旅立ち 2
小さなアパートの一室。
卒業後エファとマリー二人で借りた部屋。
バイトを掛け持ちしながら漫然と生活費を拠出するだけの生活を送ってきた。
大して生活用品が揃っている訳でもない飾り気の無い部屋だったが、すっかり片付けも掃除も終わり綺麗さっぱり小さな荷物だけがまとめられている。
「次はもう少し広いお部屋に住めるといいですわね。きっと不便になりますわ」
「そうだねえ。これから寒くなるし寝室は一緒のままでもいいけど、アイテムとかで手狭になるよね」
ガルテン王国から海を渡った別大陸、大国モルデニアス神皇国。そこに行く事に決めた。
二人にとっても意外な、考えてもいなかった選択肢だ。世界の中心ともいえる。
不安もあるが高揚も覚える。
何故そんな突拍子も無い選択をしたかというとこれには色々と理由があるのだが。
バルドークラスでパーティーを結成するというのは二人にとっても望む話だった。
だが現実を見れば足並みは揃わず、それならば全員を待とうと思うももしかしたら一年待つ事にもなりかねず、進んでいく時間にただ足踏みをしているのは耐え切れなくなった。
冒険者として二人で活動もできない。
バイトをしながら鍛錬に精を出すのであればまだ学校に居た方が良かった。
頼みのクロムはこの間の話を聞いた事で自分達とは違う道を行くつもりなのだと知った。
「良い方だといいですわね」
「そうね」
相談したのはバルドーだ。
エファにとっては剣の師ともいえる。
冒険者として更なる高みに登るにはどうすればいいかという二人の相談に、バルドーは何度も親身になって付き合ってくれ、出した結論が高位冒険者への紹介というものだった。
バルドーの元パーティーメンバーでもある知人への紹介だ。そこに身を寄せる事になった。
「マリートさん」
「なに?」
「着いていっても構いませんのよ?」
ペタリと床に座ったエファは親友の顔をじっと見つめる。力なく首を振ったマリーは無言で微笑む。
「足手まといにはなりたくないの。もう決めたの」
そっとマリーに手を伸ばしたエファは幼い子供をあやすようにその髪を撫でる。
「……お強いですわね」
きっと別の良い人が見つかる、などと些細な気休めは言えない。マリーはむしろクロムと一緒に居るために離れる決断をしたのだから。
盗み聞きしたクロムの話。
勇者と魔王の世界の再臨。
二人はそれがクロムの妄想だなどとは一切疑わず、すっかり信じ込んでいた。
勿論それはまさしく予言と言っていい程に確実に用意されているシナリオなのだが。
過去の文献を漁り、クロムの死んだ両親どうこうという断片から導き出した結論は、クロムが何らかの形でその勇者に関わる宿命を背負っているのではないかというもの。
異常な魔法への才も納得だ。
もしかしたらクロム自身が実はその勇者なのではないかという話さえした。
図らずもこの時点でこの世界の真実に辿り着いたのはこの二人だけといえよう。
確かにその方程式は勘違いや思い込みの積み重ねにすぎない。彼女達が鋭いという訳でもない。単なる偶然といっていい。
一つ間違えば、マリーの気持ち次第ではクロムとの関係は絶たれ、ただのクラスメイトとしてデルスタットで活動する普通の冒険者となっていた。
だが、クロムがヒロインと別れる選択をしてもそうは問屋が卸さないらしい。二人にもクロムにもプラチナにも分かっていないだけで、世界のシナリオはまだマリーをヒロインの座から降ろすつもりはないようだ。
二人はこうして、きたる混沌の世界に立ち向かうクロムの力となるべく自らを高める選択をした。
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「せーのっ」
綺麗なハーモニーとシンクロした動き。
腕組みしてそれを見つめる覆面をやめたバッケルとシレーナの真剣な眼差し。
外部から呪歌の知識を持つ人間も招き、支援魔法科のアイドルレッスンは実践を見据えた本格的なものとなっている。
ステラやスペイドの詠唱と歌の融合実験を繰り返し、踊りで魔術儀式の紋様を描くなど、発案自体はクロムだが今やその手を離れ、クロムも驚く程に高度で緻密なメニューが組まれていた。
勝手に進化している。
クロムは驚きを禁じえない。
実現しそうな気もしての提案ではあったが遊びのつもりでもあった。冒険者としてではなく、芸能としてのアイドル人生を歩む成算の方が高いぐらいだと自分は考えていたし、それはそれで一つの新たな価値を生み出すはずだと楽しみでもあったのだ。
それがまさかこの世界の人間にこんな異文化が即座に受け入れられる、どころかクロムの頭の中の完成図を遥かに超えた完成度を持つアイドルとして活動しようとしている。
複数の持ち曲、担当振り付け、楽器まで。
ランダスター冒険者養成学校の新プロジェクトとして支援魔法科が生まれ変わろうとしていた。
「シレーナ先生」
「クロム、久しぶりだな」
「凄いじゃないですか」
最後に見に来たのはわずかに二月程前だったが、顕著に変化が見てとれる。
周囲に大人が増えていた。
皆真面目な顔で書面を確認している。
放課後、校庭の隅でクロムの手拍子が見守るだけだった時とは大きく様変わりしている。
「衣装まで……」
「お前が言った事だろう?」
「いや、そうですけど。何かやたら大掛かりになってるっていうか」
「ああ。補助魔法の効果が確認された。それも大規模な、な。校庭に居た人間に強化が掛かった」
えっ、とクロムは固まる。
「数度、ごく僅かな時間だが確認されてな。私とバッケル先生で校長先生を招いて話し合った。職員会議、理事会でも承認されている」
「……何でです?」
「何故? 何を言っている? お前にこれがどれほど凄い事なのか分からないはずはないだろう」
クロムが理解できないのはその価値ではない。提案した本人でさえちょっと馬鹿らしいと思っていたぐらいの歌い踊る集団の戦場投入など、この世界の人間が理解するには実戦で証明する以外ないだろうと思っていた。
それがまさか。
「回復魔法科と連携してそれを今度は回復魔法でも実現できないか話し合っている所だ。と言ってもまだ先の話だな。まずはこの……歌って踊って支援する方法を確立してからだ。なあ、これはなんと呼べばいいんだ? 便宜上、呪歌と呼んではいるが」
回復魔法……。
クロムはそこには思い至っていなかった。
歌と踊りのスキルは全体補助魔法効果を持つスキルであり、その枠組みを超えてそれが回復魔法にまで及ぶかどうかと聞かれるとこれは自信が無い。
もし実現すればそれはゲームのスキルを超えたスキルとして誕生する新たな力だ。
「これって言うのは?」
「生徒達が今やっている事だ。呪歌と踊りの融合、あいどるとお前は以前言っていたが……」
「ええと、そうですね」
これを一つの技術、魔法から派生する何がしかの術とするなら呼び名は必要だろう。しかしそれを名付けるとするならどんな言葉が適当か。
「ミーシャさん達は何て言ってます?」
「お前に聞けと言っていたぞ」
確かに歌とダンス、としか伝えていない。
「あ、クロム君!」
「あー! ひさしぶり~」
クロムの姿を発見した元クラスメイト達が駆け寄ってくる。周囲の人間も、あれが、などとクロムを注視している。
「おひさしぶりです。見違えましたね」
「へっへー、可愛かろう?」
「見て見て、これ」
五人ともいたく衣装を気に入っているようだ。
彼女達は自分達が偉業に手を掛けつつある事などより、見た目の進歩の方が重要らしい。
相変わらずで何より。
「あなたが噂の。私はジェイク・セピアと申します。呪歌、魔術儀式研究家でして」
「初めまして、クロム・ディーです」
差し出された手を握ったクロムは笑いをこらえるのに必死だ。
まさかとは思うが、クロムがアイドルというジョブを誕生させるべく動き出した後に生まれたキャラではあるまいな、と。
このシェイクスピアを彷彿とさせる名前の人物がもしもそれ以前から――いや居たのだろう、でなければ辻褄が合わない。とするとクロムがこういった異文化を流入させる事も規定路線だったのかと考えると少し空恐ろしい。
しかしどうでもいい。
だとしても面白ければよかろう、とプラチナあたりは言うだろうなと考えクロムも深くは考えない。
「あなたがこれを考えたという事ですが」
「あー、まあ考えたと言いますか何と言いますか」
ジェイクという禿げ上がった人物は興味津々といった感じでやや興奮している。
どういった着想でこれを、とか。
歌と踊りで魔法を構成する理論がどうのとか。
クロムに聞かれても答えようがない学術的質問をばんばん飛ばしてくる。迷惑この上ない。
「もー、ジェイクさん後にして~」
「そうそう、今は私達の番だよ」
幸いにもインターセプトしてくれた。
新しい曲もできてね、などとクロムの手を引き、これどう、と振り付けの評価を貰おうとして踊ってみせたりしてくれた。
今度こそ堪え切れなくなったクロムは笑いながら、こうした方が可愛いんじゃないですか、などとその輪に加わっていった。
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半年近く世話になった定宿の主人に挨拶をすませ、わずかな顔見知りにもギルドにもデルスタットを離れる事を伝えた。
学校へはディルやエイク経由で伝えても伝えなくても構わないと思っている。
卒業生が報告に訪れる事など珍しくはないが、ベタベタ甘えるような場所でもない。
卒業してからの数ヶ月間、スローライフは満喫した。いや満喫という程楽しくはなかったが。エファやマリーの無言のプレッシャーもあったし、どちらかというと退屈の方が勝っていた時間だった。
あのアダムという騎士の事も気になっていたが、あれ以来出会う事もなかった。
「落ち着き先決まったら連絡せえよ」
「決まったらな」
「こっちも卒業したら手紙送るから。ただの報告だけど、何かあったら遠慮せず言ってね」
「ありがとう、エイク」
「皆さんも頑張ってくださいね」
ガルテン王国最大の港街デイポート、デルスタットから北西に位置するその街への乗り合い馬車は大抵こうして混雑している。
大型の馬車複数編成の乗り場には同じように見送りに来た人々も多く、馬車の利用客も冒険者、商人、一般人など多岐に渡る。
「じゃ、頑張れよ」
「おう。死んだらアカンで」
全員握手し、離れる。
既に別れは済ませてある。ディル、エイク、レギが見送る中、クロムとエファとマリーは束の間の三人パーティーとなって馬車に乗り込んだ。クロムだけは二人の見送りをした後、そのままデイポートから当てのない放浪に出る事になっている。
「デイポート行き出発します」
馬車の造りはクロムがテレビで見た事のあるような、広いトラックの荷台に長椅子を並べたものだ。東南アジアだったか、こういうの見たなと過去の記憶に思いを馳せる。
冒険者らしき四人組と、商人らしき一団が乗り合わせている。クロムのランダスター入学から数えると一年は過ぎていないが、新年を越え、季節は日中でも肌寒い、春を迎える少し前の冬の終わりとなっていた。
クロム達は三人とも服の上にローブを纏っている。旅をする者には多いごくありふれた格好だ。エファとマリーはその下に革の部分鎧を身に付け、冒険者としての準備も怠っていない。
「結構揺れるもんだな」
「仕方ありませんわ。ゆっくり走っていては時間が掛かりますし、危険もありますもの」
「まさか乗り物に弱いなんて言わないよね、クロム。そんなんじゃ心配になっちゃうよ」
うふふと笑う二人に挟まれたクロムはあまり大声で会話する気になれない。
最後くらい、と二人の間に座らされたのは幸せな事ではあるが、それ以上に恥ずかしい。
ただでさえ乗る前から目立っていたが、小僧一人に美少女二人というのは如何にも反感を買いそうだし、旅慣れた雰囲気の他の乗客だって一画でお花畑を作られていては気分も悪かろう、と現実世界の日本人の感覚が静かにしておけと自制を求めてくる。
デルスタットから王都まで続く道を一直線に走る道と、海沿いを走る道がある。
この馬車団は満席で途中で客を拾う必要も無い為、海沿いの道を走っていく事になる。
もっと暖かい季節なら随分と気持ち良かったろうに、とクロムは流れていくこの世界の景観をじっと眺める。現実世界ではこんな風にゆっくりとしたスピードで、風を感じる乗り物に乗った経験などほとんど無い。
丘に登れば地平線が見える場所もこの世界なら簡単に見つかるだろう。
地形にほとんど手が入れられていないせいで、せっかく高い建物が無いのに起伏が多く未だそういう景色を見る事はできないが。
見渡す限り広大な、一面地平線。
そんな場所に行ってみたい。
エファとマリーも静かに風景に目をやったり、時々目を閉じて眠るようにじっとしたりしている。最後になるかどうかどうか分からないが、楽しく会話しながら過ごしたかったりしたのだろうか、と考えたりする。
一度小さな村に立ち寄り休憩となった。
馬を休める目的もあるのだろうが、どうやらこの村はこうして馬車を受け入れ食事を出したり土産物を売ったりする事が貴重な収入源となっているらしく、公共トイレは綺麗なものだったし食堂や店も充実していた。
どう考えても村の規模に見合わない。
まるでサービスエリアだな、と有り難く三人で楽しく見て回らせて貰った。
再び馬車の旅に戻り、揺れにも慣れた乗客達は思い思いに眠ったりしている。
クロムはエファとマリーに最後に何をしてあげられるだろうか、とずっと考えていた。
よもや二人が、いつかクロムの仲間として再び出会うために腕を磨こうと考えている事などクロムは知らない。エファとマリーはクロムがいない間に交わしたディル達との会話は秘密にしてくれるよう頼んでいた。クロムは二人がこっそり自分の話を聞いていた事すら知らないままだ。
そんな事を知らないクロムは最後の別れのつもりでいる。
実際二人がそう考えていても最後になる可能性だってある。というかそうなる可能性の方が高い。
クロムは連絡を取り続けるつもりがない。
おそらく能力が足りない二人を危険に巻き込むつもりはないし、クロムは抱いていたマリーへのささやかな恋愛感情を断ち切るつもりで別れを選択したのだから。
小さくデイポートが見えてきた。
のどかな草原の道は随分と海寄りを走るようになり、潮風が冷たい空気と潮の香りを運んでくる。
黙って海を眺めるマリーの横顔をそっと眺めたクロムは、前を向いたまま右隣に座るエファの手を、重なったローブが隠している事をいい事に軽く握った。
驚いた顔で一瞬こちらを見たエファだったが、拒む事なくキュッと握り返し、そのまま静かに目を閉じ再び眠ったふりをする。
クロムの左手はもう長い事ずっとマリーと重なっている。何かを求めるようにおずおずと差し出されてきたその手をクロムは黙って受け入れ、指と指をしっかり噛み合わせた。
手を繋ぐだけ。
それでも何かは満たされていく。
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ザーン、と岸壁に波が押し寄せ船着場を打つ。海鳥がマストを足場にしては飛び立ち、青い空に白い軌跡を描き出す。
ピィィィィ、と鳴く声が喧騒に掻き消される。
「向こうに来る事があったら連絡してね」
「ああ」
「じゃあ。元気でね」
甲板へのタラップを大勢の人間が上っている。
セーラー服の船員が誘導し、上るのを待っている人間はもうわずかしか残っていない。
「エファ、これ向こうに着いたら開けて」
乗船を待つ間、一度二人と離れたクロムが急いで包んで貰った長い大きな包み。
何を買ってきたのかと二人が奇妙な目を向けてきていたが、どうやら目星は付いていたらしい。
「まさかとは思いましたが、これってもしかして剣ですの?」
「ん、まあ。絶対向こうに着いてから開けてくれよ。人目のある場所で開けない事」
「……分かりましたわ。有り難く受け取らせて頂きますわ」
「マリーも、これ。向こうで見てくれよ」
「うん。ありがとう、クロム。……ねえ、これってすっごく高かったりしないよね?」
「いいから、そういうの」
マリーにも小さな包みを渡す。
高いどころの話ではない。騒ぎになるかもとかそういう一切を切り捨てた。
クロムが悩みに悩んだ末エファに渡す事にしたのは四風神器の一つである長剣。
<東風神>の名を冠する魔剣。
対峙した者に不吉をもたらす、などと物騒な説明が付いているが、その特性は素早い二回攻撃を可能とする上位武器であり、風を纏った刃は一種の斥力、対象を弾き飛ばす力も有しておりエファにぴったりだと思えた。
クロムがインベントリから取り出す武器はそのほとんどが抜き身の状態で出現するのだが、この剣を選んだのは珍しく鞘まで付いていた事も理由の一つだ。
マリーに渡したものはちょうどエファと対になる位置の、四風神器の一つ。
<西風神>の名を冠するグラブ。
不思議な質感を持つこの武器は防具として、違和感なく手袋として使用できるだろう。
豊穣をもたらすとされるこのグラブは元々、防御特性を持つ他の武器と同じく装備者にいくつかの耐性をもたらし守備的な装備品として運用する。
<西風の守護>という特殊防御効果も必ずマリーを救う一助となるだろう。
「あのアクセサリもできればいつも肌身離さず身に付けておいてくれよ」
「勿論ですわ」
「うん、絶対約束する」
ディル達にも渡してある。
全員の絆の証、などと陳腐な理由をつけて渡したものだが勿論これも装備品である。
いずれただの装飾品では無く、れっきとした装備品だとその価値に気付かれる可能性は高いが、そうなっても好きに扱えばいいというつもりで渡してある。
純粋なこの二人は大事にしてくれるだろうが、盗難や紛失には気をつけて貰いたいものだ。
「乗船券をお持ちの方はいませんか」
船員が締め切りの合図を伝えている。
名残惜しいがこれまでだ。
「ほら、いけよ」
「これで少しは寂しくなくなりましたわ」
笑顔でエファが包みをポン、と叩く。
「そうだね。クロム、これ大事にするから」
胸元に大事そうに包みを抱えたマリーが真っ直ぐにクロムを見つめてきた。
エファはそれを見届けると一人船員の下へ歩み寄り、待って下さいと声を掛けた。
マリーは動かない。
最後に何か言葉を言うべきだろう。
多分待っているはずだ。
ただ何も出てきやしない。
ここで未練を断ち切る言葉を言う勇気も無ければ、未練がましく甘い言葉を囁く事も出来ない。
優柔不断さは昔のまま、中身は転生前と変わらないままだなと自分を情けなくも思う。
下を向いたり意味無く拳を握って体を叩いてみたりと何も考えられないでいた。
「マリートさん、もう時間ですわよ!」
エファの声にマリーは一瞬目を閉じると、小さく微笑み両手を広げた。結局背中を押して貰う。
おずおずと抱きしめたクロムの頬に、素早く小さく、マリーが音高く口づけする。
エヘヘと笑ったマリー。
隙あり、と冗談めかして言う。
ただのいたずらだよと、意味なんか無いよと、そんなマリーの健気さが愛おしい。
きっとそれは世界に強要された感情にすぎないんだよと思ってみても、ひたむきな気持ちに堪え切れないものが込み上げる。
クロムは思わずもう一度強く抱き締めると、その唇に自らの唇を重ねてしまっていた。




