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プロローグ

プロローグ

 卒業という1つの節目に来ているのだという実感がまだ沸かない。いつの間にか3月8日というこの日を迎えた。そう、今日は卒業式だ。

和弥「もう卒業かよ…早かったよな3年間」行きのバスから降りた和弥がつぶやいた。今もこうして少しずつ、卒業へと近づく時間。薄かった実感が、教室に向かうごとハッキリと映し出されていく。教室に着くと、そこには何も変わらない帰る場所があった。

大輔「卒業って感じがしないよな。今日でこの教室ともサヨナラなんて」いつもと同じように椅子に座りながら、大輔は教室中を見回した。教室には思い出がいっぱいつまっている。その一つひとつは一言で言い表せるものではないが、この場所と別れるということには抵抗を感じられずにはいられなかった。

 8時を回ると、3Aの生徒37名が教室に揃った。いつもとは違い髪を結んでいる女子や、珍しく髪の毛に整髪料をつけていない男子。新鮮な光景が教室に溢れていく。当日をいざ迎えるとなると、どうしていいかわからなくなるものだ。ぎこちない空気の中、ただ時間だけが過ぎていく。

駿太「みんな…ちょっと聞いてくれるかな?」重い雰囲気の中で駿太が口を開くと、教室中の注目を集めた。

駿太「今日で俺ら卒業するけどさ、別れるのは仲間とだけじゃない。先生とも…やっぱり今日で別れなくちゃいけないんだよね」

万結「それは悲しいよ?寂しいよ?けど……私たちは前にすすむって言ったよね?一緒に、鷲見先生も一緒に今日は笑って卒業するんだって」

目にはうっすらと涙がにじんでいただろうか。万結はそういうと、机に伏せて動かなくなった。そう、今日でこの3Aの仲間とはお別れになるだろう。もう会えないっていうことだって、有り得ないことではないのかもしれない。昨日も、先週だって、卒業に向けた話は友達同士で、そしてクラスの中ではしていた。それなのに、いざ現実と向き合ってみると、卒業はすごく15歳の中学生にとっては重いことだった。

 鷲見先生。3年間今の三年生を育ててくださった先生だ。中には三年間担任をしてもらった生徒もいて、自然と先生との思い出はとても大きなものになっていった。先生は良いことは良いと褒めてくれたし、悪いことは悪いととことん叱ってくれる先生だった。それは今もずっと、3年間変わることがない。それぞれの思いを抱えながら、先生の登場を待った。

「おはよう」しばらくして先生が教室に入ってきた。いつもとは違った、雰囲気で、先生であっても緊張していることが見てとれる。

「おはようございます」元気に、笑顔で、今日で最後なんだから。先生には悲しませたくないし… 色々な思いが交錯しながら、ついつい不器用な表情になってしまう。先生は今日のこの日をどう思っているのだろうか。自分たち生徒と同じように、この別れを寂しく

感じているのだろうか。3年A組37人は思い出として残っている過去の記憶を、そして桜の約束を胸に秘めながら、卒業式に臨んでいく。

 


 

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