神様への手紙(童話3)
冬の日の午後のこと。
庭のフェンスに、ひろこさんの顔がちょこんとのぞいています。
「きた!」
ひろこさんは大きく背伸びをしました。
おまちかねの郵便屋さんがやってきたのです。
郵便屋さんはバイクをとめると、いつものとおりの順番で手紙をくばり始めました。そして、ひろこさんの家にもやってきます。
「郵便屋さん、お願いがあるの」
ひろこさんはもじもじしながら声をかけました。
「なんだね、おじょうちゃん」
「これ、とどけてほしいの」
ひろこさんが手を伸ばします。
その手には一通の封筒がありました。
「手紙だね」
封筒を受け取るやいなや、郵便屋さんは大きく首をかしげました。なんとそれには、あて名が『かみさま』となっているのです。
「ゴメンね。神様がどこに住んでいるのか、おじさんは知らないんだ。だから、これは……」
手紙を返そうとした郵便屋さんでしたが、すぐに思いとどまりました。女の子の顔が、今にも泣きそうになったからです。
「神様に、なんて書いたんだね?」
「あのね、おばあちゃんが病気なの。だから、早くなおしてあげてくださいって」
「そうなんだ。それでおばあちゃんのおうち、どこかわかるかな?」
「ちょっと待っててね。おばあちゃんのお手紙、とってくるから」
ひろこさんは家の中に入ると、一枚の葉書を手にもどってきました。
郵便屋さんはにっこりしてから、
「この手紙、神様にとどけてあげられるよ。おばあちゃん、早く元気になるといいね」
そう言って、次の配達に向かったのでした。
次の日の朝。
おばあさんがひさしぶりに外に出てみると、郵便受けに一通の手紙が入っていました。
――まあ、ひろこちゃんからだわ。でも、やさしい郵便屋さんがいるもんだねえ。
あて名は『かみさま』となっています。しかも、あて先もなければ、切手もはられていないのです。
おばあさんは思いました。
ほんとに神様にとどいたのではないかと……。
だってあんなにひどかったカゼが、ひと晩のうちにすっかりなおったのですから。