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第11話 残敵掃討

 200の銃口が一斉に火を噴く!

 重なった銃声が空気を震わせた。

 1秒に1発としても200人が同時に撃てば1万2千発。

 素人が撃つので命中率が悪いがそれでも撃ち込まれる火線の量は膨大で、みるみるうちに亡者たちを黒い泥へと還していく。

 中には銃弾の雨をかいくぐり1階のバリケードまで取り付いてきたのもいるが、そうはさせるか。

 左の目が赤く輝く。

 それに呼応するように左手も疼き始めた。

 左手を抑えながら、目に集中する。


 牛鬼を倒すのと引き換えにウィルスで出来た池は半分にまで小さくなってしまったが、まだ残っている。

 それを細く伸ばして線にする。

 その線を校舎に寄り添うように移動させれば完成だ。

 1階の入り口部分を塞いだバリケードの前に小川が出来た。

 幅1mほどの小さなものだが、亡者たちにとっては触れれば最後、引きずり込まれる死の川だ。

 青く光る川が次々と亡者たちを引きずり込む。


 もはや亡者たちに進む道は無くなった。

 青い川に恐れをなした亡者が後ろを振り返るが、そこには後続の亡者たちが列をなして押してくるばかり。


 互いに押し合い、動きを止めれば上から散弾が降ってきてその体を撃ち抜き、地へと張り付ける。

 撃ち下ろしの連射が剣山で粘土を叩いたように亡者を、地面をずたずたに貫く!

 執拗に振り下ろされる貫きの雨が亡者の前列を壊滅させた。

 ここに至って後続も事態に気づき撤退しようとするが。

 方向転換しようとしてずっこける者が多発した。

 校庭は一面亡者の黒い泥で覆われて泥沼だ。

 足を滑らせ倒れた亡者に容赦無く散弾や9mm弾が降り注ぐ!

 泥が跳ね上げられ、肺を潰されたようなか細い呻き声が辺りを支配する轟音にかき消される。

 ぬかるんだ泥の中を這うようにして逃げようとしているが、屋上から見下ろす側にとっては格好の的だ。

 我先にと皆して狙いをつける。


 終わって見ればわずか10分ほどの戦闘だったが、弾は撃ち切り、ケガ人も出なかった。

 亡者の3割ほどには逃げられたが、大部分の亡者は打ち倒せた。

 屋上の皆も放心してその場に座り込んだり、亡者の消えた方向をじっと睨んでいたりとしている。

 左目を再び封印し、左右を見渡す。


「さやか、大丈夫か?」


「キョーちゃん。うん、大丈夫。これで亡者はやっつけれたのかなあ?」


「わからないがしばらくは大丈夫だろう」


「うん、あ、そうだ。見て、レベルが5に上がったよ!」

 透明なステータス板を表示して、こちらに見せてくる。


 たしかにレベルが上がっている。

 レベルが1つ上がるごとに体力、筋力、免疫力、精神力といったステータスが10%上がるようだ。

 体力と筋力はそのままの意味だが免疫力と精神力が特殊だ。

 免疫力は亡者に噛まれた際の抵抗力となり病化しにくくなるらしい。

 精神力はスキルを扱うための力だ。

 このゲームには魔法は無いがスキルと呼ばれるものがある。

 取得条件がわからないので持っている人は少ないが、アラキさんやナナコさんは持っているそうだ。

 アラキさんは槍術を、ナナコさんはエイドという回復スキルを持っていて、病化を防いだり病の進行を遅くする効果があるらしい。


「とりあえずアラキさんたちと合流しよう」

 2階の教室へと向かう。




「そちらも無事か。ありがとう、君のおかげで皆無事だ。

 本当にありがとう」

 アラキさんがこちらの手を掴み、何度も頭を下げてくる。


「よしてください。俺は武器を提供しただけです。

 勝てたのは皆の力ですよ」


「その武器が俺たちには手に入らなかったからな。

 本当に感謝してるぜ、にいさん」

 クマダさんも声を掛けてきた。


「正直、あれだけの大群だ。もうダメかと思ったぜ」


「ええ、代償もありましたけどね。」

 アイテムコンテナを開く。


 表示されるアイテムリストは9mm弾500発にショットシェル250発。

 戦闘中もひっきりなしに出してたのだろう。

 それしか残ってない。


「うわ、空っけつか」


「皆、手持ちの弾を撃ち尽くしてしまったみたいで、私の方にも弾が無いか?と問い合わせがくるぐらいですから。

 マズイですね」


 弾の補充速度もウィルスの力を使った代償で3.0/sまで落ち込んでいる。

 集団での銃の運用がこんなにも弾を浪費するとは思いもしなかった。

 始まる前は3万7千発も貯めこんでいたんだけどなぁ。


「にいさん、弾の方は待っていればなんとかなるのか?」


「ええ、多分。二人ともこっちへ来てください」

 教室の窓へと寄る。


 校庭はまだ黒い泥が残っていたが、あちこちでキラキラと青く光る点がある。

 満天の夜空のように煌く星々、ウィルスだ。

「皆が撃った弾のほとんどが外れ、地面へと打ち込まれました。

 2、3時間もすれば校庭全体が青くウィルスで侵食され、その分弾の補充速度も上がるはずです」


「8割ぐらいは外れていたでしょうからねぇ」


「つまりは待っていれば弾は大丈夫ってことか」


 それから三人で今後のことについて話し合う。

 校舎の防備については選別した少数の人にだけ弾を持たせ、警備に当たってもらい。

 他の人は校内で待機だ。

 アラキさんから次のエリアについての情報を聞き出す。

 正確な情報は無いが北のトンネルが怪しいそうだ。

 アラキさんたちからも俺のウィルス操作の力について聞かれたので二人には話しておく。

 だが周りには広めないように釘を刺した。

 力があればそれに寄ってくる人もいるだろう。

 そういったものに関わっていられるほど時間は残されていない。


 二人と別れ、教授にメールで相談する。

 俺の今居る以外のエリアは相当苦戦しているだろうから、武器とマニュアルの入ったアイテムコンテナをそれぞれのエリアに送り出してもらうことになった。

 これで生き延びる人たちが少しでも増えればいいのだが……


 交代で見回りをしながら1日目の夜を校舎で過ごす。

 俺は功労者ということで見回りの順番は回ってこなかった。

 ありがたく配慮を受け取り、寝床に着きながら次の日のことを考え教授に追加武装のメールを送る。





 次の日、窓から外を見れば辺り一面青く輝いている。

 まるで湖の上に建物が立っているように見渡す限りのブルーだ。

 陽光が青い水面に反射され、天井に光の波模様を作り出している。

 校庭に下りて触ってみれば、青いホログラフィティの5cm下ほどにちゃんと地面もあった。


「キョーちゃん、それ触っても大丈夫なの?」


「大丈夫だよ、プレイヤーには害が無いから上も歩けるし」


 俺たちのやり取りを見ていたのか、他の皆も続々と下りてきて青いホログラフィティを触ってわいわいやっていた。

 これだけウィルスの侵食が広がり、弾の補充速度も格段に上がった。

 3.0/sから10倍の30.0/sになり。

 9mm弾27万発、ショットシェル13万5千発。

 俺のマグナム弾も2千発確保してある。

 ベレッタとショットガンは在庫が500丁ずつになったところで止め、代わりに9mm弾を使うサブマシンガン、MP5を補充し始めた。

 これは銃器の扱いのうまい人にだけ配っていく。

 全員にショットガンとベレッタを配り、弾もショットシェル100発に9mm弾150発を配っていく。

 サブマシンガンを配った人には9mm弾を300発追加で。

 これだけでもかなりの重量となるのだが、皆レベルアップをしているのでリュックサックに詰め込んで背負うことが出来た。

 レベルは一番低い人で3。

 高い人…アラキさんとクマダさんなのだがそれぞれ20と22まで上がり、クラスチェンジも出来るようになったようだ。

 二人はまだ何にするか迷っているようだが。


「それでにいさん、そろそろ出発か?」


「ええ、ちょっと待ってくださいね。今、乗り物を用意します」

 青く透き通った校庭の真ん中に立ち、手を水面に向ける。

 アイテムリストの中から選び、来いと念じると水面が沸き立ち、大きく水しぶきを上げながら車両が出てきた。

 96式装輪装甲車、自衛隊の使っていた兵員輸送車で中は広く、最大14名まで乗ることが出来る。

 それを16台召喚し、校庭に並べる。


「コイツはすげぇな……」

 クマダさんも皆も驚いているようだ。


 ウィルスの侵食が大幅に進んだのでこんな大物も呼び出せるようになったのだ。


「さぁ、それじゃ次のエリアに向かいましょう」

 全員で車両に乗り込み、トンネルを目指す。



明日は休みます。

続きは火曜から。

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