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良い人と神のQ&A  作者: 椰子日たゆ
9/11

引きこもりの理由

部屋の前に着くと俺はロゲールに一つ質問した。

「王様ってどんな人?」

「我が国には大魔導師がおりますのはご存知の通り、その方のおかげで近隣諸国とは友好な関係を築いております。しかし、旦那様は大魔導師に頼らずとも、この国を支えて繁栄させてきました、民も皆慕っております」

「へぇー」

となると王子の悩みはアレか…

「よし、やるか」

俺はそう言って王子の部屋をノックした。

「アレン王子、俺は街外れの森に住むニュースと申します。

お部屋に入ってもよろしいでしょうか」

しばらくしてドアが勝手に開いた。

これも魔法のようだ

「なんのようだ」

ドアが開くと暗く大きな一人部屋の奥にぽつんと王子が座っていた。

俺より少し若いように見える。

俺が部屋に入るとドアが勝手に閉まる。

「王様に言われて来たんだ、引きこもりをどうにかしてくれって」

「俺が出る必要は無い帰れ」

俺は床に座りながら王子に話しかける。

「まぁ話ぐらいしようよ、といっても俺は何も話さないけどね。話すのは王子だ。」

「お前が訪ねてきたんだろうが、用が無いなら帰ってくれ」

「俺はお前の話を聞きに来たんだ」

「話すことは無い帰れ」

「いや、あるよ。言いたいことあるんだろ、全部俺に言ってみろよ」

俺のしつこさに王子は立ち上がってキレた。

「無いって言ってんだろ!」

「そうか、じゃあ俺が言ってやるよ、…お前王様のこと嫌いだろ」

「…っるさい!」

図星のようだ、顔を真っ赤にしながら怒り出す。

俺はさらに煽る。

「嫌いで嫌いでしょうがなくて会いたくもねーからこんなとこに引きこもってんだろ」

「うるさい!うるさいうるさい!黙れ!」

王子が俺との距離を縮めてくる。

まだだ、もっとバカにしてやる

「自分の力じゃ強引に引きずり出されるから、大魔導師にも手を貸してもらってさ」

「黙れ!」

さぁとどめだ、思いっきり嘲笑して言ってやろう。

「どんだけ弱いんだよお前」

「てめぇに何がわかるんだ!」

王子は俺の胸ぐらを掴み怒鳴り散らす。

「何もわからないよ」

息を荒げる王子に対し俺は冷静に言った。

「何も知らない、だからお前が自分でしゃべんなきゃダメなんだよ」

「…っ」

「ここでも逃げるのか?」

俺がそう言うと王子は堰を切ったように喋り出した。

「あーそうだよ、嫌いだよ。父さんなんて大嫌いだ、大魔導師も嫌いだ、ここの使用人達も嫌いだ、街にいる民も全員嫌いだよ!」

王子は座込み涙を流しながら続ける。

「…でも、…一番嫌いなのはみんなを嫌っている俺自身なんだよ。

違う、嫌いなのは自分自身だけだ、本当はみんな大好きだ…父さんは俺の憧れですごくて、かっこよくて俺もああなりたくて、いろんな稽古をやって強くなって国を守れるくらいになろうって思って、でも上手くいかなくて、父さんや使用人は大丈夫だなんて言ってくれて、その優しさが心に刺さって、よけい焦ってまた失敗して、俺は弱くてどうしようもなくて…」

俺は王子を優しくなだめた。

「いいぞ、ゆっくりでいい全部吐き出せ、俺は全部聞くから」

「…そんな自分が嫌で、何もかもから逃げたくなって、でも俺は弱いから大魔導師に手伝ってもらってこんなことまでして、それでなんとかなった気がして、でも現実は何も変わってなくて、もっと周りから置いてかれて、追いつけなくて、弱い自分のままで、それを認めたくなくて、だからみんなを嫌って……謝ることすらもう遅いよ、俺はバカだどうしようもないバカだ」

全部を吐き出した王子の目は真っ赤になっていた。

彼は潰されそうな程周りからのプレッシャーを感じていた、自分でどうにかしようともがいていたのだ。

でも、失敗して自信を失い、周りの期待に応えることが出来ないと決めつけて逃げた。

「まだ間に合うよ」

「遅いよ」

「いや、間に合う、確かにお前は弱い、お前がこの部屋に逃げても時間は流れ世界は動き続ける。

でも、お前には待ってくれる人達がいるじゃないか、お前が好きだと言ったみんながお前をゆっくりでもいいと待ってくれてる。」

「俺は王様にならなきゃいけないんだ、弱くちゃダメなんだ」

「だったら周りを頼れ、弱いことがわかってるならなおさらな。

お前は周りをしっかり見ているんだ、だから自分のことのように感じなんとかしなきゃって思うんだ。

でもまだ子供だ、強くなりたいなら周りに頼って強くなれ、そんで強くなって王様になったら今までの恩を返せばいい。みんなずっと待ってる。焦らなくていい、一人で解決しようとしなくていい、ゆっくりでいい、一歩でも進み出せばそれでいいんだ。」

王子はこの言葉を聞いてゆっくりと立ち上がりドアを開けた、廊下の光が王子の顔を照らした。

俺はその光景を暖かく見守っていた。

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