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一瞬の永遠 ―光のゆくえ―  作者: 住良木薫


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3/4

SCENE3

霧島写真館(2年後・冬)

湊の死から2年(本編から7年)。


プロのカメラマンとして活動する大石(24)。

久しぶりに霧島写真館を訪れている。

   

霧島玲子が、大石の最新の写真集をめくっている。


霧島「……技術は上がったわね。でも」

   

霧島、写真集を閉じる。


霧島「写真が泣いてるわ」


大石「……え?」


霧島「被写体への愛がない。ただ『綺麗に撮ろう』としてるだけ。……湊くんを撮ってた時のあなたは、もっと必死で、もっと優しかった」

   

大石、苦笑いしてコーヒーを飲む。


大石「しゃあないですよ。……俺の『太陽』は沈んでしもうたんですから」

「あいつがおらん世界で、俺だけヘラヘラ笑って生きるんが……時々、申し訳なくなるんです」

   

霧島、鋭い目つきで大石を射抜く。


霧島「バカなこと言わないで」

「あなたが笑わなくなったら、湊くんが生きた証拠が『悲しい思い出』になっちゃうじゃない」

「彼が愛したあなたの笑顔を、あなたが守らなくてどうするの」

   

大石、ハッとする。

   

その時、店のドアが開く。

一人の男子高校生が入ってくる。制服は着崩し、目つきは鋭いが、どこか孤独な空気を纏っている。

かつて「問題児」と呼ばれていた頃の湊に、少し似ていた。


少年「……ここ、写真撮ってくれますか」


霧島「ええ。どんな写真?」


少年「……遺影、みたいなやつ。僕、もう消えたいんで」

   

大石、少年の言葉に反応する。

霧島が大石を見る。

「ほら、出番よ」という目。



写真館近くの海の堤防

大石、少年の隣に座っている。

少年は、家庭の事情や孤独を吐露し終えたところ。


少年「……だから、僕なんかが生きてても、何も残らないんです。記憶にも残らない」

   

大石、海風を感じながら、懐かしそうに目を細める。


大石「……君、名前は?」


少年「……しょうです」


大石「そか。ええ名前や」

   

大石、ファインダー越しに夕日を見る。


大石「残るで」


少年「え?」


大石「お前が忘れても、世界から消えても……誰かが覚えとる。俺が覚えといたる」

   

少年、驚いて大石を見る。

大石はカメラを下ろし、優しく、力強く微笑む。

それはかつて、湊を救ったあの太陽のような笑顔。


大石「昔な、俺の親友が言うてん。『写真はいい。裏切らないから』って」

「お前のその辛い気持ちも、いつか大事な記憶になる。……俺が保証したるわ」

   

少年の瞳から涙がこぼれる。

大石は、空を見上げる。

雲の隙間から、一筋の光が差し込んでいる。湊が見ている気がした。


大石(なぁ湊。俺、また『お節介』焼いてもうたわ)

(お前がくれた光、ちゃんと次の奴に渡したるからな)

   

大石、少年にレンズを向ける。


大石「ほら、翔! 泣き止んで前向け! ……笑え! お前は生きてるんや!」

  

少年、涙を拭い、ぎこちなく、でも生きたいと願うように微笑む。

   

カシャッ!


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