0話 モルモットな異世界召喚
初回なので三話分連投です
「じゃあね~」
みんなにさよならを言って、僕は教室を出る。
僕は秋宮楓。高校一年生だ。
ただ背が153センチメートルとだいぶ低めで栗色の目がパッチリしていて髪がサラサラでかっこいいというよりも可愛いという……所謂男の娘という風貌をしている以外には。
因みに勉強は中の上、皆よりは少し上手いくらいだ。
あと部活には入っていない。帰ったらやることがあるからだ。
べつに男の娘のような見た目だということに劣等感を抱いているという訳ではないが、でもお風呂屋さんで男湯に入るときに止められたりナンパされて押し問答になるのは若干不便だ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ただいま~」
玄関を開けて、そう報告する。
「お帰り、楓」
リビングに行くと、いつものように母さんが居た。
サラサラの赤毛を後ろで束ね、夕ご飯を作っていた。
余談だが、僕のお母さんはドイツ人で僕の父さんが日本人。つまり、僕は日本人とドイツ人のハーフだ。
尤も、僕は見た目も名前もド日本人なんだけど。
「じゃあ、庭に出て素振りをして来い」
いつも通りの日課を言い渡される。
お母さんは男児は強くあるべしと考えているらしく、僕はいつも帰宅するといつもお母さんに素振りをするように言われる。
確かに強いほうがいいのかもしれない。ただ、
「分かったけど、うちの高校にも剣道部はあるよ?」
「バカだな。競技用ではなく、実践につかえる剣技でなくてはいかんのだ」
お母さんはこういう考え方なので僕は帰宅部なのだ。
そう言う訳なので僕の剣技は技というより剣が主体の格闘技みたいになっている。
おかげで運動テストもそこそこいいところまで行くくらいだ。
……部活の勧誘が男子部どころか女子部からも来るのはホントに勘弁してほしい。
素振りが終わった後はご飯を作り終えたお母さんと庭で稽古をする。
「ぐぎゃ」
まあ、一度も勝ててないけど。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ふ~」
稽古が終わり、僕は服を着替えるために二階に上がった。
因みに父さんは普通のサラリーマンで、お母さんとの出会いは修学旅行だったらしい。
父さんが学生のころに修学旅行でドイツとは、また変わった学校だと思う。
「着替え着替え」
そう呟きながら、ボタンに手をかけた時だった。
足元が光る。
「え?」
浮遊感が僕を包み、僕は落下した。