Ep,1
いきあたりばったりなところもあるので、どうなるか分かりませんが、よろしくお願いします。
「はぁ…、あんた、いつもそれ食べてるわね……」
姉ちゃんが、そうため息を吐きながら指さした先には、ボッキリと真っ二つにおられた板チョコがあった。
ついでに言うと、もう半分は、すでに俺の胃袋の中である。
高校の帰り、いつも寄り道して買っているのだ。
「そういう姉ちゃんこそいつも夕食のとき、やったー肉だ〜、って思ってるじゃん。」
「うっ、何故それを……」
途端にしどろもどろになる姉ちゃん。
「んなの決まってるって、顔にでてるもん」
「えっ…、嘘、マジ?」
「えっ、気づいてなかったの?」
「……」
「……」
「マジか……、そっちの方が驚きだわ。あからさますぎて、わざとやってるのかと思ってた……。そんなに好きだったのか…肉」
「……そこまでじゃないわよ!!私は魚の方が好きだもん」
……姉ちゃんそれは悪手だよ。だって姉ちゃん……。
「この前こっそり魚を残していたのはどこの誰でしたっけ?」
「な、なんで⁉絶対わからないと思ったのに!」
やっぱり引っかかった。
「冗談で言っただけだけど………、姉ちゃん酷いね、俺が母さんの代わりに頑張って作った料理なのに……」
咄嗟に泣くふりをしてみた。
「……うっ、ごめんね、そんなつもりじゃなかったんだけど…」
姉ちゃんが困っている。これだから、からかうのをやめられない。
「ホントにごめんね?」
姉ちゃんが涙目になっている。ちょっとやりすぎたかな?
「じゃあ、これからは、魚もちゃんと食べる?」
「うん。頑張って食べる」
よし!言質はとったからな。
「……」
「良かった。それなら、母さんも喜ぶね」
「そうだね」
俺は、姉との会話を終えた後すぐに、夕食の準備に取りかかった。
♢ ♧ ♡ ♤
この会話を聞いて、気づいた人もたくさんいると思う。
俺の家は、父子家庭だ。
俺が、主に料理と掃除をしていて、姉ちゃんが、それ以外の家事をやっている。例えば、洗濯とか、ゴミ出しとかだ。
母さんは、俺が七歳のときに、不慮の事故で亡くなってしまったらしい。といっても、残念ながら、俺に、その頃の記憶はほとんどなくて、どんな人だったかは全く覚えていない。
けど、姉ちゃんは、とても尊敬できる人だったって言ってる。
同い年なのに、なんで俺だけに記憶がないんだろう………。
俺たちは、双子の姉弟だけど、顔はあまり似ていない。
俺の名前は、神崎 優希。
姉ちゃんの名前は、神崎 優奈だ。
この名前は、母さんがつけたもので、両方に、優という字が入っている。ちなみに、母さんの名前は神崎 優華で、同じ優が入っている。
優しい子に育って欲しい、という願いが由来だと、この前父さんが、何故か誇らしげに言っていた。
父さんは公務員で、安定した収入を得ているみたいだけど、やはり仕事が大変みたいだ。いつも、仕事から帰ってくると、疲れた顔をしている。俺たちのために、一生懸命働いてくれていて、感謝してもしきれない、本当に良い父親だ。
あと少しで父の日だから、なにかプレゼントを買いに行こう。姉ちゃんも誘っておこうかな。
♢ ♧ ♡ ♤
「姉ちゃん、今日時間ある?」
「ん?暇を持て余してるけど……、どしたの?」
ポテ○をバリバリ食べながら言われた。
「一緒に買いに行こうかなって………、プレゼントを」
「プレゼント?」
首をかしげられた。これは絶対忘れているパターンだろう。
「ほら、来週って、父の日じゃん?」
「…………ああっ、ヤバッ、忘れてた」
「はぁ…、大丈夫?姉ちゃん」
「うぅっ、こんな大事なことを忘れてるなんて……、面目ない」
ショボーンってされた。
「今から買いに行こうよ」
「オッケー、ちょっと待ってて優希」
――― 約半刻 ―――
「………」
「姉ちゃん、ちょっと待って、って言ったよね?」
「……な、の、に……、なんで三十分も経ってんの⁉おかしいでしょ⁉」
「ごめんなさい……」
姉ちゃんがまたショボーンとなった。
「はぁ…、それより早く行こう。プレゼントを選ばないと」
こんなような事があって、俺たちは予定よりも大幅に遅れて、家を出た。(予定なんて元から無い)
歩いてすぐの所にある、ショッピングセンターへ行くと、平日とは思えないほどに、親子連れの家族で、とても混み合っていた。
「んー、どうしよ。これじゃまともにプレゼント探せないな」
「じゃあ………、雑貨屋さんに行ってみようよ」
「雑貨屋?」
この辺にそんなのあったっけ………。
「最近出来たらしいんだけど、面白いらしいよ」
全然知らなかった……。女子の情報網恐るべし……。
「へ、へぇー、じゃあ、そこに行こう。意外と良いのがあるかもしれないし」
「わかったー………、えーとたしか、こっちだったような………」