警鐘
やたらと長い午後が終わった。
僕は掃き集めた校庭のゴミや落ち葉をちりとりに集めながら、今日一日の事を思い返していた。
特に、思い出し嘆息をするのは、昼から先の散々な展開の事であった。
ランさんに吹き込まれた、僕がランさんの許嫁とかいう、コン子の勘違いを解いてほっとしたのもつかの間……
いつの間にか昨日の夜のランさんが酔ってポロリしたとか抱きついて来たとかラッキースケベを全部白状させられていて、余計に怒られると言う昼休みが終り……
で、この騒ぎで取ろうと思ってた昼の仮眠ができなくて……
——そのあとはひたすらに眠くてぼろぼろの一日になってしまったのであった。
いや眠くてと言うか、最後の授業は本当に寝てしまったのだけど。
それがよりにもよって鬼の数学教師の羽土にばれて、その罰でこうやって校庭の掃除をさせられているわけなのだった。
——しかし、それもやっとあらかた終わった所だ。
後は、集めたゴミを校舎裏の焼却炉の所まで持って行ったならば今日の罰は終わり。
後は家に帰って寝るだけ。
そうなるはずであった。
ゴミ袋を乗せたカートを焼却場の所まで押して行けば終わり。
途中の道も舗装されていてカートを押すのに困難場所も無いし、なにも大変ことは残ってないはずであった。
でも——それでも思わずでてくる深い深い嘆息。
問題はゴミを運ぶことそのものの中にあるのではなかった。
今日の罰掃除とは全く関係ない別の理由だった。
それは……
焼却炉に行く途中の、旧校舎と新校舎のつなぎ目で学校中の何処からも死角になるちょっとした物陰があるのだけど、僕はカートを押しながら、そのへんを通過する時に、漂って来るタバコの匂いの後に……
——ああやっぱり。
問題はやはりそこに「いた」事を知る。
「おい、おまえ二年の高見だな!」
僕に声をかけてきたのは、三年の賀場健太だった。
他にこいつの腰巾着の——誰だっけ——確か田州と黒枝。
この高校の馬鹿三人組だった。
いや、馬鹿なだけなら良いのだが、誰彼かまわず理由もなく因縁つけてくるので困った連中なのだが……
「なんだ、俺らの前を通って挨拶もなしなのなのか、おい」
ああ、やはり絡んで来た。
関わると面倒くさい連中なので、そのまま気づかれずに通り過ぎちゃおうと思たのだけど失敗してしまったようで、
「すみません、急いでて、先輩方に気づかないでしまって」と僕。
「気づかなかったねえ……あれ?」
賀場は僕が掃除用具とゴミを乗せたカートを押しているのに気付く。
「お前何やってんのそれ」
「はい校庭の掃除を今日はいいつけられまして」
「掃除……?」
「授業中居眠りをして、その罰で……」
「居眠り? はあ、学生としてあるまじき行為だよな。お前学校になにしにきてんの。授業中に寝てしまうんなんて学業に対する真剣味がたりないんじゃないの……なあお前らそう思うだろ」
賀場たちは、僕を馬鹿にするようにわざとらしい笑い声を上げる。
それを聞いて僕は……
ああ腹が立つ。
お前らだけには言われたくはない。
出て来る言葉を呑込みながらそんな事を思うが……
でも、こんな挑発にのっちゃいけない。
「はい、まったく面目もありません」
僕は棒読みの言葉を残してその場を立ち去ろうとする。
なるべく関わりにならないで早く帰って、さっさと寝てしまいたいのだった。
しかし、
「……おいおい、まあちょっとまてよ」と賀場の呼び止める声。
ああやっぱり、と面倒くさく思いながら、
「はい」となるべく明るい声で僕。
「せっかくこうやって通りかかったんだから頼みがあるんだけど」
「はい?」
「……ちょいとお使いを頼みたいんだけどな。俺らちょっとここで待ち合わせしてるもんで動くわけにいかないんでね」
「……」
「……なに大した事じゃない。ちょっとタバコを買って来てくれるだけでいいんだ。おいおい勘違いするんじゃないぞ。なにも俺らが吸うと言ってないんだからな……俺らも頼まれたんだからな……で今は持ち合わせないんで買っておいてくれない、お前の金で」
僕は黙る。
「……おいおい、心配するなよ、金は必ず返すからよ。おいおい、まさか信用してないんじゃないだろうな」
「いえ、そんなことは……」と小声で僕。
「おいおい、びびるなよ……俺はおどかしてる訳じゃないからな」
そうだ、そうだ、とあわせて言う、田州と黒枝。
——困ったな、今日はこんなのに関わってないで早く帰って寝たいんだけど……
そう思ってちらりと賀場の様子をうかがって顔を見るが、ガンでもつけられたと思ったのか、逆にぎろりと睨み返される。
じゃあ無視して一気に通り過ぎようかと一歩踏み出すと、田州と黒枝が僕の前にでて邪魔をして、
「なあ、やさしくお願いしているうちにやってくれた方がいいんじゃないか」と少しいらいらしたような声で賀場が言う。
僕はまた嘆息をする。
ああめんどくさい、どうしようか。
奴らの言う事を聞いて買い物に行ってやるのが一番簡単なんだけど、正直今日は眠くてそんな時間も惜しいし、このまま調子にのってまた僕のところにやってこられても面倒くさいし……
で僕は決心して、しょうがないかここは無理にでも走って通り抜けて逃げて、と思った瞬間。
「何、あんたたち! カケルになにしてんのよ!」
コン子だった。
「……コン子、なんでまだ学校いるんだよ」
「なんでじゃないでしょ! ダンス部の部活終わったので、居眠りで罰掃除してるカケル馬鹿にしようと思ってやってきたんでしょ。寝不足でふらふらになっている幼なじみが心配になってやって来たんじゃないわよ。分かってるわね! 誤解しないでよね! だいたい寝不足になったのはエッチなお姉さんの誘惑にまけて夜更かししたあなたの自業自得なんだからね。カケルが悪いのよ。カケルが」
「……はい?」
「で何よこれ。こんなとこでだらだらしてないで眠いんならさっさと帰って寝なさいよ。だらだらしてないでよ」
できたらとっくにやってるよ、と思いながら、
「……はい、すみません」と僕。
「何? 分かれば良いのよ。分かれば、こんな三馬鹿に関わってないでさっさと行くわよ」
コン子は僕の手を引っ張って、この場から僕を連れ出そうとしている。
あっけにとられている三馬鹿。
あれ、これもしかしてこのままうやむやでこの場から逃げれるんじゃ?
コン子グットジョブと思うが……
でもやっぱり、
「おいこら、そこのツンデレカップル!」と賀場。
「何よカップルじゃないわよ」とコン子。
心なしかコン子の顔が少し赤い?
「じゃあおまえがツンデレなだけか!」と賀場。
「うるさい、まだデレて無いわよ」とコン子。
「まだ……?」と呟く僕。
すると、
「うるさいカケル、黙ってて!」コン子は僕にも怒鳴り「……ともかくこんな馬鹿どもつきあわないでもう行きましょう」
コン子と僕は、道を塞ぐ田州と黒枝の間を無理矢理抜けようとする
しかし、
「おい待て!」と賀場。「ツンデレでもヤンデレでもそんなのはどうでもええんだ! お前らちょっと待て」
賀場は、もう、その怒りを隠そうともしない。
コン子の勢いに最初は押されたが——こけにされたとでも思って、意地でも僕らを逃がさないつもりの様だった。賀場の田州と黒枝にも怒った様子に、一度は僕らを通しかけた彼らは、一歩下がってまた道を塞ぐ。
「……ちょっと待って話をきけ!」とまた賀場。
「何よ待つ気なんてないわよ……そんな命令する権利あなたにはないでしょ」とコン子。
すると、
「おいおい」いやらしい笑いを浮かべながら賀場が言う。「命令じゃなくお願いなんだけどな、そちらの高見くんがお願いを快諾してくれたから我々はその好意に甘えているわけなんだが……」
「何? カケルが何を約束したのよ」
「ちょっと買い物のね……高見君は否定しないから我々はてっきり喜んで行ってくれると思たんだけど。なあ約束したよな高見君」
「……いえ僕は」
「——うるせえ」今までで一番大きな声で賀場。「あまえてんじゃねえよ。ちゃんと否定しないと、同意と取られるんだよ。なんだお前を見込んで頼んだおれらの信頼裏切るのか」
「そんなことは……」
僕は怒り叫びそうになるのを必死に抑える。言い合い——喧嘩になったら相手の思うつぼだ。ここは冷静に……
でも、
「……裏切られた俺らの気持ちどうしてくれるんだ、どうやって誠意見せてくれるんだ。何ができるんだ、そうだな……」
そう言いながら、僕らの所にゆっくりと歩いて来た賀場はコン子の手を掴み、
「この姉ちゃん貸してくれるとか……」
「いやよ!!!」
平手打ちの音が響いた。
コン子が賀場の頬を打った音だった。
あっけにとられて一瞬手を離す賀場。
しかし、すぐにコン子の胸ぐらをつかみ、
「このアマ!!!」と顔を近づけて睨みながら怒声。
それを見て——我慢の限界だった。
僕はコン子を掴んでいる賀場の手を掴むと、そのまま関節を決めながら地面に転がした。
それを見て田州と黒枝が殴り掛かって来たが、大降りのモーションを見切るのは簡単で——パンチをかわしてタックルした田州をそのまま黒枝にぶつけて、二人ともに転がす。
二人ともすぐに立ち上がろうとしてきたが、起き上がりざまに蹴りをいれる構えをすると動けない。
しかし、
「ふざけるな!」の怒鳴り声と共に立ち上がり、再び僕に飛びかかろうとする賀場。
振り返らなくてもあまりにあからさまな気配に、僕はタイミングを合わせかがむだけで背中に賀場を乗せ、腕を掴んで一本背負いで転がっている二人の上に落とす。
下敷きになった二人の、「ぐぼっ」と言う、くぐもった声が聞こえた。
二人がクッションになった賀場はダメージがないまま、また立ちあがって向かってこようとするけれど、僕は立ちあがり際にパンチを叩き込もうと一歩前にでて構える。
賀場の動きが止まった。
賀場は、さすが喧嘩慣れしてそうな男だけあって、僕の闘気とその訓練された構えに危険を感じ取って立ち上がる事ができない。
僕は更に一歩進み、賀場の目をじっと睨む。
すると、賀場はそのまま起き上がれないまま、少し怖れたような目になりながら、
「お前、何者だ」と言う。
「何者でもありませんよ」僕は言う。
続けて、
「……まだ」と。
*
校舎を出るまでの間、コン子と僕は何も話さなかった。
焼却場まで一緒にカートを押して、そのまま戻ってカートを返して(帰り道賀場達はあの場所からもういなくなっていた)、一緒に夕焼けの始まった校庭を歩き、自転車を取って、校門の前に立ち、長い下り坂を二人で眺める。
すると、
「何よ」とコン子。
ずっと無言だった二人の会話の再開はこんな言葉だった。
「何よって何だよ」
「何でずっと黙っちゃうのよ」
「何でって、お前がずっと黙ってるからじゃないか……」
「何よ」
「だから何よって……」
「びっくりしちゃったじゃないの」
「びっくりって……」
「お父さんから習ったの?」
「習った? あの賀場達と揉めた時の事?」
「あんな格闘技みたいな事も必要なわけ?」
「必要って?」
「音楽かけるのだけじゃないの」
「……だけ?」
「業羅には音楽で向かうんじゃないの」
「そうだよ……でもどうしてもパニックになった人達ともみ合いになる事もあるし、音楽で業羅がおとなしくならないので攻撃されてしまう事もある……そんな時のために最低限の体術は覚えておかなければならないって……父さんと練習していた」
「何よ」
「だから何よって何だよ」
「私はそんな事知らなかったわよ」
「そりゃ言ってないし、別にあえて言う事じゃないだろ」
「……駄目よ」
「駄目? なんで」
僕はコン子の目を見ながら言う。
すると、コン子は少し口ごもったあと、
「なんかそんな危険なことカケルがするなんて、ちょっとやだなって」と。
コン子は、言いながら、僕を見て、少し心配そうな顔で微笑む。
その少女の顔は、僕の知るどの顔とも違う物だった。
僕はその顔を見て少しどきりとした。
思わずその目を見つめてしまった。
——すると、コン子はさっと目をそらす。
さらに気まずい沈黙。
何か答えなきゃ。
僕はそう思い、何でも良いからと思いつつ、話そうとする言葉は、喉元まで上がって来るのだが、そこで止まって呑込まれてしまう。
そのまま何も話せない。
——困った。
またこのまま気まずいままの無言が続くのかと。
だが……
「じゃあ、こうしましょう」とコン子。
「こう?」
「カケルなんてどんなに強くなってもたかが知れてると思うの……これからどんながんばっても……あんな賀場みたいな馬鹿相手に偉そうにするのがせいぜいだと思うわ」
まあ、確かに、賀場みたいな素人高校生相手は組み伏せられても、業羅相手は言うに及ばず、訓練した人間にも僕は敵わないだろう。
この方面の才能は無い。それはいつも父さんに軽くあしらわれている自分が一番良く知っていた。
体術はあくまでも最低限の危険回避のため習っているのだが……
「なので、カケルは逃げれば良いのよ」
コン子は僕にその事を思い出させてくれる。
「逃げる?」
「危なそうになったら直ぐ逃げる。そうしましょう」
「……そうかな」
「中途半端に戦おうとするのがいけないのよ。危なくなりそうなら、プライドとかへんな感情を捨ててさっさと逃げなさい」
コン子の言う通りだった。
父さんにも同じ事を言われていた。
どうしようもない暴力をさけるために体術を教えているんで、それで何かに勝つとか、自分のプライドとかの為にそれを使ってはいけない。
それは必ず自分を逆に貶める事になると。
今日はどうだったろう。自分のプライドのために、自分を、ましてやコン子を無用な危険に合わせていたのではないか。
あそこは土下座をしてでも、見逃してもらうべきだったのでは無いだろうか。
もし賀場達がナイフでも持っていて、コン子が狙われて傷つけられたりしたら?
僕はどんな場面でも賀場達を押さえつけられたのだろうか。
彼らの挑発を我慢できないで、不確かな行動を——
ちっぽけなプライドの為にやってしまっていたのではないだろうか。
僕は首肯した。
コン子の言葉に。
彼女の言うとおりだった。
僕は、プライドをすてて逃げてでもやらなければならないことがある。
それは……
「……じゃあ競争しましょう」
「はい……?」
「逃げ足を鍛えるのに、このまま家まで自転車で競争よ!」
そう言うとコン子は、学校から下る長い下り坂を、力一杯自転車をこぎ出した。
僕も「おい待って」とか言いながら後を追う。
下り道。
夕焼けに向かって走ってゆく僕らは、風の様にすがすがしく、軽く、そして天高く、気持ちが、舞い上がって行くのだった。
*
カケルとコン子が自転車で校舎から走り去った丁度その頃、賀場達三人は、学校裏の森の入り口のベンチに座りながら、今日の自分達のみっともない様を自己弁護するように、カケルとコン子の陰口をたたいているという——弁護どころか余計にみっともない事にしか成らない行動の真っ最中であった。
あの時油断しなければとか、あのまま相手を怪我させても良いのだったら俺が勝ったとか、たらればの話を次から次へと。しまいにはもう実は勝ってたとか言う気になって、カケルへの憐れみの言葉をつぶやくとか、なさけない子悪党ぶりを絶賛展開中であったのだが……
この三人に突然声をかける者がいた。
「ねえ、あなた達」
それは、二十代半ばくらいに見える、女性であった。体にぴったりとしたセクシーなスーツに身を包んだ、グラマーで、街を歩けば十人中十人が振り返るだろう美しい顔の——しかし明らかに常人ではない怪しい雰囲気の持ち主であった。
女は栗色の長い髪の毛をポニーテールにまとめ、桃色のリムのめがねをかけ、同じ色のハイヒールを履く。彼女は、ベンチに座る男達を見下ろしながら、
「ああ、まったくみっともない負け犬ってとこね。情けないったらありゃしない」と言う。
すると、
「なんだと、姉ちゃん、俺達に喧嘩を売る気かい……」と賀場。
しかし、強面の声と表情で立ち上がろうとした賀場は胸を押さえてそのままひざまずく。
その瞬間女の眼鏡の奥で瞳がきらりと光ったのに三人は気づかない。
「あらら、ウジ虫達が私に近づかないでくれる」
「「何!」」
残りの二人も立ち上がり、女につかみかかろうとするが、同じように胸を押さえてひざまずく。
「まったく、私と同じ視線でここに立てるとあんた達思わないでよね。不快よ。そのまま地面にひざまずいてもらって良いかしら」
賀場達は、立ち上がろうと、何か叫ぼうともがくが、胸を押さえたまま、体は動かない。
声もかすれたような小さなうめき声しかでない。
「分かったかしら? そのままひざまずいていてくれるのなら、苦しみからは解放してあげてもよいのだけど?」
悔しそうな表情をしながら賀場達はうなずく。
女が指を鳴らす。
苦しみがとれ、胸から手を離しながら、はっとしたような表情の三人。
「分かった。そのままひざまづいたまま聞いてほしいのだけど……ちょっとでも動いたなら今度は、ひざまづくだけじゃなくて、のたうち回るくらいの苦しみを与えてもよいのだけど」
何事か分からぬまま首肯する三人。
「よかった。いえ、別にあなた達を私はとって食おうってわけじゃないのよ。ただ割の良いアルバイトを紹介したいなと思って、こうやって現れたわけ」
「アルバイト?」
賀場がきょとんとした表情で言う。
「あら、興味を持ってくれたかしら? あなた達みたいなくず野郎を私は切に求めている訳よ」
女の言葉にかっと来て、立ち上がり飛びかかろうとするが——また女の目が光り——一瞬後には、苦痛に地べたをはいずりまわる賀場。
もう一度指を鳴らす女。
すると、苦しみから解放された賀場は、女を恐怖に満ちた目で見つめる。
「もう、立たないでよ。不快だわ。一度言われただけで分からないの。そんなんじゃ時給、落とすわよ……まあ、ともかく、話をとりあえず聞いてくれる」
首肯する三人。
するとにっこりと笑いながら、
「あ、ありがとうございます。あなた達みたいなろくでなしが今日はなかなか見つからないで困っていたところなのよね。感謝するわ。仕事終わったら私のおごりで飲みに行きましょうね……あれ、でもあなたら未成年かしらね、じゃあもっと……」と女は、スーツのスカートを左手で少したくり上げながら言う。「もっと別のサービスの方が良いかしらね」
唾を飲み込む三人。それを見て、少しサディスティックな笑みを浮かべながら、
「あらでもあなた達もしかしたらまだ十八歳なってない? じゃあ、そっちもこの国では許されていなかったかしら。全くつまらないところね……」と続けて女。
「でもそれじゃ、終わるまでに何かバイト代以外のご褒美は考えるとして、仕事は受けてくれるかしら……何大丈夫よ、そんな難しい仕事じゃないわ。あなたらみたいなバカ達にぴったりの、思いのままに怒り散らすだけの簡単なお・し・ご・と」