絶望の戦場に邂逅する者
荒涼とした大地は
焔が燃え盛る地獄と化していた。
(仲間と悪魔と・・・
おそらく神が倒れているな。)
死屍累々となった戦場に慣れ
始めている自分に強い嫌悪感と
恐怖と疎外感でおかしそうになる。
(なんのために戦っている
だろうか・・・。)
ややボサボサした黒髪と
漆黒の瞳。
白と黒の甲冑すがたの少年は、
そんな戦場に
希望を忘れただ絶望をしていた。
(いうからかこんな絶望したのだろうか・・・恐らく人々のために
平和のために
王のために・・・戦っていた
だろうか?)
長く戦場に身を投じ
仇や何度も味わった絶望と憎悪。
何故か信じ貫いていた
大義名分とか分からなくなって
いた。
・・・・もう、いいや。
考えるのも疲れた。
「この、人間があぁぁぁぁ!!」
呪詛の言葉を吐くのは
俺と同じぐらいの身長170もある
ゴブリンが棍棒を両手で
叩き潰そうとするが、
俺は白銀の剣で一撃で絶命させる。
「兄者が討たれただと!?」
「クソおぉぉ!!」
焔の壁のように燃え盛る中から
次々と現れるゴブリン援軍。
俺の仲間は
見失ったり、討たれたりして
今ここには俺一人だけで、
そして満身創痍。
「結局は、最上位の勇者になれず
ここが終焉の地になるか。」
だが、最後まで戦い抜く。
もうそれだけが唯一の
目的であり任務なのだから。
決死の覚悟を決め
剣を中段に構える。
突然、視界が虹色でゴブリンを
包む。
あまりにも煌々と輝き
片手で塞ぎ目を閉じる。
暫くしてから目を開くと
ゴブリンは、居なかった。
(・・・こんな荒唐無稽なこと
出来るのは、上位の悪魔か
神だ!)
そして上を視ると案の定いた!
そして予想外なことも。
翡翠色の腰まで届く艶がある髪と
瞳は、白銀。
白と青の鎧。
女神の象徴と言われる
長い翅もあった。
だけど珍しい両翅の色が違う。
右の翅は、翡翠で
左の翅は白だった。
あまりにも美しかった。
女神が舞い降り、着陸すると
白い剣で構える。
「まだ、生き残りがいたのか。」
透き透き通った声だったが
冷たく無感情にそう発した。
声だけなら無情そうなイメージが
あっただろう。
顔を見なければの話だが。
表情には、苦しそうで
助けを求めていた。
(・・・イヤ、いつまで
見惚れているんだ俺は!)
ようやく目を覚めると
剣を構える。
「その剣は!?」
女神は、酷く驚く。
「そうだ!
これは、戦女神
アテナの翅で造られた
神と悪魔を滅ぼすための
神魔兵器
[セイント・ブレイド]これで
お前た・・ち・・を・・・!」
「・・・・・。」
今にも泣きそうな顔で
悲しそうに視ていた。
その表情をみると
俺も悲しくなって苦しい。
・・・いや、違う!
まやかしだ!
この感情を起こさせているのは
何らかの魔法で
そうさせているだけなんだ。
早く倒さないと。
「どうして・・・人は、
こんなに非道なことを
平然と出来るの?」
非道?
一体なにが非道と言うのか。
戦っていること?
さきの挑発のこと・・・
かもしれない。
だけど、客観的に推察しても
そこまで傷つくほど
だっただろうか。
「・・・どうして、そんなに
苦しそうにしているんだ!」
「・・・貴方には関係ない。」
「そうだな!
俺かお前がどちらかが
討たれるのだからな。」
そして構えた状態でお互い
睨むこと
どれくらい過ぎたか。
どんな力を持つか分からないが
前に出ないと倒せない。
虎穴にいらずんば虎子を得ずだ。
「はあぁぁぁぁ!!」
掛け声と共に一気に詰め
袈裟斬り。
「っ!」
初見なら絶対に防がれないと
自信があった一撃を
剣で防いだだと!
「だが、つばぜり合いなら
筋肉隆々の男でも勝つ俺の膂力に
それは、最大の失敗!」
「それは、人ならの話。」
(なっ!
俺が押し負けているだと!?)
俺も細い方だけど
著しいく華奢なのに・・・・・
なんて力なんだ!
「くそ!
これが神の力なのか。」
足で女神の剣に強く蹴り
その反動で
後方で宙返りして距離をとった。
「これが実力の差。
その武器を捨てて逃げても
追いかけない。」
「フッ、謀るならもう少し
うまく言葉を選んだ方が
いいぞ。
そんな甘い言葉を信じると
思っているのか!」
かつて神と人類は味方で
共に悪魔を殲滅せんとしていた。
だが、五年前に突然、
神は人類を裏切った。
そして多くの犠牲が出て憎悪が
増していき戦い続けそして、
神と人類は、不倶戴天の敵となったのだ。
「・・・そう。
なら、本気で倒す!」
手が震えた。
(強いマナーを体に感知して
震えている!?)
絶対なる力の前に恐怖。
あきらかに俺には力不足だ。
魂までそう理解しそうになり・・・
「俺はーー、勇者だ!
最後まで勇者として
ここで戦うだけ!」
叫ぶことで、その恐怖心に
打ち勝つ。
足がおかしいぐらいに
震えている。
「無理しない方がいいよ、
体が震えている。」
「これは・・・武者震いだよ。」
俺は、強気に言う。
「そう。
最後通告は、したよ。」
そして剣を翳すと
凄まじい風圧が起き
それは、鎌鼬となって、
周りを切り裂く。
「・・・ぐっ!」
素早く避けて斬っても
数が多く腕や頬に当たり
血が流れる。
そして女神の剣には、
純白の剣を緑色の粒子が集まり
風のマナーが硬化して
巨大な翡翠の剣となった。
(・・・今までの攻撃は
このバカでかい剣を完成に
発生した風圧というのか。)
その風圧でここまで傷を
負ったのか、なんだかあまりにも
戦力の差がありすぎて笑えてくる。
警鐘が何度も何度も鳴る。
逃げろと。
(どうする。
剣や盾でも絶対的に防げない
だろうな。
俊敏力でも回避するにも
危険過ぎる・・・
よし。
武器を投擲するか!)
これもリスクのある。
普通に得物が無くなり
抵抗が出来ずに討たれること。
完全に賭けの一撃、否!
無謀。
賭けにすらならない攻撃方法を
俺は実行する。
「この一撃を・・・賭ける!」
得物の剣を投げる。
そしてセリフと最初の投擲は
フェイントで
ここから次々と投擲して
鞘を気付かずに投擲に
するため強く握る。
「っ!」
投げた白銀の剣は、
異常なほど
回転して、
方向は、ジグザグに動く。
もはや蛇が獲物を狩るのを
彷彿させる投擲に
敵は驚く。
「この程度!」
剣で弾くか防ぐか思いきや
低くしゃがみ
上から飛んでくる剣の柄を掴み
取る。
そして次は俺が驚く。
「・・・何をやって・・・?」
「フッ、そう驚くことない。
女神には造作もないこと。」
「・・・イヤ、そうじゃなくて、
どうして完成した巨大な剣を
霧散するようなことを?」
「えっ?
・・・あ、ぁぁぁぁぁ!!」
えっ、もしかして
普通の剣に戻したのって・・・。
「くっ、くくはっははは!」
「・・・・・さて、
戯れるのもここまでよ!」
あっ、無かったことにして
進むつもりのようだ。
(いやいや、戦争なんだ!
なに敵と楽しく話したいる!
俺らしくない。)
再び俺は、
敵意をむき出しに剣を構える。
彼女も同じ中段で構える。
だが女神は倒れる。
「っ!」
「なに!?」
なにが!?
「人間ではこれを
漁夫の利って、言うのかな?」
女神の背後から焔が燃える
中から姿を現すのは、
赤髪の青年。
俺は咄嗟に鞘を投擲。
「今まで見たがこんな
攻撃。」
顔を少し動かし回避。
だが俺は、女神が倒れた方、
近くに移動し、奴の顔を一瞥。
「悪魔か。」
顔に乱雑な模様と
漆黒のみの甲冑・・・
これをするのは悪魔しかいない。
人も昔に好んでする人がいたが
法で禁止になっていて
それに憎むべき悪魔と同じ
物をしなくなったので
判別出来るようになったけど
それでも容姿が人間と酷似の
悪魔が多い。
赤髪の容姿が整っている
男は、嗤う。
「我はセーレ。
ソロモン七十二柱が一人。
序列は、70だよ。」
「よりによってソロモン七十二柱
かよ!」
かなり上位になる悪魔が
ソロモン七十二柱。
「だがこの距離なら投擲で
倒せる!」
腰から短剣を投擲。
セーレは、難なく回避
だが低めから二撃目の短剣投擲。
「安着だな。」
回避され
1本目と同じ高さの3本目投擲も
避けられる。
「我れには、そんな攻撃な」
頭上にガシャャ!
籠手を投げ命中した。
「・・・投擲やり過ぎないか!」
静かに怒るセーレ。
そして無視して次々と
籠手やブーツに
火薬瓶を投げる。
「フン。」
漆黒の甲冑の後ろから漆黒の刀で
両断していく。
籠手も
ブーツも
そして火薬瓶も斬る。
火薬瓶は、爆発して煙で
視界を奪うことに成功する。
「焔を知れ!
焔の球!」
最下級の焔魔法焔の球。
大きさは、手のひらサイズ。
威力も低く実戦では使うものは
いないと言われる。
だが体内のマナーの量や質に
よって変貌するケースもある。たとたとえば今に放とうとする
この焔の球がそう。
セーレを呑み込むほどのサイズが
早く飛んでいく。
「くっくく、そんな最下級魔法で
殺れるとで・・・な、なんだ
この大きさは・・・・・
ぐわあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
煙がさらに増していく。
断末魔を上げて
それから聞こえないすると
終わったようだ。
(さて、この女神を
助けるか。)
卑怯なことが嫌いなだけで
回復したら倒せばいい。
そう自分に言い聞かせている
みたいだが本当にそれだけだ!
(・・・うなじに針が刺さって
いるな。
これは、麻痺だろう。)
懐から怪しい色した液体の瓶の
蓋を取り
口にいれようとする。
「っーーー!!」
「や、やめろ!
怪しい類の薬じゃない!!」
動くのも難儀なのに
必死に抵抗する。
無理に口を入れる。
絶対に飲まないと口元から
液体が流れたりする。
汚いな!
「やめてえぇぇぇぇ!!」
手で強く瓶を振り払い、
蹴りで鳩尾に当たり飛ばされる。
「え・・・わあぁぁ!」
気付いたらけっこうな距離まで
跳ばされ、地面に転がる。
それにしても痛い。
「あれ?
動けるようになった!?」
「痛いぃ・・・
どうして蹴るんだよ!」
「ごご、ごめんなさい!」
女神は、立ち上がり頭を下げる。
俺も立ち上がり睨むが
バカバカしくなりため息。
「いや、無事で、」
その時だ。
「せめて道連れにしてやるぅ!」
振り返るとセーレが血眼で
俺を剣で刺突しようとする。
(ぐっ、武器もない
距離が近すぎる!)
油断していた。
だが刺突することはなかった。
女神が白銀の剣で袈裟斬りして
倒れるセーレ。
こんどこそ絶命した。
「・・・どうして俺を?」
「仮を返しただけ。」
振り返るとその表情に
敵意はなく、
友好的な表情でもない。
だが、佇む姿は全て超越される
ほど美しいと改めて分かった。
「頼みがあるのだけど
その・・・剣がほしいのだけど?」
指を差すのは白い剣。
俺の得物の神魔兵器。
「ああ、いいよ。」
「・・・・・えっ!
いいの?」
「ああ。」
この剣に強い反応していたので
大事なのが分かっていた。
それに俺にはこれは兵器に、
過ぎない。
でも、この女神は違うのだろう。
そしてこれが正しい選択だと
思う。
「俺も頼み事がある。」
「うん。」
「名前を聞いてもいいだろうか?」!
「うん・・・えっ、
名前!?」
スゴいことを頼むと思ったのか
以外過ぎた表情をしているな。
「・・・パラス。
それがわたしの名前。」
「素敵な名前だ。
俺はフリードリヒ・レーヴィだ。
・・・どうした?」
女神ことパラスは、口を開いて
フリーズしていて
問うと慌てる。
「え!
えーと・・・初めて名前を
褒められたから。」
恥ずかしそうに答えるパラス。
ぐっ、なんだこの嬉しくって
恥ずかしいこの感情は!
「そ、そうか。
これからどうするんだ?」
「わたしは、別の戦場に
行かないといけないけど
やっぱり戦う?」
上目遣いで言われ
さらに心の奥から
鼓動が早くなるのを感じる。
気のせいか顔も熱い。
「い、いや、女神とはいえ共闘した
者に戦おうとしたくない。
なにより今の俺は、
武器がないからな。」
「うん。
よかった!
戦うのをイヤだったから、
じゃあね。」
無邪気な笑顔で答え
そして左右の色が違う翅で
羽撃く。
「まっ!」
待ってくれと叫びそうになって
なんとか抑える。
「・・・・・まさか!・・・
俺は!?」
あの女神の声音に翡翠色の髪に
左右の違う珍しい翅に
笑顔に・・・
何度も心を奪いそうになって
必死に振り払ったが・・・・。
「俺は・・・女神に
パラスに好きになったのか!?」
そして戦いは人類の敗北で終わり
暫くしてから三勢力は、和睦した。