッテが向かい合った所で詠唱を開始する。遠慮は要らない。
もう加減が分からないので攻撃強化Ⅴだ。
ちなみに攻撃強化や速度強化は、レベルの数字に十を掛けた数値がステータスに上乗せされると思って貰えればいい。
もしもステータスがカンストしているなら、最高ランクのレベルⅨで一割弱の上乗せという訳だ。
勿論ディーでさえカンストしているステータスなど無いので例えにすぎないが。
単純にルカに掛ける強化は腕力プラス五十で、あくまで攻撃力換算なので一概に成人男性何人分とかは言えないが、ゲームで出てくる敵ステータスで言えば初期の大型動物系タイプのモンスターに匹敵する。
まあ攻撃力と腕力はイコールでは無いのであれだが……とにかく素手ならゴリラは凌駕する。
うん、お似合いかな……。




