一話 空から降ってきた女の子……?
本日は二話連投なのでご注意を
「いやだ! やめろ!」
とある谷間にある砦の一室。
ベッドに押さえつけられ、着ていたはずの服や鎧のほとんどをむしり取られてしまった燃える様な赤毛の少女の悲鳴が響いていた。
「ブヒッブヒヒッ!!」
ブヒブヒ言いながら彼女を押さえつけているのは緑色の肌の醜悪な姿を一糸纏わず晒しているゴブリン……それも、この近辺の森に生息するゴブリンたちの首魁であるオークだった。
「モウ無駄ダッテイウ事ガマダ分カラネエノカ!?」
ゴブリン、およびオークに基本メスは存在しない。
ゆえに自分たちに比較的近い種である人間や獣人。時には魔族の女性をすら攫い、苗床にして繁殖する。
しかも彼らは知能が高く、簡単な道具を作成して使用し大規模な集団ともなればこのように砦を作ることもある。
現に彼らはこうして自前で作成したベッドに彼女をのせ、どこから持ってきたのかご丁寧に鉄の鎖で両手両足を一本一本ベッドの足につないでいるのだ。
おまけにその周囲を手下のゴブリンが取り囲み、にやにや眺めている始末である。
(何故だ……! 何故私がこんな辱めを受けなければならない!)
少女は憤りながらそう考えていた。
ただ自分はいつものようにギルドの依頼をこなそうとしただけなのだ。
彼女はギルド紅蓮の戦乙女に所属するAランクの冒険者だった。
彼女は十七歳。その年でAランクの冒険者であることは彼女が天才であることを如実に表している。
その彼女にギルドを通して直接指名されたのがこのゴブリン駆除依頼だった。
難易度はBクラス。難易度の設定は冒険者ランクの設定と同じであり、彼女にとってはさして難しくもない仕事。
だが少し異常だった。
まずゴブリンたちが消極的だったことだ。
もちろん、彼女が冒険者として有名なのはゴブリンたちも知っている。
しかし、彼らは通常5~6人の隊列を作って行動する。しかし、当時彼らは2~3人くらいの隊列でしかなかった。
問題など無い。こんな数でしか襲ってこない連中など、ものの数でない。
そう考え、淡々とゴブリンを斬り捨てている最中だった。
突然意識が途切れたのだ。
原因は不明。気づいたらオークにのしかかられているこの始末である。
(いやだ……絶対に嫌だ!)
こんな形で己の純潔を散らすなど言語道断である。
怯えを悟られるわけにはいかない。
強く気高く清廉であれ。そして、いかなる圧力にも屈することなかれ。
ギルドが作られる元となった伝説の女傑紅蓮の戦乙女が常に旨としていた言葉だ。
これに背くわけにいかない。ギルドの末席を汚すものとして、負けることは許されない。
キッと、気丈にボスオークを睨みつける。
「!?」
が、その顔が醜い大きな手によってわしづかみにされる。
「ヒヒッ……流石ハ紅蓮ノ戦乙女のメンバーダ……ココニキテマダ折レナイトハナ」
だからこそ折りがいがある。
そう言いたげに口元をゆがめ、にたりとボスオークは哂った。
「ち、誓って折れてなんかやるものか……っ!!」
「ソウカソウカ……」
顔を抑えていた醜く大きな手が、顔の輪郭をなぞり、首から鎖骨へ、胸、腰と、徐々に降りてくる。
「う……」
そのたび彼女は虫が体を這い回るような嫌悪感に襲われるが、必死で耐え抜く。
「楽シミダナァ? ソノ心ガ何時マデ持ツカ…… ソレガ壊レタトキ、ドンナ顔ヲシテ、ドンナ声デ哭クンダロウナァ……ヒヒヒ……」
「ぜ、絶対に屈するものか……ひっ!?」
突如彼女の腰に、嫌な硬い感触がした。
「マダ濡レテナイガ、ソノ内良クナルサ……」
「止めろ! 止めろお!」
そう叫んでもがくが、どうにもならない。
「フヒヒッ……厭ラシク腰ヲ降リヤガッテ……ソンナニ挿レテ欲シイノカ?」
「い、いやだ……」
もはや抵抗の声も弱々しく、瞳にはうっすらと涙すら浮かんでいた。
必死に抗う女傑の姿はそこに無く、ただ恐怖に打ちのめされ震える少女だけがいた。
「フヒヒヒヒヒヒヒッッ!!」
「いやあああああああああああ!!!」
ゴシャアアアアアン!!
醜い笑い声と悲痛な叫びに、突然天井を破る轟音が混ざった。
何事か、ゴブリン達は上を見上げる。
ゴブリン達の目に飛び込んできたのは小さな少女だった。
天井を突き破り、背中から落下して来たのだ。
その背中が、ただ一人、反応が遅れたものの上に落ちる。
ボスオークだ。
「グギャア!?」
ボスオークはベッドの縁に頭をぶつけ、よほど打ち所が悪かったのか気絶してしまった。
「ボスガ! ボスガコロサレタ!」
「ダレダ!!」
取り巻きのゴブリンどもが騒ぎ出す。
「な……!?」
私は空から降ってきて、そして起き上がった者を見て驚いた。
「あいたたたたた…………」
降ってきたのは、私よりも幼く見える少女だったのだ。




