魂+魔法=禁術
「いや、ごめんて。とりあえず泣き止んでよ、本当俺が悪かったって。」
「グスッ...泣いてなんてない...」
いや、嘘だろ。
俺は心の中でそう呟きながらも神と名乗った少女を家に一つしかない椅子に座らせ、なだめていた。
「俺も今日色々あって、疲れてたんだよ」
「それだからって閉め出す奴がいるか!」
ごもっともです。
「だから、悪かったって」
俺が謝罪すると、彼女は真っ赤にした目をこちらに向けた。
「それじゃあ反省の意も込めて供え物をいただきましょうか!」
「はぁ?」
「供え物!神様には供え物をするのが当たり前でしょ!それにこんな仕打ちまでしたのよ、よっぽど良いものもらえるんでしょうね。」
いや、神様とか嘘だろ。
俺は疑いの目で彼女を見た。
「なによ、疑ってるわけ?」
「いや、信じられないな〜と思って。」
「わかった。証拠を見せてあげる」
証拠?神様に証拠があるとは、一体どんなインチキくさい事をやるんだ。俺はそう小馬鹿にしながら彼女の行動に注目した。
そうすると、彼女は立ち上がり、手を開いた両手を上に挙げた。
「くらいなさい」
そう言って彼女は一気に両手を振り下ろした。それと同時に突如俺の真上に大量の水が出現し、重量に従って俺に直撃した。
「わかった?これが私が神である証拠よ」
彼女はそう言い張ると、ふふんと鼻を鳴らした。
「タイヘンヨクワカリマシタ」
俺は突然の事に呆然としながらも、彼女が人には出来ない事をしたのを認めた。
俺は髪を拭きながら、さっき彼女が行ったことについて質問した。
「今のは魔法ってやつか?」
「そうよ、まぁ人間如きじゃこんなすごい魔法は出来ないけどね」
「そうか...」
魔法、そんなものは俺の世界には存在しなかった。しかし、この世界に魔法というものがあるならば、ありえない話では無い。
俺は最も気になっていた質問を彼女にした。
「記憶や意識だけを、他人に移す魔法ってあるのか?」
そんな魔法が存在するならば俺がここにいる理由、今この現状を解明できるかもしれない。
そして、元の世界に戻れるかもしれない。
それは、この世界に来て初めて得た希望だった。
そんな俺の期待に対し彼女の答えは...
「魂を入れ替える魔法?まぁ、あるけど...」
「神よ、迷える子羊を救ってください。」
俺はそう言って、彼女に跪いた。
「なによいきなり態度改めて、気持ち悪い...」
元の世界に戻れるという希望を得たのだ、プライドなんて捨ててやる。
「多分俺は異世界から、その魂を入れ替える魔法とやらでこの世界にとばされたんだ。元の世界に戻れるんだったら、今すぐ返してくれ!頼む!」
俺は土下座しながら必死に彼女に頼み込んだ。
「ちょっと待って、今の話本当?
それだったら魂に干渉する魔法は禁術だから然るべき場所で処罰があるんだけど...」
「...うっそぴょーん」
俺は処罰と聞いて、咄嗟に取り繕った。
「いや〜、騙された?ジョークだよ、ジョーク。君をからかってみただけだよ。あははは...」
いや、無いわ。この嘘の吐き方はバレる。
俺は逸らした目を、彼女にチラリと向けた。
あーこれ疑ってる。むっちゃジト目だもん。何とかなんねーかな...
そうやって俺が言い訳を考える内に彼女は手を俺に向けた。
「えいっ」
彼女がそう言うと、ピタリと俺の体は動かなくなった。
口は何とか動くので、一応彼女に説明を求めた。
「えーと、これは一体?」
「魔法であなたの動きを制限したの、今は首より上しか動かないはずよ。」
だと思ったよ、クソッタレが。
「あなたの話が本当かどうか確かめるだけだから安心して。」
「どうやって?拷問でもするのか?」
「馬鹿ね、そんな事しなくてもあなたの魂を介して記憶を覗くだけよ。」
「今、魂に干渉する魔法は禁術だって...」
「それは人間の話!私は神よ、そんなものに縛られるわけないじゃない!」
「ですよね〜」
「じゃあ、始めるわよ。」
そう言って彼女が手をかざすと、彼女の手の周りが光だした。
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